第107話 大日本育英会2
大日本育英会の基本政策をまとめると、
1、教育の充実
教育の中心に体育を据え、健全な肉体を作ることで健全な精神を育む。わが神の国に不良は不要だ!
健全な肉体があれば必然的に心も体も健康になる。国民の医療関連費は劇的に減少する。
2、国土強靭化。
森林の保全。
老朽化した橋梁等の社会資本の更新。
高速道路の拡幅、高速化。
3、防衛力の強化。
自衛の中に先制攻撃および反撃を含める。(即日閣議決定し内外に発表している)
先制攻撃は敵基地に限定する。
反撃対象は敵基地と限定しない。(即日閣議決定し内外に発表している)
防衛予算のGDP枠撤廃。
自衛隊員の待遇改善と隊員数の増加を図る。
公表するわけではないが、いかなる国の攻撃に対してもトルシェのウラン235攻撃で反撃する。この反撃も対象は敵基地とは限定しない。わが『神の国』に容赦という言葉はない。
1はもちろん、大日本育英団のことだ。全国の中学1年生から高校3年生が全員大日本育英団に入団し体を鍛える。通常の鍛錬は学校教育として行うが、校外活動用の施設を各自治体は早急に作り上げる。教官は自衛隊から招へいする。
長期的には大日本育英団の活動を通じ、青少年たちが己の肉体を鍛錬し健康な肉体と精神を作り上げていくことで国民の健康状態は底上げされる。短期的には年に1度トルシェと俺と二人して地上200キロの宇宙空間から日本列島に向かってヒールオールをかけてやる。俺の祝福にトルシェのヒールオールを乗っける形だ。これで病人やけが人の数がいっきに減り、要介護者の数も相当減るはずだ。
こうなると、医薬、医療関係、介護関係の需要が激減するはずなので、新たな成長産業への振り分けを加速するとともに、国家試験の厳格化などを通じ参入のハードルを上げるつもりだ。
2は、医療介護関連での予算縮小分を回して老朽化した橋梁などをリフレッシュする。同時に有料道路の使用料を段階的に引き下げていく。それに伴い交通量の増加が見込まれるため、高速道路の拡幅し制限速度を引き上げていく。
3は言わずもがなだな。殴られたら殴り返すのは当然だが、殴られそうになったら先に殴る。それも相手の急所を狙ってだ。
大川内閣は1から3の方針に則った法案を衆議院に提出していきどんどん成立させていった。
さらに大川内閣は国会議員のコスト削減を断行し国民の喝さいを浴び俺が何をしたわけでもないのに支持率は上に振り切れてしまった。
歳費一律40パーセントカット。
期末手当60パーセントカット。
文書通信交通滞在費、実費支給。
立法事務費、60パーセントカット。
公設第二秘書の廃止。
役職手当完全廃止。
政党交付金の廃止。
こういった削減をしたところで実際大した経費削減にはならないが、スケープゴートとしての意味合いは大きい。そもそもわが『大日本育英会』の議員は上の3人を除いて生活費もかからないスーパーマンなので、痛くもかゆくもない。次回の選挙でも特段選挙活動するわけでもないので、お金を貯える必要もない。こういった身を切る改革をしようが全くのノーダメージだ。
まだ残っている既存政党の議員には堪えるだろうが、次の選挙でどうせ一般人になるわけだからそんな差はないだろ?
善は急げ! というわけで、今年7月に予定されている参議院選挙に合わせて衆議院を解散してダブル選挙を仕掛けることにした。衆議院全議席確保と参議院改選議席全確保は確実なので、今でもヤリ放題だが、さらにヤリ放題になる。
局長以下の官僚の中でも急激な社会の変化に対して警鐘を鳴らす者がたまに出たが、大手メディアは取り合わないし、すぐに大日本育英会本部にご注進してくれる。
そういった事実が判明した時点で、その人物は良くて国家公務員の政治活動を理由に懲戒解雇、悪くて人造人間との取り換えとなる。そこのところの判断は、局長ポストとの距離感で判断するようにしている。もうすぐ局長なら取り換えるし、当分先なら解雇だ。
大日本育英団の詳細だが、
全国の中学校、高等学校の生徒は全員大日本育英団に入団する。学校での体育の授業数は倍増する。増えた時間は行進とランニングだ! 減らすのは英語だ。日本語もまともにできない連中が外国語など学ぶ必要はない! とまでは言わないが、まずは国語だろう。それができて初めて外国語だ。小学生の英語などもってのほか。そもそもまともな発音ができる英語教師がどれだけいるのか?
大日本育英団と直接関係はないが、公立校の教師の選抜試験を行うことにした。1クラス60人学級とすることで教師を余らせ、余剰分は自衛隊に叩き込んで再教育だ。残った教師には今までの1.5倍の給料を払う。これで子どもたちの将来なりたい職業の一つにはなるだろう。
それと同時に地方公務員法、教育公務員特例法を改正し、一般職地方公務員の政治活動の一切を禁止してやった。
この改正を意識してかどうかは分からないが、法案成立後も各地でデモが行われた。法案成立後にデモに参加した公立校教師は判明次第、即日解雇した。これに不服を唱え改正地方公務員法、改正教育公務員特例法は違憲であるとの訴訟が各地で起こったが、思うつぼで、俺の祝福を受けた裁判官たちが軒並み訴えを棄却していった。もちろん上告するわけだが、最高裁にたどり着く前に最高裁の裁判官は全員人造人間になっているはずだ。
大日本育英団については、中高全生徒を強制入団させるわけだが、入団したご利益として、新年度の適当な日に俺が日本国中の大日本育英団の団員に対して祝福する。これで1年間まず病気にかからず、身体能力もわずかばかり向上する。ハズだ。
年に一度の全国民に対するトルシェのヒールオールウィッズ俺の祝福とあいまって、体調不良を理由に体育の授業をさぼることはできなくなる。増えた体育の時間は自衛隊から派遣する自衛官が受け持つわけだが、彼らは、生徒たちをビシバシ鍛えれば評価するという人参をぶら下げられている。俺が祝福した以上少々のことでは故障しなくなった団員たちは鍛えられれば鍛えられるほど、スルメのごとく味が出てくるはずだ。
鍛えた成果を測定するために校内での体力測定を春、秋の年2回実施し、優秀者は、各都道府県で開催する体力測定大会に出場しそこで体力を競い合う。
政府がこういった改革案を発表するたびに参議院の委員会において議事が紛糾するため、涼音のそっくりさん人造人間をトルシェが作ってやった。涼音が参議院の委員会に出席する必要がある場合は、そっくりさんが代役を務め、その間本人は首相執務室にトルシェの作ったどこで○ドアで恵比寿の自宅に帰って寛ぐことにしている。そっくりさんが委員会から戻ってくればまた本人が首相の執務室に戻っていく。
それでも涼音の負担は大きかったので、参議院選を待たず、徐々に参議院議員をわが人造人間と入れ替えていくことにした。入れ替え対象の人物は参議院での選挙区選出議員で、入れ替え後速やかに旧党を離党し『大日本育英会』に入党している。年が明けるまでに参議院の議席数の過半数である125議席を獲得した結果、年明けの通常国会において、参議院における過半数の常任委員会の委員長席を確保した。
もちろん、これまでにどうでもいいような委員会は廃止ないし縮小している。
こういった状況の中で自発的に既存政党から『大日本育英会』への鞍替えを打診してくる議員が相当数出てきたが、不安定要素を取り込む必要などさらさらないので丁重に断っている。さらに地方の議員などからも『大日本育英会』への入党の打診が続いたがこちらも断っている。
都道府県知事のうちこれはアカンと俺が判断した首長数人については早い段階で、人造人間と取り換えている。
「多数決は民主主義の基本原理」なる言葉の元に全ての法案は短期間で衆議院を通過して参議院へ送られた。当初参議院での議席数はゼロだったのでほとんどの法案は参議院で否決され衆議院に戻されたが三分の二以上の議席を握っている与党『大日本育英会』によって強引に法案は成立していった。
参議院で過半数の議席数を占めた今、法案の成立速度は早まり、改革はどんどん進んでいくはずだ。