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第44話 流れ作業(皆殺し)


 駐車場に停めたIEAの車の中で、ハンバーガーセットをみんなして大口を開けて食べていたら、次の獲物がやってきた。今度の車は白いワゴン車だった。フロントと運転席、それに助手席を除いたガラス窓がマジックミラーになっていて後部座席が見えないようになっている。どこかで見たことのあるようなワゴン車だがどこで見たのかは頭の中にロックがかかっているようで思い出せなかった。


 そのワゴン車はそのまま頭から突っ込んで、最初のセダンの隣に停車した。


 ザコ相手は飽きてしまったので、今度の連中は戦闘員に任せることにして俺は車の中で寛いでいることにした。


「バイザー、メッシーナ、フラックス。お前たち3人でマジックミラーのワゴン車の連中を片付けてこい。死体は俺が後で片付けるから。あとフラックスが衣服をきれいにできると言ってもなるべくきれいに処分しろよ。辺りが臭くなると警戒されるからな」


「「はい」」「……」


 俺と運転手を残してバイザーたち3人が車から降り、ワゴン車に近づいていく。


 メイスを持った神父服姿のバイザーがいかにも過ぎる。連中が車の中から出る前に接近したのはまずかったかな?


 いきなりマジックミラーのワゴン車がバックで急発進した。逃がすわけにはいかないので、コロにタイヤでも食べさせようとしたら、先にフラックスがワゴン車の後ろのバンパーを両手で掴んで持ち上げてしまった。ワゴン車は後輪を回すが空回りするだけで動かなくなった。



 すかさずバイザーが自慢のメイスを車の後部側面マジックミラーに叩きつけた。


 サイドガラスだったためか簡単にマジックミラーが粉々に割れて中が見えた。中には運転手と助手席の二人の他、4人乗っているのが見えた。


 バイザーは次にメイスを助手席のドアの取っ手あたりに叩きつけた。そしたらロックが外れたのか、ドアが開いた。


 そこまでは良かったのだが、助手席に座っていた男がいきなりバイザーに向けて拳銃を発射した。


 パン、パン、パン。


 3発の拳銃音が響いた。


 バイザー、かわいそうに死んだかな? と思ったが、何事もないようにハンマーを振るって拳銃男を一撃で行動不能にしてしまった。バイザーのメイスを受けた男はここからでは見えないが多分上半身が大きく変形して即死したと思う。


 バイザーはいかに硬そうに見えるメイスでもダメになるのではないかというくらい、車を上から右から左からとバチカンの宝具(メイス)で滅多打ちにしていたら、向う側の後部のサイドドアがいきなり開いて、中から4人の男女が転がり出てきた。


 


 車をなんとか動かそうとしていた運転手もそれを見て運転席から飛び出していった。


 メッシーナが何をしているのか探すと、知らぬうちにワゴン車の向こう側に回っていた。逃げ出してくる連中を待ち受けていたようだ。


 メッシーナは最初に転がり出た男の頸動脈をスティンガーの一撃で切り裂き、返す一撃でその後ろから出てきた女の胸にスティンガーを突き入れた。


 どちらもエライ勢いで血を吹き出しながら倒れたのだが、不思議とメッシーナには血がかからなかったようだ。


 運転手が飛び出して車が停止したことで手の空いたフラックスがあとから出てきた男女2人に飛びかかり、左右の腕を広げて二人の頭の側面に手をかけて、頭同士を叩きつけてカチ割ってしまった。


 もちろん内容物が飛び散り、フラックスにもべっとりとくっついたが、すぐにフラックスが吸収してしまった。



 最後に一人残った運転手は、車から逃げ出した後、逃げるのをあきらめて突っ立って命乞いを始めたが、その頭に向けてバイザーが豪快なスイングでメイスを振った。


 その一振りで運転手の頭は潰れながらも首から外れて駐車場の端の方まで飛んでいった。


 空中遊泳中の頭と目があったような気がしたので、ウインクしてやったまでは良かったのだが、俺が最初ゾンビになって自殺しようとした時のことを思い出してしまった(注1)。まったく懐かしくない嫌な思い出だ。何気なにげに今のが転生以降で一番ダメージがデカかった。



 今回も3人はなかなかいい動きだった。


 俺は車を降りて、コロに残骸を片付けさせながら、


「みんななかなかいい連携だったぞ」


 いちおう上司ではないが褒めておいてやったら、3人とも嬉しそうな顔をしていた。


 ボコボコになった車があると次の獲物が警戒するので、ワゴン車は丸ごとコロに食べさせてやった。


 そのあと駐車場の向うの方に転がっていった運転手の頭を探しだしてよく見たら、さっき目が合ったと思ったのだが、二つの眼窩には目玉はなかった。巨漢であるバイザーのメイスのフルスイングを受けたのだからどこかに飛んでいったか潰れたかしたのだろう。頭はコロに食べさせたが、結局目玉は見つからなかったので、二つとも潰れてしまったと思う。後から干からびた目玉が出てくるかもしれないが、カラスが見つけて食べるかもしれないし、どうってことないだろう。



 思い出したが、さっき拳銃でバイザーは撃たれたはずなのに、どうなっているんだ?


「おい、バイザー。お前さっき拳銃で撃たれてたよな?」


「3発受けました。おかげで服に孔が空いてしまいました。早めにつくろった方がいいですよね?」


「服は知らんが、お前、何ともないのか?」


「少し傷みは感じましたが、たかが拳銃の弾ですから、もう治ってます」


「確かにすこしその服にできた孔の周りに血がにじんでいるようにも見えるが血は止まってるみたいだし」


「私は丈夫なんです」


「丈夫で片付けられるような話でもないと思うが、それくらいじゃないとナンバーツーにはなっていないってことか?」


「そういうことです」


「なるほどな」




「一応片付いたからまた車に戻って待機していよう。次は獲物が車から全員降りてからな」


「早まって、すみません」


「結果オーライだ。気にするな」




 車に帰って、先ほどまで食べていたハンバーガーセットをまた食べ始める。


「フラックス、紙袋の中にケチャップ入ってないか?」


「……」


 フラックスは何も言わず、紙袋の中からケチャップを探し出して俺に渡してくれた。ポテトには真っ赤なケチャップだよな。



注1:最初ゾンビになって自殺しようとした時

ダークンには、熱中症か何かで倒れたところ、意識を持ったままゾンビになり、病院で検死解剖されかかったところ、命?からがら解剖室から逃げ出し、ダンプに轢かれて自殺?した過去があります。

『闇の眷属、俺。-進化の階梯を駆けあがれ-』第2話 そうだ、ダンプにひかれよう!



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