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第27話 結成『秘密結社、3人団』


「そういうことなので、俺は青少年たちに健全な精神を宿らせるため、肉体を極限まで鍛える組織を作ろうと思ったわけだ」


「組織ですか?」


「そう。組織だ。名付けて『ダークン・ユーゲント』!」


 壮大な計画には壮大な名前が必要なのだ。


「このどこかで聞いたことのあるような名前から、涼音もどういった組織になるか少しは想像できるだろう?」


「はい、おそらくそうなんだろうなーって想像はつきます」


「それでいい。その組織の世話人がこの俺だ」


「世話人ですか?」


「表の顔は世話人だが、しかしてその実体は、ダークン・ユーゲントを使いこの国の政財界を牛耳る新たな組織『秘密結社、3人団』の団長だ」


「カッコいーー!」「すごい!」


 トルシェとアズランは目を輝かせて素直に喜んでくれている。女神さまと半神2名なので、3柱だが、3柱団では何が何だかわからなくなるし、いままで通り3人団でいくことにした。


「もちろんトルシェとアズランは新組織の幹部だ。安心してくれ」


 二人ともホッとしたような顔をしている


「おそらく、相当大きな組織になるはずだが、トルシェもアズランも当面副首領だな」


「首領! やったー!」「頑張ります!」


「あっ! ダークンさん、秘密結社というからにはその存在は秘密なんですよね?」


「それはそうだろ。あっ! しまったー。こんなところで大声で秘密結社の秘密を大声で口にしてしまった。『壁に耳あり障子に目あり』だから、これからは気を付けないと」


「それで、実際どういったことから始めていくんですか?」


「そうだなー。どこかの中高一貫校でも手に入れて、そこで教育する(からだをきたえる)のはどうだろう」


「手に入れるということは、手に入れるってことでしょうか?」


 涼音が俺に向かって、どこかの政治家のような、なんだかわけのわからない質問をした。


「手に入れるというのは、自分のものにするということだ。それがどうした?」


「そう簡単に中高一貫校が手に入るものなのでしょうか?」


「やってみて、うまくいくようならいいし、ダメなら他の手を考える。

 さっき話した俺に失礼なことを言った連中だがな、おそらくどっかの高校生だ。そこにねじ込んでまず当たりをつける。それで、いけるとなったら突っ込んでいく。中高一貫校がベストだが、そうでなくても何百人か生徒がいさえすればいいだろう。明日からの話だな」


「体を鍛えると精神が磨かれるのは理解できますが、それで、社会を牛耳られるような人物になれるのでしょうか?」


「なれる。この俺が保証する。そうだ! 涼音、お前今何歳だ?」


「今年で24になります」


「俺の歳は戸籍上は22だったはずだから、俺より年上だったか。実際のところ俺の歳は俺にも分からないがな。今のは関係ないが、今度の衆議院選挙はいつか知ってるか?」


「去年選挙がありましたから、まだ2、3年先ではないでしょうか」


「そうか、参院選は3年ごとだが、立候補するには30歳以上じゃないとだめだったはずだ。次の選挙までは、まだまだ先になるか。

 そんならいいや。おまえが国政選挙に出て国会議員になれば俺の言うことが信じられたのだろうが仕方ない」


「そんなに簡単に国会議員になれるのですか?」


「女神のこの俺が推すんだ。当然国会議員になれる」


 涼音が首をひねっているが、確かに実感がなければ俺の話は信じられないかもな。


 そこで、トルシェが、


「ダークンさん、青少年の体を鍛えるというと、いつぞやの魔術師ギルドでやったように鍛えるわけですか?」


「あんな感じでいいんじゃないか? ダメならゾンビに改造すればいいし」


「使い捨てならいいけど、ゾンビに改造しちゃうと腐ってきてマズくないですか?」


「確かに。俺自身がゾンビだったころは、あの腐臭ふしゅうがそんなに気にならなかったが、臭いものは臭いからな。今現在臭いやつが社会を牛耳っているかもしれないが、女神おれの配下ならクリーンでないとな」


「ダークンさん、戸籍があんなに簡単に手に入ったんだから、いっそ花子と同じスケルトンをたくさん召喚して戸籍を買ってやって社会を牛耳っていくのはどうです?」


「花子シリーズか。見た目が人間と区別できないなら悪くはないが、青少年の育成にはならないぞ」


青少年の育成(ダークン・ユーゲント)は、この国を乗っとってからでもいいじゃないですか。その方が大々的に進めますよ」


「うーん。確かにそうだな。よーし。それで行こう。

 青少年の育成もこの国の将来を憂いてのことだから、。俺たちでこの国の舵取りをするなら問題ない。となると何が必要かというと、まずはメディアの支配からだ。先立つものがまだ数億しかない。これでは金に物を言わすことはできないから、まずは金をどうにかしたいな。相手の弱みを握ることができれば使う金のハードルはぐっと下がるがな」


「それなら、私はテレビ局とか新聞社に潜り込んで、上の連中の弱みを探ってきます」


「証拠写真とか動画や録音があった方がいいから、機材をそろえてから行った方がいいぞ」


「そこはトルシェと相談して何とかします」


「そうだな」


「アズラン、そういった特殊なものはアキバでそろうみたいだから、食事が済んだら一緒に行ってみようよ」


「トルシェ、ありがとう」


「どういたしまして。

 なんだか、面白くなってきましたねー。フフフ。買い物が終わったら、わたしは花子の見た目を改造しちゃいます」


「今思いついたんだがな。花子の見た目を変えることができるなら、どんな顔形にでも変えることができるんだよな? 声はどうなんだろうな」


「元がスケルトンなので発声はできないけど、いつぞやのダークンさんとコロみたいに、スライムをスケルトンに共生させて、発声に必要な肺や声帯を含めた喉、舌、唇などに擬態させましょう」


「俺の時は相当苦労したが、そんなこともできるのか? それとスライムがこの世界で簡単に手に入るのか?」


「程度の良いスライムを召喚しますよ。ほかも何とかなると思います。体の表面は顔を含めてテクスチャをパソコンで作って貼り付ければ見た目も人間になるはず」


「それがうまくいくようなら、メディアや政財界を牛耳ってる連中を花子シリーズで置き換えていくというのはどうだ」


「金や脅しで言うことを聞かせるより、よほど簡単だし有効ですね」


「だろ? はコロに食べさせれば跡形もなくなるしな。ただ、相手のことをまるで知らないまま入れ替えることはできないから、いろいろ調べないとマズいよな。トルシェ。そこんところをどうこうできる便利な魔法って何かないか?」


「今のところ思いつけないから考えておきます」


「頼んだ。

 アズラン。うまくいかなかったときのことも考えて、弱みを握る方は進めていこう。トルシェと機材を揃えたら進めてくれ」


「はい!」


「この話が実現すると、女神おれさまがこの国を支配することになるわけだ。ということは、この国は『神の国』になるだろ? これからどういった動きをしていくのかをまとめた計画は『神の国計画』とでも呼ぼうじゃないか」


「『神の国計画』、うおー!」「カッコいー!」


 秘密の話ではあるのだが、もしも俺たち4人の美女、美少女の話を聞いている部外者がいたとしても、とてもまじめな話をしているとは思わないだろう。何が起ころうが証拠がなければ知らぬ存ぜぬで押し通すだけ。それでも文句があるなら『神の怒り』か何かを制限なしで発動すれば、一応リセットだ。


 思った以上に今日のランチョンミーティングは実りのあるものだった。





 トルシェとアズランはレストランからそのままアキバに直行していったので、俺と涼音だけ拠点に戻った。


「ダークンさん、本当にあんな大それたことをするんですか?」


「今までも国を滅ぼしたこともあるし、乗っ取ったこともある。どちらもこの日本に比べれば小さな国だったがな」


「そうなんですか。知りませんでした」


「それはそうだ。教えていないんだから涼音が知りようはない」


「私は何をすればいいんでしょうか?」


「まあ、ゆったり構えて『神の国計画』が進展していくのを当分は見物していればいい。そのうち何かの役割が生れてくるだろ。それこそ、お前が衆議院議員になって、俺が入れ替えた国会議員たちによって首班指名を受けるかも知れないしな」


「そこまで」


「それはそうだろ。国を操るとはそういうことだ」


「分かりました。私も命を助けてもらった恩は必ず返します」


「そう固くなるな。こんなのは適当でいいんだよ。気楽にいこうぜ」


「はい」





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