顔合わせ
入口に立っていた加賀美が教室へ入って来る
「それは私が説明した方が良いかな。九朗、久々利先生のことを呼ぶ時は・・」
「悪かったよ、おっさん」
「おっさんって?!学長!!」
深山さんがアワアワし出した、そりゃ学長をおっさん呼ばわりして、担任も愛称で呼ぶ
ような転校生、それが国家公務員の肩書き持ちで俺のプロフィールに目を通していても、
開示されていない情報の方が多かったようで特治関係の話は全く知らない様だ。
「なにやら混乱させてしまった様だね、くろは私の甥なんだ。
それと生徒会の協力が必要になるので、深山君にも残って貰ったんだが私の体が空か無く
てね、随分待たせた様だ、申し訳ない。
九郎、荷物はここに置いておくぞ、それから彼女へ所属と身分の開示と学校への協力要請
を正式な書面で用意しておいてくれ、その書類が来たら風紀班の方には生徒会から通知を
頼むよ深山君、久々利先生はこいつの生徒会との顔合わせをお願いします。終り次第、
事務所に案内してやって下さい」
加賀見は言いたいことだけ言って去って行った。
スーツの内ポケットから特治の身分証となる手帳を取り出しつつ
「言うことだけ言って終わりかよ、あぁ長いから一回しか言わない。
混雑種特別保護地区衛浜市、対混雑種特殊治安部部長兼第一機動隊隊長 伊万里九朗だ
宜しく頼む」
「あっ、えっと、私立衛浜第一高等学校、生徒会副会長 深山舞です。出来れば舞って
呼んで貰えると嬉しいかな」
改めてお互いのポジションの確認をして瑞樹に連れられるままに生徒会室に向かい、
簡単な挨拶を済ませるはずだったのだが
「お~、来たね!我が城生徒会室にようこそ!!伊万里九朗君!」
部屋の扉を開けた瞬間暑苦しい挨拶が飛んできた、
「・・・・・・・・・・あっあ~よろしく」
「おっと自己紹介をしなきゃだね!!僕は心衛心、この学校の生徒会長でこの島の長の
息子さっ!!シンって呼んでくれたまえ。で例の件は副会長の舞君に全部お任せするので
全面的に彼女を頼ってくれ、クラスメートだしその方が都合いいと判断したよ」
いつキャラブレを起こしても疑問がでないハイテンションと言動にだいぶ圧倒され気味
の俺は助けを求めるように瑞樹に視線を送るがため息をつかれた、
「舞、心ていつもあんな感じ?」
「そうね、あの万年常夏頭な感じはいつも通りね」
呆れと疲れの混じった顔を向け、ため息をつく
心衛心、生徒会長にして生徒会のお荷物と呼ばれる人物。仕事はせず来ても仕事を妨害して
帰っていく困った人だと。
しかし人望だけはあるらしく生徒からの評判はいい、ダンピールで本人曰く吸血衝動は強い方
だとのこと血液交換による隷属化さえしなければなこの学校に通っている分には当人同士の合意
があれば吸血行為は許されている。
しかし考えが全く読めないタイプであまり敵にして良いタイプではない。
「あいつ面倒くさい奴だな」
「そうですね、面倒事は会長だけでお腹いっぱいなんで。他の『モノ』で、私をお腹いっぱいにして
下さいね、伊万里さん」
「風、学内風紀が乱れる様なのは、、」
「姉さん自重して、そのまな板みたいな胸並みに自重して。私は水原空、生徒会では会計をしています
このビッチが姉の風、淫魔系の家系なのでご迷惑をかけると思いますがよろしくお願いします」
会計・庶務を担当している水原風・空姉妹、双子らしく見た目に胸の大きさに違いがなければ
判らないくらいだ。空は凄く落ち着いた雰囲気だが、胸にスイカでも入っているのではと思うくらいの
サイズで誘惑するしないの話では無く、目が行く。瑞樹の視線がやや気になるが、俺、高校生です
枯れてません!気になるのはしょうがないでしょ!!
風に至っては自己紹介が終るなり抱きついて誘惑をしてくるのは遠慮願いたいが淫魔の家系だから
しょうがないのかも知れない。
ここにユラと、生徒会・・・曲者揃い、しかしこれをまとめているのは心ではなくて舞なのだ。
実質的な生徒会の舵取りを放棄して放蕩三昧の生徒会長ではない。
舞の《オハナシ》が如何に出来上がってきたか想像がついて同情しかない