学校を追放されるだけの簡単な処分
「成績最悪、魔法も使えない、遅刻、欠席多数、君をこの学び舎に留まらせる理由があるなら教えてくれないか?」
男は彼の酷い成績表を見せながら問う。
「……あるとすれば……ポテンシャルですかね」
少し考えた後に、彼はそう答える。
「ハハハ、面白い冗談だ」
「案外もう1年したら強くなるかもしれないですよ」
「君はこのポルトゥス海洋学院に必要ない。出て行ってくれ。と言いたいところだが、君に1度だけチャンスを与えよう。ローランド」
「チャンスですか?」
「ついてきなさい」
男に連れてこられたのは屋外の広場だ。
そこには1人の大柄な男子生徒がいた。
「彼はこの学校でも屈指の実力者。」
その男子生徒は無言でローランドの前方に立つ。
「彼と魔法で決闘して勝てば、残留することを認めよう」
男は杖をローランドのほうに投げる。
キャッチした杖はその辺の枝と見間違うほどの安物だ。
一方、相手の杖は金属でできていて、先端にキラキラしたものがついている。おそらく高価なものだ。
「使用可能なのは杖による魔法のみ。武器や体術による物理攻撃も禁止とする」
「困ったな、せめて武器が使えれば勝機はあるんだが……」
「負け惜しみか?」
ローランドは杖を構え、魔力を込める。
「ライデン」
杖が黄色く光り、周りに電気が生じる。
「行け」
さらに力を込め、魔法を放出する。
光がさらに大きくなり……爆発を起こす。
「ゲホッゲホッ」
杖は粉々になり、対抗手段はもう残されていない。
「初級魔法すらロクに使えないのか」
「お前の番だ、好きにしろ」
「じゃあとっておきをお見舞いしてやるよ」
相手の杖が青く光る。
「アクア」
杖から放出された水泡はローランドの顔面に直撃する。
その魔法は攻撃ではなく、明らかに侮辱のためのもの。
「フハハハ、お前なんてこの程度で十分だ。雑魚」
ローランドは何も言わずこの場を去る。
もはやここにいる意味はないと感じたのだろう。
「待てよ、もっと遊んでやるよ」
相手は再び杖を振るう。
「……」
だが、杖を構えたまま動こうとしない。
「何を……した」
相手は硬直し、声を発することもままならない。
「答える義理はないな」
ローランドは後ろ向いたまま歩き続ける。
「所詮お前らは、井戸の中の蛙に過ぎない」
最後に捨て台詞を呟き、ローランドはこの学校を去った。
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