捜査を押し付けられるだけの簡単な事情聴取
オレは旧校舎の中庭の魔法陣に転送された。
校舎に残っていた生徒もほぼ同時に現れたようだ。
無傷の生徒もいれば、倒れている生徒もいる。
「何があった?」
オーリエ先生はオレに問う。
「敵は帝国です」
オレはそう答える。
「帝国?」
「一体どういうことだい? 状況が掴めない」
フランカとジュロードスは戸惑っているようだ。
「とりあえず、怪我人を運ぶのを手伝ってくれ」
オレ達は医務室へ怪我人を運んだ。
* * *
翌日、オレととサクヤが呼び出された。
「まず、お前達が襲われたときの詳細を聞きたいが、大丈夫か?」
「オレは構わない」
「ボクも大丈夫ですよ」
「助かる。さっきジュロードスとフランカにも聞いたが、そもそも事件のことえお知らなかったようだったからな」
あの2人はディフェンスをやってもらっていたから、敵には出くわしていないだろう。知らないのも無理はない。
「それで、敵はどんな奴だった?」
「黒いマントを被っていて、よく見えなかったよな?」
「うん。年齢も性別も検討がつかないよ」
「そうか」
その後、オレ達は敵がどんな魔法を使ったのか、そしてどのように対処したのかをオーリエ先生に話した。
「なるほど、だいたいわかった。だが、敵の攻撃によって指輪が反応しなかったのは何故だろうな」
その点についてはオレも疑問を持っていた。
「闇属性の魔法だから反応しなかったということは?」
サクヤはそのように考えたようだ。
「それはない。属性は関係なく、一定のダメージを受けた場合に反応するようになっている」
「それなら違うよね」
指輪が壊れていれば、オレの攻撃によってリースは転送されなかったはずだから、正常に作動していたはずだ。
ともかく、その点は検証する必要があるだろう。
だが、現状、そのタネを明かす術を持っている人間はここにはいない。
「他に疑問点はあるか?」
「直接関係があるかは微妙ですが、サクヤの回復が早すぎるのではないですか?」
オレがここに来て最初に思ったのはこれだ。
「ああ、そうだ。そういえば少々引っかかることがあった」
「引っかかることですか?」
「医師によれば、サクヤとリースは軽傷だそうだ」
「軽傷ですか? 昨日の様子だとしばらくは動けそうもなかったですが」
現にサクヤはここにいる。外傷も見当たらない。
「ああ、だが、ニコはしばらく絶対安静が必要なようだ」
「ニコはどこに?」
「学園外の医療施設にいる。会いに行くのは難しいだろう」
「そうですか」
「サクヤ、君はとりあえずこれでいい。帰ってゆっくり休むんだ」
「はい、それでは失礼します」
サクヤは部屋を出る。
「ローランド、君にはいくつか話しておかなければならないことがある」
「何でしょう?」
「敵は計画性を持ってこの犯行に臨んだことは間違いないだろう」
「そうでしょうね、」
「そして旧校舎で試験が行われることを知っていたのはクラスの人間だけだ」
模擬試験そのものはかなり前から知らされていたが、場所や内容は前日、チーム分けに至っては開始直前に発表された。学園外の人間の犯行とは考えにくい。すると……
「つまり、敵はクラスの中に紛れ込んでいるとお考えですか?」
「俺個人の見解としてはそうだ」
帝国のスパイがオレのクラスメイトにいる。
どうやって紛れ込んだんだ?
今はそれを考えても仕方ない。
「お前にはそいつを探ってもらいたい」
「オレにですか?」
「ああ、リース姫護衛の仕事の一環としてな」
今まですっかり忘れていたが、オレはリースを護衛するためにこの学園に入学したのだったな。
「前にリース姫が襲われる心配はないって言ってましたよね?」
「そのイレギュラーな事態のための君だろ?」
「オレにそれができると思いますか?」
「直感だが、お前が犯人を見つけてくれる気がする」
そんな無茶苦茶な。
「お前はどっちみち、自力で探すつもりだったろ?」
「そうですね。犯人にも絶対暴いてやるって言ってしまいましたし」
厄介な事件に巻き込まれたと思う反面、ワクワクしている自分がいるのも確かだ。
「X探しをやってみますけど、期待はしないでください」
「はいよ、あともう1つだけ、この状況だからリースはしばらく学校に来ないだろうけど、もし来ることになったら、ニコが復帰するまで、登下校時についてやってくれ」
「わかりました」
そしてオレは先生の元を去った。
考えを巡らせながら帰路を歩く。
なぜ指輪の安全装置は発動しなかったのか?
なぜ2人は軽傷で済んだのか?
話題には出さなかったが、敵の雷魔法はマントを貫通した理由も気になるな。
だが、きっと敵の能力を見抜くヒントになるはずだ。
必ずその謎を解き、Xの正体を見破ってやる。
そう心の中で誓った。




