今日も園児たちは元気です。現代に転生した異世界チート園児は、チートな先生に可愛がられています。
異世界にチートな転生。
じゃあ、異世界から現代へチートな転生者が何人もいたら?
そのお子様たちが、なぜか同じ保育園に通っていたら?
滅茶苦茶になるはずの保育園は、なぜかならなかった。
そこにいた先生が、もっとちーとだったから。
でも彼女は、自分の事をよく知らいないみたい。
まあ、自分のことを理解している人なんて、理解しているつもりなだけだよね。
きっとさ。
桜を愛でるにはまだ早く、積雪に耐えて咲く花の花びらが舞う。
久しぶりというわけではないが、よく晴れた今日の日差しは、転がるように部屋へ差しこんで来る。
その部屋の中で私は、向かい合い、座っていた。
「上結 せせらさん」
向かいに座る初老の女性は、木製の上品なテーブルに広げられた履歴書に目を向けることなく、私の名前を呼んだ。
「はい」
変に引きつった声になってしまってないだろうか。
髪は、短く切りそろえて、色を入れていない。
おしゃれに気を使うと言うより、身だしなみや機能性に趣を置いている事をアピールしたいからだ。
活動的な印象を――粗雑さ”や“荒々しさ”ではなく、“はつらつ”といった感じ。
眠たげに見えるといつも言われる目を、いつもより大きく開く事に専念。
おっとりとしてそうと言われないよう、元気印の口角の上がった口元を形成中。
「子供のどこが好き?」
「『かわいい』とか『小っちゃい』とか、『母性』もあるかもしれませんけど」
「けど?」
「たぶん、彼らを通して物語を想像するのが、楽しいんだと思います」
「物語?」
「小さい頃、空想というか想像というか、稚拙な内容でしたが物語を考えては遊んでいました。そのせいか、今も童話とかおとぎ話とか好きで……子供たちを見ていると、『ああ、この子はどこに向かって、何を見るんだろう』って。期待とか夢を重ねるとかではなくて――うまく言えませんけど、もっと適当で無責任なものだと思います。でも、だからこそ見守る事が楽しいんだと思います」
私は、ゆっくりと噛み締めるように言葉を紡いだ。
やっちゃった? なんか話が終わっても、じっと見つめてきてるんですど……
「あ、あの……」
気まずい。
「上結せせらさん」
「は、はい」
「うちに来る子たちは、特別な子たちではないわ。個性的な子もいるけど、それは当たり前。集団というものをここで学ぶのだから、ね」
「はい」
「本日はお疲れさまでした。上結せせら先生」
「え? という事は」
「合格です。こちからもお願いします。あなたがこの保育園で、子どもたちの一頁になる事を願います」
しばし、呆然としてしまった。
「は、はい。ありがとうございます!」
飛び跳ねるように立ち上がった私は、思わず自分の膝に額をつけるように頭を下げていたた。
春を待つ今日。とある保育園に新しい先生――保育士に、私はなった。
□ □ □
――今日こそ許さねえぞ、魔王!
――我は許しを与える側だ。勘違いするな、勇者よ。
――争いは、何も生まないわ。
――今日もいい子ちゃんね。聖女は。
――ふんっ。リリスに比べれば、世の娘は皆聖女だろう。
――あら、ひどいわ。賢者ったら。
「せらら先生、おはようごじゃいます」
「はい、おはようございます。今日も髪がつやつやだね~」
「うん、お母さんに髪をとかしてもらったの、いいでしょう」
「そっか~。お母さん、上手だね~」
さて、頑張るぞ。
う~ん。今日もみんな元気だね。
特にいつもの五人は、いつも通りに元気みたいだ。
あの五人は本当に仲がいいよね。
何時でも、ごっこ遊びを誰とは言わずに自然に始めている。
「きょうこちょ、ゆりゅちゃ、まー」
「わ~ゆるせあ~るが~だ。かんかんな、ゆ~せよ」
「……」
「今日も、いいこいいこ」
「へん。りーりーに比べたら、みんないい子」
「え~、りーりーもいい子」
ゆー君が勇者で、まー君が、魔王。名前で決めたのかな?
しーちゃんが、シスター? 聖母だっけ?
りーりちゃんは、りーりちゃんで、けんちゃんは、学者さんの役だったかな?
なんで、りーりちゃんだけ、そのまま参加なのかは分からないけど、いわゆるヒーローごっこだよね。
たまには、勇者役を変わってあげてもいいと思うんだけど前に、
「まー君は、勇者になりたくないの?」
って聞いたら、
「なーなーいってー。わーは、まーで、やーゆーともいうーだ!」
と、抗議? された。
まー君は、自分の事を『わー』って言うんだけど、ご両親……ばりばりの東京者だった気がしたけど……?
あ、お爺ちゃんか、お祖母ちゃんが、北の人なのかな?
それはともかく、最近のお子様のオモチャってすごい。時代の最先端って感じだよね。
今も、まー君が手から赤い光る玉を、ゆー君に向けて放り出した。
それを、しーちゃんがゆー君をかばう様に、体の前で両手を突きだして、赤い玉を消すといった遊びが展開中。
「じゃーま。しー」
「……」
子供だましかもしれないけど、ごっこ遊びに使わなくても、コレだけでも楽しそう。
「えい! あ」
あ、まー君。頑張りずぎてあらぬように赤玉が飛んでっちゃったよ。
まあ、私の方になんだけどね。
「ちぇーん! あぶー」
ゆー君は、まだ『先生』と言えないみたいで、私を『ちぇーん』って呼ぶ。知人に話したら、『東の人?』って言われた。
東京者ですが、何か?
しーちゃんと、りーりちゃんが一生懸命私へと走ってくる。
あー、私が危ない状況に陥った役で、それを救うみたいなシチュエーションかなこれ。
「きゃーあ」
取りあえず、悲鳴を上げて怯えてみたけど、よし、正解!
しーちゃんと、りーりちゃんの表情が一気に険しいものになった。まあ、お子様にしてはだけど。
しかし、この赤玉ずいぶんゆっくりだね。
おかげで、二人のパントマイム走り? の才能が光るんだけど。
いや、でもすごい。この二人、将来ダンスとかで一目置かれるじゃないかな?
「やっ」
いけない! りーりちゃんが、パントマイム走法に失敗して転んじゃった!
ごめん、ごっこ遊びはここまで。
ふよふよと進んでくる赤玉を、手でペンッとはたき落として、りーりちゃんへ疾走開始。
「だいじょうぶ」
「う、うん」
べちゃーってつんのめったりーりちゃんを、そのまま起こさず、頭を撫でてあげて声を掛けた。
上目遣いのりーりちゃん、世界一かわいいよ~!
お腹とか大丈夫かな?
りーりちゃん、服の感触が嫌いみたいで、薄着というより、露出が多い服を良く着ている。
こういう時は、それが不安に思える。安全と個性、天秤に掛ければ安全なんだろうけど……
「はい、ここまで。さあ運動広場に移動して踊るよ~」
手を打ち鳴らす私に、五人も含めた教室の園児たちが一斉に返事をしてくれた。
□ □ □
――手加減したのか魔王?
――ふん。我がそのような事をするとでも?
魔王は、人差し指を立てると、米粒大の赤い光点を指先に灯した。
――あ
聖女の制止が間に合わず、レーザー光線のように打ち放たれた赤光は、園舎の一角に吸い込まれ、三十人は入る教室一つを音もなく消滅させた。
――さすが魔王の魔力はすごいわね。さっきはコレの一万倍以上のエネルギーだったのよね。
――ああ、リリス。今第の代行者の能力は、規格外だな。この賢者の書でも解析ができないよ。
「せんせー。ゆー君たちがお部屋壊したー」
――な、なんで俺なんだよ。壊したのは、魔王だろ!
――ふははは。愉快愉快。
――愉快愉快じゃねえよ。先生に怒られるだろうが!
――あ、……あれは、地味に応えるから、御免こうむりたい。
――聖女、回復の魔法をお願いできるかね。僕が賢者の石の変異錬成するから、それで効果を歪めて、修復をこころみよう。
――わかったわ。リリス。ちょっと時間稼ぎをお願い。みんなの注目をあつめておいて。
――いやよ。なんで、聖女のいう事を聞かないといけないのよ。
――おい、いいから早くしろよ。先生こっちに来そうだぞ。お前も怒られたいのか?
――勇者まで! いいわ、貸しよ。魔王も賢者もだからね!いいわね
――わかったから、行くがよい。神々を堕した淫惰の舞を。
「せんせー。しーちゃんたちが、お部屋戻したー」
――おい、あのガキを黙らせろ!
――勇者のお前がそれを言うのか?
□ □ □
「『お部屋に戻った』? どうしたの? りーりちゃん」
行き成りりーりーちゃんが、やってきたと思ったら、得意のダンスを始めた。
いやー、子供って体が柔らかいよね~。くねくねした踊りとかかわいいよね~。
あ、そうだ。
「みんなも、踊るよう~。いち、にー、いち、にー、いち、にー、の?」
みんなが『に!』と、私の後に続く。
うんうん。
あれ? りーりちゃん。他のみんなは?
一生懸命知らない振りをしてるけど、ものすごく目が泳いでる。かわいいな~。
では、ゲットしてくるかな。
「悪い子は、いねが~」
私のナマハゲが上手かったのか、『いません』の返事が、四つと一つ。
なんでりーりちゃんも返事したのかな?
30分くらいで書き上げた、勢い文章羅列群です。
なんか急に書いてみたくなったんよ。




