告白
「僕のお母さんは小学校に上がる時に病気死んじゃったんよ。お父さんさんは三年前に会社で倒れて……」
突然の勉の話に麻樹は言葉を詰まらせて言葉がでなかった。
「最初はお婆ちゃんち(後に父方と判明)に居たんだけど、お婆ちゃんもご飯つくれなくなっちゃって美穂叔母さん(後に父方の妹と判明)に引き取られたんだけど……」と言葉が途切れた。
どんな言葉を掛ければ良いのか、何を話せば良いのか、麻樹グルグルと思考するが何が正確が解らず押し黙っていた。
(大変だったね?いや違う。そんな事は当たり前だ。可哀想だね。これも違う。同情されたい訳では無いだろう。こんな時私だったらなんて言われたいだろう?果たして何も言われたいのだろうか?解らない……)どんな言葉を掛ければ良いのか全く解らないなりにも、何か言わなきゃと出た言葉が
「よく頑張ったね!」
眼に光が戻り、ぱぁーっと笑顔で「有難う……」と勉は照れ臭そうに言った。
自分でも何故そう言ったのか解らなかったが笑顔を見てこれが正確だったんだと麻樹は確信した。
「じゃぁ今回の転校も同じような感じ?」
「うん、美穂叔母さんの所はちょっとしか居なくてその後お祖父ちゃん(後に美穂叔母さんの旦那の実家と判明)に引き取られてたんだけど急に引っ越す事が決まったんよ。」
「そっかぁ〜……大変だったんだね…」
(大変なのは確かだけど他人の家の繋がりややこしい……てかよく闇落ちせずここまで来たな…)
「でも僕、子供じゃけ仕方ないんよ。」
(その歳で達観してるなぁ~……達観じゃ無いのか。諦めか……それだけ苦労してるんだ。)
「それより麻樹さん、腹減らん?」
「え?今あんなシリアスな話してたのに?何それ?」
「真面目な話すると腹減るんよ!」
余りの切り返しの速さに戸惑いながらも反射的に「うん、そう言えばそうね」と麻樹は曖昧に相槌を打った。
二人はホームの上に立っている。
何故なら電車が止まったからだ。
鈍行なのでさっきのゲームの特訓の途中でも何駅か停車していたが今回は長かった。
「急行列車通過の為、暫く停車します。」だそうだ。
止まったから序にとばかりに駅弁を買おうとホームに降りたのがさっき。
またしても自販機もキオ○クらしき物も全く見当たらない。
「う〜ん……う~……どうするかなぁ……」と二人して頭を捻っていると車掌さんが寄ってきた。
「どうなされましたか?」
「お弁当を買おうと思ったんですけど売店が見当たらなくて……我慢しますよ」
(つとむ君ごめん!)
「あ〜……確かにこの駅は何にも無いですねぇ。売店なら外に出れば有ると思いますが……」
「麻樹さん……腹がぁ……」
「う~ん、でも外に出ないとお店無いから……」と言い掛けた時に
「少し切符を拝見しても宜しいですか?」
「え?あ、はい!」
「はい!」
ふむふむと切符を見て、何か切符をペンチ?で挟む様な仕草をして戻される。
「お二方の乗車券は途中下車可能になっておりますがどうなされますか?」
「え?だって1回降りたらダメなんじゃなぃんですか?」
「いえ、特急券は原則途中下車は出来ないんですけど、乗車券なら距離によって途中下車出来るんですよ!ほら、ここ。」
見てみると確かに途中下車の可能な期限が書かれている。
「し、知らなかったぁ〜!」
これ幸いとばかりに途中下車する事に決まった。
「七本塚駅」
こう書かれてあった。
何処に向かっているんだろう?(笑)