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50.調合『生命の粉末』

「オババ、生命の粉末の素材、集めてきたよ!」

「ほう、もう集めてきたのかい。なかなか取れない素材も混じっているはずなのにがんばったようさね」

「がんばったよね、私たち」

「サイが切れそうになる程度にはな」


 時間が惜しいと言うことでポータル間転送でファストグロウまで戻ってきた。

 その足でオババの薬屋まで直行したわけだが。

 さて、このあとはどうすればいいんだろう?


「素材を集めてきたのならレシピは教えてやるさね。……ほら、これがそうだよ」

「ほうほう……なるほど。よし、覚えた!」

「まったく、神代の冒険者ってのは便利さね。結構複雑な手順なのにさ。フィートも覚えるかい?」

「ああ、覚えさせてもらえるなら」

「かまわないよ。使う機会はほとんどないレシピだけどね」


 オババからレシピを教わり、それを読んでレシピ一覧に登録。

 ……確かに、普通の薬草作りに比べればはるかに難しい手順のようだ。


「よーし、素材も揃ったし、レシピも覚えた! 早速、生命の粉末を作っちゃうぞ!」


 意気揚々と店の奥にある調合部屋へと駆け込んでいくサイ。

 それは、俺もオババも止める隙がなかったほどの早業だ。


「ちょっと待ちなよ! まだ注意事項を説明してないのさね!」

「ああ、もう! あいつはこういうときに勢い任せに行動する!」


 俺たちも調合部屋へと移動するが、ときすでに遅し。

 サイは調合作業を始めていた。


「えーと、まずターミネートアリゲーターの心臓をきざんでと……」

「ああ……、始めちまってるね。これは仕方がないねぇ」

「ですね。結果が出るのを待ちましょうか」

「……結果は待つまでもないんだけどね」


 サイはレシピにある手順をひとつひとつ丁寧になぞっているようだ。

 そうして、やがて最後の工程まで作業を進めたのだが……。


「うーん、この色はどう見ても失敗な気がする」


 できたのは焦げ茶色の液体。

 見た限りでは、失敗作に見えるのだが……。


「まあ、いいや。最後の工程、カーズファントムの魂を混ぜます!」


 焦げ茶色の液体にカーズファントムの魂を混ぜる。

 その瞬間。


「わきゃ!?」


 ボフンという音とともに調合していた物質がすべて破裂してなくなった。

 ……うん、調合失敗したようだな。


「……だから、最後まで説明を聞けといったのさね」

「あー、つまり、いまの俺たちじゃどうあがいても調合できないレベルのアイテムか」

「……そうなの? オババ?」

「そうだねぇ。できることなら初級スキルの最初の壁を越えるくらいはやっておいてほしいさねぇ」


★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆


「……えーと、もう映ってるな。こんばんは。サイの彼氏ことフィートです」


{わこつ}

{あれ、いきなり彼氏さん?}

{サイちゃんどこ行った}

{サイちゃんの放送なのに、本人が映ってないとかw}

{なにかの放送事故?w}


 まあ、サイの放送でいきなり俺しか映ってなかったら驚くよな。


「あー、サイなんだが、現在絶賛へこみ中」


{あのサイちゃんがへこみ中}

{一体なにがあったの、彼氏さん}

{すっげー気になる}


「いま、俺たちはあるクエストを受けてるんだ。それで、そのクエストでボスドロップを集めてきたわけなんだよ」


{まあ、わかる}

{そんなクエストざらだよな}

{そんなんで落ち込むか?}

{すっげー今更だよな}


「で、そのクエストでは集めてきたアイテムを調合して別のアイテムにする必要があったわけなんだが……」


{あ、オチが読めた}

{サイちゃんらしいっちゃらしい}

{どれだけの時間を無駄にしたの?w}


「言わなくてもわかるか。その調合に失敗したんだよ。それでもって、その調合って初級スキル……サイいわく【初級調合】なんちゃらがないと無理だって」


{サイちゃん……}

{入門スキルなのに……}

{先走りすぎだ……}

{やっちゃったな}


「ちなみに、無駄にした時間はおよそ二時間ちょっとな」


{地味に痛い時間だな}

{今日の配信が遅かったのはそれでか}

{リカバリーは効くけど面倒ではある}

{ボスドロ周回ってのが面倒だよな}

{ボスドロ10%とザコドロ数%のどっちが面倒かって話になる}


 さすがサイのリスナー。

 事情はおおよそ把握してくれたらしい。


「まあ、そういうわけで、サイは部屋の隅っこでいじけてる。でも、配信しないのもあれだからと言って俺にすべて任せると」


{サイちゃん……}

{彼氏さんお疲れ様だ}

{今日は彼氏さんの生放送なのね}

{さて、どんな話をしようか?}


 俺に聞かれてもなぁ……。

 どんな話がうけるのかまったくわからんぞ。


{とりあえず、彼氏さんの【調合】スキルについて聞こうか}

{あ、それは俺も気になってた}

{彼氏さん、一体どこのNPCに習ってるの?}


「うん? 悪いけど、それは内緒だな。本人の許可がもらえるなら別だけど」


{ですよねー}

{でも、リジェネポーションやメディテポーションを作れるのって現状彼氏さんとサイちゃんだけなんだよ}

{まて、サイちゃんは熟練度不足でまだ成功率が低いと聞くぞ?}

{となると、実質彼氏さんの独占か}


「え、マジ?」


 さすがに、普通に【調合】を習っているプレイヤーでも覚えてると思ったんだけど。


{マジマジ}

{ギルドで【調合】を習っている連中はギルド貢献度が足りなくて秘伝書関係のレシピはまだなんだって}

{あ、秘伝書っていうのは普通に覚えられないレシピが載ってるアイテムのことね}


 あー、つまり、これはあれか。


「市場に流したら争奪戦になりかねないと」


{イエス}

{まあ、気付かれればの話だけどね}

{価格操作もしておけば混乱はしないだろ}

{というわけで、彼氏さん。プレイヤーズマーケットにリジェネポーションシリーズを流しやがれください}


「うーん……それはサイと相談だなぁ」


{急ぐ必要は……できれば急いでください}

{あれがあれば上位ボスが楽になるんだよ!}

{リジェネポーションがあれば継続ダメージを一時的に無視できる!}

{メディテポーションがあればアーツを安定して使える!}

{というわけで、ほんと急いでください}


 うーむ、サイのやつがこの前気軽に配信に流した情報がここまでになるとは。

 ……面倒ごとが起こったらサイにぶん投げよう。


「わかった。サイが復活したら相談してみるよ。ただ、あまり安くはできないぞ」


{それは覚悟の上です}

{ちなみに、おいくら?}


 値段かー。

 そうだなー。


「低級リジェネポーションが一万五千、低級メディテポーションが二万?」


{彼氏さん、安すぎ}

{サイちゃんチェックが走るから問題ないだろうけど、一万ずつ上げるか二倍の値段にしなさい}

{どうせ数は作れないんでしょう?}


「そうさなぁ……一日に供給できるのは十個ずつが限界かな」


{はい、値段決定}

{彼氏さんの提示額の二倍以上になります}

{それでも買うぞ。っていうか、その程度は覚悟してた}


 えぇ……。

 原価的にはリジェネポーションが一万、メディテポーションが一万五千なんだが……。


{そのくらいの値段をつけないと転売される。というか、サイちゃんに聞いて購入後のトレード禁止……はきついからマーケットへの再出品禁止はつけなさい}

{本当ならトレード禁止でいいレベル}

{トレード禁止だとパーティメンバーにすら渡せないからなぁ……}


 よくわからないけど、いろいろな制限ができるそうだ。

 サイに相談していろいろやってみよう。


「よくわからないけど、サイに相談するよ。……それじゃあ、今日の配信はこれくらいでいいかな? サイもオーケーサイン出してるし」


{オッケーよ}

{リジェネポーションとかの販売見込みが立っただけでも丸儲け}

{あ、ちょっと待って。彼氏さん、いまのレベルはいくつ?}


「いまのレベル? ボス周回をしたから51まで上がってるな」


{おお、かなりのハイペースじゃん}

{ってことは一回目のレベリセできるのか}

{課金すればレベリセいけるよー}


 レベリセ?

 なんのことだろう?

 なにか大事なことなのかな?

お読みいただきありがとうございます。

面白い、続きが気になる等思っていただけましたら、ブックマークや下の☆マークをポチポチして★にして応援してもらえると嬉しいです。


感想などもお待ちしております。


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Unlimited World ~生産職の戦いは9割が準備です~
― 新着の感想 ―
[一言] 実は彼女メシマズ属性だな? 嫁(候補)は熱いうちに叩けよ…
[一言] うわぁ、主人公って典型的な原価厨か。 絶対に自分で値段付けじゃダメな人だ。
[気になる点] レベルリセットかぁ…自分の知ってるゲームだとカンストしてないと無駄が多くなるってやつを知ってはいるがはたしてどんなパターンなんだろうか? [一言] 人の話はちゃんと聞かないと駄目だって…
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