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第53話 改良型スケルトン改造人造人間


 涼音と白鳥麗子はそれからしばらく俺たちに付き合っていたが、二人とも眠くなったようで涼音は自分の寝室へ。白鳥麗子はトルシェに作ってもらった寝室に行った。


 メッシーナは自分の部屋に戻らず俺たちと一緒にいたが、そのうち椅子の上で眠ってしまったようだ。フラックスが抱きかかえてメッシーナの部屋に運んで行った。



 大広間のテーブルに3人だけ残ったところでトルシェが、


「ダークンさん。それじゃあ、先にフラックスから改造しちゃいましょう」


「そうだな」


 トルシェはテーブルの横に横長の台を取りだし、メッシーナの部屋から帰ってきたフラックスに、


「フラックス。裸になってその台の上に仰向けになって寝る」


 フラックスが言われた通り、着ているものを脱いで、台の上に横になった。


 そのフラックスの鼻から下、みぞおちから上までごっそりスライムが取り除かれて黒い本体が現れた。


 取り除いたスライムはそのままどこかの世界に送還されたのか消えてなくなってしまった。


 そのあと、トルシェは小型のスライムを手先に召喚しながら今空いた部分に詰めていき形ができ上った。最後にテクスチャーを魔法で貼り付けたら元のフラックスができ上った。


「フラックス、起き上がって自分の名まえを言ってみて」


 フラックスが台の上で上半身を起こし、こちらを向いてゆっくりと、


「フラックス」


 そう言った。


 すこし低めの若い女の声だった。


「トルシェ凄いじゃないか」


「エヘヘヘ。

 フラックス、服を着て」


「はい、マスター」


 フラックスの創造主であるトルシェはマスターなのか。トルシェの上司のこの俺を何て呼ぶのか楽しみだな。さしずめグランドマスター? 少し長いから、マイレディー? そこらあたりかな?


 フラックスが脱いでいた服を着たので、次は花子だ。


「次は花子。エプロンを取ってこの台の上で仰向けに寝て」


 エプロンを取ってスーパーマッパになった花子が台の上に横になった。


 横になった花子の黒光りするボディーにトルシェが先ほどと同じようにスライムを手の先に召喚しながらくっつけていく。


 足の先から頭の先までスライムをくっつけて形を調整した後、テクスチャーを貼り付けて、若い女の体ができ上った。見事なものである。


「花子、起き上がって自分の名まえを言ってみて」


「私の名まえは花子。話せるようにしていただきありがとうございます」


 と、トルシェに向かって頭を下げた。フラックスより1日の長があるようだ。声はフラックスも低めだったが花子も低めで花子の方が落ち着いた感じの声だった。


「花子、お前用に買った服があるから、これを着ろ」


 そういって新宿で買ってきた服を一式花子に渡してやった。


「ありがとうございます。マイゴッデス」


 おっ! 俺のことはマイゴッデスなのか。ちょっと重いがまあいいか。


 トルシェは花子を作る時俺をモデルにしたと言ったが、確かにどことなく俺に似ているような気がする。肩口までの黒髪で目は切れ長、すっきりと通った鼻筋。やや薄い唇。いいんじゃないか?


「花子、そこで一回りして見せてくれるか?」


 水色のフレアのワンピースを着た花子がその場で一回転した。艶のある長めの黒髪がふわっと流れ、ひざ丈のスカート部分がそれに合わせてふわっと開いた。どこかのモデルみたいだ。


「トルシェ、でかした!」


「でへへへ」


「しかし、スケルトンとスライムがくっ付いて人造人間になったわけだが、見事な共生だな。以前俺がスケルトンだった時、コロを膜状にして何となくかぶってみたことがあったが、それから比べると隔世の感がある」


 俺とコロのあの時の姿を思い出したのかトルシェとアズランが真っ赤な顔をして笑いをこらえている。俺も思い出したので、大笑いしないよう奥歯をかみしめて何とか耐えることができた。


 明日の朝、涼音たちが花子とフラックスを見て驚くこと間違いなしだ。


「それじゃあ、一仕事終わったことだし、飲み直すか」


「はーい」「はい」


 それから俺たち3人は酒盛りを再開した。花子は着ているワンピースの上にエプロンを付けて給仕してくれている。フラックスはメッシーナの部屋にいったようだ。


「これで人造人間は完璧だな。あとはターゲットを決めてそいつの情報を入手して、十分俺たちの人造人間がソイツとして行動できると判断デキたところで入れ替えていく。

 次の衆議院選はいつになるかわからないが、その時までに衆議院議員500人として250人は入れ替えてしまいたい。2年間時間があるとして月当たり10人、トルシェとアズラン何とかなりそうか?」


「最初は一月10人は難しいかもしれないけど、慣れてくれば毎日1人はできそう」


「車もあるし、対象は東京に集中してそうだからなんとかなると思います」


「だが、国会議員より先にメディアが先だがな。メディアの方はTV局を抑えれば十分だろう。余裕があれば新聞社にも手を付けてもいいが新聞は何と言っても斜陽産業だから本当に余裕がある時だけでいいだろう。

 あっ! 忘れていたが、主要官僚、大企業の経営者なんかもある程度は入れ替えたいところだ。そこは人を見てから考えよう。そう考えると1000人は入れ替えたい。逆に考えると1000人入れ替えればこの国を牛耳れる。次の衆院選までは厳しいかもしれないが5年もあれば行けるだろう。それに取り換え用じゃなく、花子みたいなアシスタントを何体か先に作っておけば作業がはかどるかもしれないしな」


「ダークンさんの神の国がこの地上に実現するわけですね!」


「そういうことだ。5年は必要かもしれないが、俺たちにとって5年くらいどうってことはない。ワッハッハ」


「「アッハッハ」」



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 ダークンに捕えられ檻に入れられた悪魔はIEA日本事務所から横田米軍基地に運ばれ、そのまま米軍機でイタリアに送られた。


 檻は空港から軍用車を使い陸路ローマ市内のグレゴリアン大学人類学研究所に運び込まれた。研究所内で5日間にわたり各種の検査と試験が行なわれたが、依り代から遠く離れた関係か5日目に檻の中で存在の希薄化が始まり、悪魔は6日目に完全に消滅してしまった。


 IEAより後日、黒木真夜名義の口座に、謝礼として1千万ドル、14億円余りが振り込まれた。



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