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第102話 選挙戦?


 衆議院議員の定数は480名。今回の選挙ではわが『大日本育英会』は比例180名に対して180名、小選挙区300名に対して、180名、合計360名の候補者を立てるつもりで準備を始めた。必ず全員当選するので、衆議院での議員数はちょうど4分の3、75パーセントとなる。


 やる気になれば480全議席獲得できるがヤリ過ぎも限度があると思いそれくらいにしておいた。必要なら残った連中ぎいんをこっちの人造人間に代えていけばいいだけだからな。ちなみに法案が参院で否決されても衆議院で三分の二の議席による賛成があれば再議決できる。大日本育英会の衆議院での議席数は320名なので、理論的には全ての法案を通過させることができるのだが、法案を成立させるために余分な時間がかかるので、成立させることのできる法案の本数は限られる。


 衆議院の三分の二があれば憲法改正の発議も可能だが、参議院の議席数ゼロでは無理なので、来年予定されている参議院選で改選全議席を獲得してから、残りの議員を必要数人造人間と取り換えてからの話になる。実際問題衆議院の三分の二を超える議員が俺の手足となるわけだから憲法改正の必要性はぐっと下がる。




 5月から徐々に解散風が強くなり、会期末も近づいてさらに解散風が強くなってきた。俺たちが与党2党合計並みの議員立候補者を準備しているということはある程度既存政党に漏れているかもしれないが、すでに俺の傘下と言ってもいいマスコミは当然そういった情報を流してはいない。



 6月の通常国会会期末を目前にして衆議院が解散された。のちの『雰囲気解散』である。なんとなく与野党とも解散するのは今しかないという『雰囲気』に包まれ内閣が衆議院を解散してしまった。


 もちろん5月には与野党各党とも解散もあり得ると感じていたためか準備は整っていた。でなければそう簡単には与党も簡単に衆議院を解散できなかったかもしれない。



「決戦の時はきた! 各員一層奮励努力せよ!」


 俺の檄に応え、公示日にわが『大日本育英会』の全予定候補者が立候補の届け出を行った。その中で純正の人類は大川涼音、白鳥麗子、川口銀二の3人だけである。


 これで12日間の選挙戦の幕が切って落とされた。すでに北海道を除く全国で梅雨入りしている。


 選挙ポスターなどは地元に配備した人造人間たちが立候補者とともに24時間不眠不休で日本全国の掲示板に貼り付けていった。バケツに水と雑巾を持った者とポスターと画鋲を持った者のペアーでポスターを貼り付けていく。最初に掲示板の所定の位置をきれいに拭いてそれからポスターの裏面のシールをはがしてきっちりと貼り付けて、最後に4隅を画鋲で補強する。よほどポスターの裏面シールは強力だったようで少々の雨でも掲示板に貼り付けることができたようだ。


 一層奮励努力といっても、候補者たちはポスター貼り以外特に何もする必要はない。会長の大川涼音以下3人もポスター貼りを手伝っている。あとは政見放送用のビデオを撮るためテレビ局にいって決められた原稿を読むだけだ。


「それじゃあ、トルシェ頼む」


「はい!」


 瘴気サウナに続く気密通路にトルシェが東京の上空200キロメートルに続く扉を作った。風圧に負ければ勝手にドアが閉まるよう今回の扉は手前に引くようになっている。また、扉を少しでも開ければ、気密室の空気はいっきに外に吹きだすはずなので、トルシェは吹き飛ばされないようサウナ側に避難している。


 俺も風圧に負けないようしっかり扉を掴んで、緊張しながら、ゆっくりと扉を引いた。そのとたん、扉が上空につながったようで、すごい力が扉にかかったがその程度で俺がどうこうなるわけもなく、そのまま扉を開き切ったところで風は治まった。というかまわりはほぼ真空になった。


 今回の扉は消えるわけでもなくその場に存在しているし、扉の外側には俺が掴まることのできる丈夫な手すりが付いている。俺はその手すりに掴まって日本列島津々浦々に対して、わが『大日本育英会』の立候補者に投票するよう祝福を送った。


 俺が念を凝らして祝福した結果、日本列島が俺に応えてくれた。ような気がした。


 日本列島津々浦々に祝福を送ったとき、ちょうど俺の足元、東京と俺のいる上空200キロの中間辺りに白っぽい長四角が見えたが、変な形の雲があるものだ。最近の雲はかなり高いところにできるようだし、形もよーく見ると筒型に見える。雲にしてははっきりくっきりしていた。雲の世界も進歩しているんだなー。と、妙に感心してしまった。



 1回目の浮動票獲得作戦は無事終了したので、高度200キロメートルから落っこちないように慎重に扉の裏側に回って扉を締めた。次回は固定票かっさらい作戦だ。そして、最後に浮動票、固定票まとめて獲得作戦だ。これで、開票の始まる20時0分に全候補の当確が放送されるハズ。


 俺の帰還を察知したトルシェが気密通路に空気を送込み、瘴気サウナ側の扉を開けてやってきた。


「手応えはどうでした?」


「まずまずだ。あと2回予定通り日本列島全体に向けて祝福すれば、全候補開票と同時に当確だ」


「それなら、今日は前祝いでもしましょうよ」


「それもそうだな」




 選挙戦も3日を過ぎたあたりから、期日前投票における出口調査結果の異常さが目立ち始めてしまった。この時点で立候補者の数だけは異常に多いことだけで注目されていた泡沫政党でもないただの政治団体『大日本育英会』だが、出口調査でほぼ100パーセントの得票率だったため各メディアが取り上げ始めた。メディアについては必要以上に騒がないよう統制を取っているが、既存政党の執行部が慌て始めた。


「『大日本育英会』とは一体なんなんだ?」


 どこの政党も『大日本育英会』について、立候補者の数から資金力だけある政治団体で何処かの宗教団体の後援を受けているのだろうくらいの認識しかなかったため一切の情報がない。


 選挙戦5日目には『大日本育英会』の得票率が異常なものであることが世間でも話題になり始めた。各政党の足元には火が着いている。なにせ与党2党を合計しても得票率0.1パーセント未満である。


 数字の間違い、統計上の問題ではないかとの声も上がったが、実際問題、既存政党の大物議員による立会演説会でも、サクラ以外は誰も見向きもせず通り過ぎていく。


 このままいくことはないだろうが、それでも『大日本育英会』が国会内で大勢力を築くことは確実視された。


「『大日本育英会』の何でもいいからスキャンダルを集めてくるんだ! そもそも代表はどこにいるんだ? 選挙期間中妙なうわさを立てれば選挙違反になる可能性もあるが背に腹は代えられない」


 などと、党内情報が何者かによってリークされた党もあった。これまでの選挙だったらとんでもない情報ではあるが、そもそも有権者はその政党になんら興味も関心も持っていなかったため大事にならずに済んだようだ。



 各党の候補者が梅雨空の下、雨合羽を着て声を枯らして走り回っているのとは対照的に『大日本育英会』の立候補者は一切選挙戦を行っていなかった。従って選挙違反うんぬんという声は起こりようがなかった。



 選挙期間中にそれらしいことでやったことは、大川涼音の日常を3分ほどに編集した動画を毎日1回更新していくだけの大川涼音チャンネルをユーチュ〇ブに作ったくらいだ。チャンネルを開設して5日間で登録者数が5千万を超えてしまった。毎日1千万登録者が増えている勘定だ。


 涼音自身の美貌もさることながら、動画によく現れる『大日本育英会』の副代表、白鳥麗子の人気も急上昇していた。そして何より、世間さまでは動画中にたまーに現れる、二人の超絶美少女が話題になっていた。さらにコアなファンはこれまで3秒しか露出していないメッシーナにも注目しており、SNSなどではそういった話題がトレンドになっていた。もちろん意識してトルシェもアズランも登場しているので、デジタル録画用にスキンをかぶっている。




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