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第19話 大川涼音2


 涼音すずねの住む高層マンションの下の方は、飲食店やアパレルなどのテナントがたくさん入っており、一般人が多数出入りしている。そのためマンション住人には専用のエレベーターとホールがある。涼音の案内でそちらにまわった俺たちは、そこのエレベーターに乗りこんだ。


 涼音の押したエレベーターボタンは最上階だった。あの親父さんが涼音に買い与えたのかもしれないが、いくら古くなっているとはいえ高層マンションの最上階の部屋となると結構な資産だ。


 エレベーターを降りた先は磨き上げられた大理石で内装され、数か所に大きな観葉植物の鉢が置いてあった。


 ホールの4つの壁にそれぞれ大き目のドアが1つずつついていた。その南側の壁にあったドアの先が涼音のマンションだった。俺の涼音に対する評価がまた(ワン)ランクアップした。


 ドアを開けた先の玄関はそれなりに広く、そこから左右に扉の付いた廊下があり、廊下の先が見晴らしのいいかなり広いリビングダイニングだった。廊下は普通だったがここの天井は高かった。応接セットが部屋の隅の方に置いてあり、そこに大型のテレビが置いてある。


 キッチンが居間に隣接していているので使い勝手も良さそうだ。リビングダイニングにも扉が何個かついていたので、おそらく4、5LDK+なんちゃらって感じのマンションなのだろう。


「景色もいいし日当たりもいい。なかなかいいところじゃないか」


「ありがとうございます。そこの先の部屋が私の部屋なので、そのほかの部屋はご自由にお使いください」


「わかった。

 トルシェ、まだベッドは何個か持ってるよな」


「ベッドでもテーブルでもタンスでも家具なら何でもたくさんありますよ」


 何でもたくさん持っているようだ。この分だとその系統は何も買う必要はないな。


「ダークンさん。わたしたち用に一部屋使って、そこを拡張しちゃいましょう」


「それがいいな。大型の冷蔵庫やら欲しいしな。そこらは、トルシェが適当に見繕って注文すればいいだろ? 拡張した部屋に外部の人間を入れるのははばかられるから、トルシェの魔法でそこらは何とかしてくれ」


了解りょうかーい


「そうしたら、いちおうここが俺たちの新しい拠点になるな。これから電気製品を多く使うことになるが、そこらへんは大丈夫かな?」


「電気をたくさん使うエアコンなんかは使わないから、小部屋からのコンセントで何とかなるんじゃないかな。ここのビルなら繋がっている電力線も太そうだし。必要なら電気工事関係をネットで調べて何とかするから大丈夫ですよ。工事そのものはブラックスケルトンを召喚するかゴーレムを作ればいいし」


「頼もしいな。そしたら、トルシェはチャッチャと部屋を作ってくれ。

 ホテルにノートパソコンとか置いてきてしまったな」


「あの部屋の荷物は全部持って来てます。ノートパソコンは大事ですから」


「なるほど。

 そういえばトルシェ、空間拡張した先の部屋にもWi-Fi(ワイファイ)の電波は届くかな?」


「それなりの器機を用意しますから大丈夫です」


 もうそこまで対応できるようになっているらしい。恐るべしわが眷属。


「それじゃあ、先に部屋だけ作っちゃいましょう。

 そこの部屋の先がいいかな」


 トルシェが扉を開いた先の部屋は都合よく空き部屋だった。


「面倒だからワンルームでいいか。何かあればその先を広げるなり仕切りを作ればいいから。

 ダークンさん、どのくらいの広さにしますか?」


「せっかくだから、ある程度広い方がいいがあまり広くても使い勝手が悪いので、20メートル四方くらいでいいんじゃないか? 天井は高めにな」


了解りょうかーい



「そういえば、涼音は運転できるのか?」


「いえ、全くの運動音痴なので車の免許すら持っていません」


「確かに。自信を持って運動音痴だと言いきれるのなら車は運転しない方が無難だよな。それにこの立地なら車がどうしても必要ということはないだろうし」


「ダークンさん、車が必要ならタートル号(注1)をまた作りましょうか?」


「残念だが、あれを公道で動かすわけにはいかないんだ。アレだと車検って言う検査に通らないからな」


「馬車に車検はないんじゃないですか? 動力がカメの力なので、馬車と一緒で軽車両扱いになるはず」


 どうもトルシェのやつ、知らぬ間に理論武装していたようだ。


「そうかもしれないが、説明が難しいだろ。言っておくが、この世界には魔法はないんだ。それを一から説明なんてできないぞ。それに道路を塞いじゃうし。アズランに免許を取ってもらって無難に車に乗ろうぜ」


「はーい」


「了解です。今週にでも運転免許の試験場に行って免許を取ってきます!」


 嫌に張り切ってるな。アズランなら簡単だろ。


「涼音、このマンションには駐車場はついてるのか?」


「確か地下3階の一部と地下4階が駐車場になっています。空きはまだあると思います」


「車を買ったらそこに入れておけばいいな。

 もう今日は何もすることもないし、涼音も傷を回復したから、さっきのファーストフードだけじゃ足りないだろう? 何かちゃんとしたものを食べようぜ」


「キューブに入っているもので間に合わせますか? それとも下にある適当な店に行ってみますか?」


「そうだな、居酒屋に行ってみたいな。

 涼音、この下に居酒屋は入っていないのか?」


「日本酒を出す居酒屋もありますし、ビール専門のビヤホールも入っています」


「どうせだから、ビヤホールに行ってみるか。向こうのエールなんかよりよっぽどこっちのビールの方がうまいからな」


「おお!」「期待大!」


 4人でエレベーターで下にり、降りた先のエレベーターホールの裏口のようなところからテナント側に入っていった。



注1:タートル号

トルシェが作った移動用亀形巨大ゴーレム。内部が空洞になっておりさらに空間拡張までされているのでかなり広い。バス、トイレ、冷蔵食糧庫など完備している。


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