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Guilty Birth  作者: ROGOSS
悪の証明
3/3

ようこそ、混沌な世界へ

 目を覚ませば荒廃した大地が広がっていた。

 そこにはかつて巨大な都市があったことは間違いない。しかし、全ての建物が瓦礫の山となっており、かろうじて原型をとどめている大型ビルも見るからに今にも崩れてしましそうだ。

 必死に思い出す。

 レラジェと名乗った男が俺を守り死んだ。そして俺は彼の代わりに戦うことを誓った。気がつくと今立っている場所にいる。

 

「どう考えても辻褄が合わない……」


 俺は考えることをやめた。

 そもそも、今いる場所が俺が住んでいた場所だとも限らない。だとしてら異世界転移でもしたのだろうか? はやりの漫画や小説などでもよくあるらしいが、これは紛れもない現実の話だ。異世界転移などあるわけがない。ならば、自称天使達によって街がまるごと破壊され尽くしたのだろうか?


「奈央は……?」


 一度は失ってしまった最愛の妹。だが、彼女は奇跡とでも言える力によって蘇ったはずだ。否、レラジェの話では体だけを復元したといったところだろうか。

 ならば彼女の体は今、隣にあって当然のはずだ。それすらも見当たらない。


「どこへ行ったんだ! 奈央ッ!」


 俺は走り出した。

 荒廃した街を駆け巡る。

 時より呆然とした人間とすれ違ったが、誰に話しかけても返事はなかった。まるで魂だけ抜けてしまっているかのようだった。

 

「クソッ! どこにいるんだよッ! 返事をしてくれッ!」


 気配を感じた。

 振り返ると奈央が立っていた。

 

「奈央ッ!」


 俺は駆け寄った。

 数秒のラグが発生すると奈央も俺を確認したらしく、俺に近づいてきた。

 世界はどうなってしまってもかまわない。それでも、最愛の家族の奈央だけは守りたい。彼女と一緒に過ごし続けたい。

 俺は奈央を抱き寄せようとした。奈央はそれに答えるように俺の胸の中に飛び込みながら、俺の胸に噛みついた。

 突然の出来事に奈央を乱暴に突き放す。

 

「奈央……?」


 奈央の目は赤く光、息を荒げるながら俺に近づいてきていた。ゾンビ映画に出てくるゾンビのような様子だ。良く見ると服の至る所に血飛沫を浴びたかのような後がある。


「グガァァァァッ!」


 奈央は叫びながら俺に襲いかかってきた。

 

「やめろっ!」


 俺は咄嗟に落ちていた廃材を使って奈央と距離を取る。俺の言葉に反応を示すことなく、奈央は幾度となく俺に襲いかかってきた。それは本能のままに動いている獣のような様子だ。


「奈央ッ!」

「どけ、そいつは殺すしかない」


 奈央の体がはじき飛ばされた。

 振り向くとそこには黒いフードの男が立っていた。見たことのある姿だ。レラジェと名乗った男と酷似している。


「やめろっ! 俺の妹だぞっ!」

「黙れ。そいつはクソ天使達によって魂を抜かれた死骸だ。体はお前の知り合いのものかもしれないが、魂の抜け殻は他者の魂を求めて襲いかかるクソ野郎だ。駆除する」

「ふざけるな! 奈央と話せば分かり合えるはずだ」

「言ったはずだ。そいつは抜け殻だ。会話などできるはずがない」

「そんなはずはないっ!」


 力がわき上がる。自然と力の使い方を理解できた。これは託されたものだ。戦うための力だ。大切な妹を守るために使う今が使うタイミングだということがわかる。


共鳴魂(シンフォニー・ソウル)!」


 黒く冷たい炎が全身を焼き尽くす。

 永遠に続くと思われる苦痛が体を駆け回る。

 だがそれはほんの数秒の出来事だった。炎が収まるころには俺の手にはボーガンが握られていた。太ももにはレラジェが使っていたものと同じような独特な剣がある。

 俺はボーガンを捨てて剣を手に取った。戦ったことはないが、ボーガンで戦うよりもはるかに戦いやすい気がした。


「お前……それは……それは……!」


 男が怒鳴り声を上げる。

 瞬間、男にも黒い炎が沸き上がる。収まるころにはマチェットを握っている男がいた。


「その力は俺の弟のものだ。俺の弟子のものだ。それを使っているお前は何者だ。お前はいったい……誰だ!」

「お前に答える義理はない」

「そうか、よくわかった。ならばその力……返してもらうぞ。バルバトス、狩猟を始める!」

 

 バルバトスが距離を詰める。目のも止まらぬ早さで繰り出される剣劇を繰り出す。それでも俺の体は勝手に対応をしていた。俺が何かを意識するまでもなく、本能にすり込まれていたかのように対応を続ける。だが、一向に攻勢にでることはできず、防戦をするだけで精一杯だ。

 バルバトスは苦虫を噛みつぶしたような顔をすると舌打ちをする。


「チッ。戦いの記憶まで引き継いでいるのか。お前、本当に何者だっ!」

「俺はただの男子大学生だ」

「ただの男子大学生? そんな奴がまだここにいるとはな」

「なに?」

「お前……バカだな」

「よく話す奴だなっ!」


 隙をついてバルバトスの懐に剣を突き出す。バルバトスは容易に弾き返すと俺に見下すような目を向けた。


「聞け、馬鹿野郎。この世界はあらゆる可能性の終着点。通称エデンだ。ここで起きているのは天使と悪魔の大戦争。そんな戦場に男子大学生なんて名乗る奴が突然出てきたんだ。笑わずにいられるか」

「ちょっと待て! どういうことだっ!」

「続きはお前が死んだ後に死体に語ってやるよ!」

 

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