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第103話 神の国1、大日本育英会1


 選挙戦も残すところあと六日。後半戦に入った。


 選挙戦が始まって六日間の不在者投票での出口調査の結果、各党の得票率は与党合計でさえ0.1パーセント未満であり、その他の政党も軒並み0.1パーセント未満だった。


 それに対して『大日本育英会』の得票率は99パーセント以上となっている。


 出口調査とは別に、投票先アンケートが行われており、これまでの選挙では投票先がない、投票するつもりはないと答えていた40パーセント近い数字がほぼゼロとなっており『大日本育英会』を投票先に選ぶ者が99パーセントを越えていた。


『大日本育英会』の候補者は地元の放送局で政見放送の録画を撮るくらいで全く選挙運動らしいことはしていなかったが、各政党の候補者は梅雨のさなか声をからして選挙戦を展開していた。しかし、選挙カーや立会演説会に対して道行く人からの反応は皆無だった。


 そもそも各政党の候補者の選挙事務所の人員からして自分のところの候補者に対してよそよそしい。その候補者自身も自分に投票するより『大日本育英会』の立候補者に投票する方が自分のためになるのではという気がし始めていた。


 選挙に先立ち党首討論なども行われ、テレビ放送もされたが、慣例通り既存政党の党首だけの党首討論だったため、視聴率は1パーセントに満たなかったようだ。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 俺はテレビに流れる報道から今回の選挙の手ごたえを感じながら、2回目の地上200キロメートルからの祝福を行った。下界は北海道を除き梅雨雲に覆われていたがそんなことは構わず祝福してやる。


 届け! 俺の祝福、日本全国津々浦々まで!


 そう念じて日本列島を祝福していたら列島を覆っていた梅雨雲が晴れた。わけではなかったが、今回は俺の祝福を受けた日本列島が雲の下から俺に向かってほほ笑んだ。そんな気がした。


 そこでふと思ったんだが、いかに俺が女神さまと言っても、地上200キロの宇宙から祝福して、そこまで効果があるのだろうか? しかし、祝福に効果があることは確かだ。いつぞや成都で悪魔王とか言うのを斃した時に何かを吸収したような感覚があったが、知らず知らず俺自身進化ではないがレベルアップしていたのかもしれない。


 祝福を終えて周りを見渡せば足元の地球のほかは星の世界だ。ISS国際宇宙ステーションの高度が400キロメートルなので近くを飛んだとしても宇宙空間でワンピース姿の俺のことは気付いてくれないだろうが、俺のことにもし気づいたら面白いだろーなー。


 そんなことを考えながら星の世界を眺めていたら、視界の端をゆっくりと白く輝く星が流れていった。人工衛星にしては大きいし形も四角っぽい。おそらくISSだろう。


 うわさをすればなんとやらに、俺は嬉しくなってISSに向かって手を振っていた。しかも、気づけば後光スイッチまでオンになっている。やはり、こういったメジャーな文物に接すると、俺のような女神さまでも心が騒ぐらしい。


 しばらくISSを見送っていた俺はそろそろ拠点に戻ろうとしたのだが、ワンピースのスカートがめくれてきていた。


 ほぼ真空状態かつ無重力(注1)の宇宙空間で物体に力が加わってしまうと、その移動限界まで運動が継続してしまう。今回はスカートの裾に上に向かう力が働いたようだ。幸いにしてパンツが見える寸前で気づいたからいいようなものの、まかり間違えればスカートで顔を隠したパンツ怪人になってしまうところだった。



 スカートをおろした俺は拠点に戻り、涼音がいるリビングに向かった。


 選挙の行方についてテレビの報道を確認するためだが、『大日本育英会』の本部はこのマンション内だし、地方に至っては事務所も開いていない関係で連絡先は全て本部としている。従ってメディアも本部事務所に電話取材しかできない。しかも、対応するのは人造人間オペレーターたちだ。


 そういった事情で『大日本育英会』がらみの情報はほとんど手に入らないので、メディアも困っているようだ。



 大手メディアは俺が押さえているので無茶な取材をすることはないが、自称ジャーナリストたちがマンションの中に盛んに侵入している。マンション住民にも迷惑をかけているようだし見せしめのために2、3人血祭りにあげてやりたかったが、そこはぐっとこらえ、セキュリティー会社と急遽契約して、そういった輩を追い出すことにした。



 俺はテレビを一緒に見ている涼音に選挙後のことを話してやった。


「涼音、今週末にはお前は第1党の代表だ。30日以内という規定はあるが、特別国会は週があければ開かれるだろう。そこでお前は首班指名される。ありがとうございますと頭を下げていればOKだ。

 メディアの方も妙な質問はしない。妙な質問をするのはもぐりのジャーナリストだから無視していろ」


「はい」


「組閣に当たってもトルシェとアズランに任せておけばいい」


「白鳥麗子は衆議院議長となる。

 その他の委員会の委員長なんかはトルシェとアズランが適当に決めてしまうから大丈夫だ」



 その日、ISSの一宇宙飛行士から『宇宙に魔女がいた』というタイトルでSNSに動画が投稿された。背景の地球の映像から、解像度の低い機器で撮影されたわけでもないにもかかわらず、魔女の画像は逆光気味ではぼやけており、人が手を振っているように見えなくもない映像だったが、さりとて人とはとても断言できない何かだった。




注1:

これはダークンの勘違いで、高度200キロ(地球の中心から6570キロ)辺りでは地球の重力加速度は約9.24m/s²あるようです。スカートが捲れたのは単に読者サービスです。


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