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浦咲麻樹
「ガクン……」
窓に擡げていた首が揺れて目が覚めた。
少々痛みを感じつつ車窓に眼をやると
見慣れた山並みと海が見えて来た。
「もうすぐかぁ……」
目的地が直感的が近付いて来ている事をその女は感じ取った。
浦咲麻樹
某お茶の有名な地方都市で
建築事務所に勤務している。
西日本のごく一般的な普通の公立高校を卒業して
お世辞にも有名とは言えない普通の地方にある大学を卒業して
何と無く実家に戻る気にもなれず
特になりたい理由でもなく
今の勤め先に就職した。
今年で6年目。
そして現在28歳……色々考える年代である。
そんな麻樹が有給を使って実家に帰る所から物語は始まる。