馴れ初め?
ユラが教室から出て行き、かれこれ30分が立つが、まだ瑞樹が来ない。
「みずきちの奴なにしてんだ、人のことを待たせておいて」
深山さんがいることをすっかり忘れ、つい馴染みのある呼び方で名前を呼んでしまった。
さっき気を付けろって言われたのに、慣れない場所でやはり自分でも気付かずどっかしら
で弛んでいたんだろう。
「ねぇ伊万里君」
オズオズという感じで深山が俺を見ていた、
「前の学校とかで彼女とかいなかったの、ほら転校する時に残してきた的な」
「はぁ?」
ちょっと固そうに見えるというのはあれかも知れないが、意外なというか、斜め上の
ところの質問が飛んできた、しかし本命の質問て雰囲気ではない
「あぁ~・・いなかったよ、そんな事考える余裕もなかったな。」
「じゃ久々利先生とはどういう関係、さっき先生が貴方を愛称で呼ぼうとしたみたいだし、
今、伊万里君〈みずきち〉って」
さっきのボヤキを聞かれたならしょうがない、でもって瑞樹の言い直しに気付いて質問が
来るとは予想外だ
「昔、あの人に家庭教師をして貰ってたんだ。片親で晩飯なんて一人で食うのが当たり前
だったんだけどな、あの人が来てから晩飯作ってもらったり色々世話になったな」
そう、いろいろお世話になったんだ。本当に色々、年頃のガキがちょっと綺麗なお姉さん
とお近づきになればまぁなんだ、そういうことを考えたりする事もあるので、なんという
かパッション?みたいな、しかし俺は軟派じゃない・・・筈、目標も目的もあった余計な
ことに頭のリソースを割いた時間は1週間くらいだったが
「・・・・そっか・・・手強いな」
なにやらボソボソと呟いているが、全く聞こえないがあまり関わらない方が良さそう
なので、ここはスルー。ユラが開けっ放しにしていた入り口に瑞樹戻って来た
「ごめーん、すっかり待たせちゃったね」
「遅い!何してたんだよ、みずきち」
「ちょっ!!、教室では!」
全力で慌てて、俺の口を塞ぎに来るがそんな簡単に塞がれてやる俺じゃない。
「先生、生徒会に行かなきゃいけないので用件を聞いても良いでしょうか?お二人の馴初め
はさっき伊万里君から来ましたから、あだ名とかも」
「そうだね、生徒会とも関わりのあることだから。えっ?馴初め?ぇう・・、馴初めって何?
えっどういう事」
あぁ未だにこの手の話題の免疫が薄いらしい、さすがに全く経験が無いわけじゃないだろうに、
なんと初々しいことか
「深山さん?、別にみずきちとはそういう間じゃない、なんつーか姉弟みたいな関係って言えば
いいのかな」
「あっ、そうそう出来の悪い弟!」
「国家公務員の試験は一発で通ったぞ俺」
軽く睨むも瑞樹は慣れたものでスルー、横にいる深山は本当に可哀想なくらいに処理が追い
ついていないようで俺とみずきちを物凄い早さで見比べている。
「え?国家公務員??」
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