嵐の前に
渚と事務所を出る時に特治の制服に着替えて風紀班の面々との打ち合わせと向かった。
生徒会室の真上にある風紀委員会の詰め所になっている、生徒指導準備室。
なぜ準備室かは簡単に舞が説明してくれた。
風紀委員会で生徒の摘発を行った場合、先にこの詰め所で調書を取り生徒指導の教員に引継ぎ、その後の職員会議で処分などが決定される。
風紀委員会には捜査と拘束の権限が与えられているが罰則を決める権限は無い。
警察と検察みたいな関係、というのが言い得て妙だが一番納得のいく説明だった。
弁護士の居ない裁判だって事だけが気になるがその辺は、あのお調子者がうまく立ち回っているらしい。
「では、風紀委員会治安維持対策班並びに生徒会役員による合同会議を行う、進行は対策班、副班長の私、橋本が行わせてもらう」
特治の事は放置ということらしい、俺はこいつからいささかの悪意を感じつつ会議の始まりを教室の隅で見ていた。
会議の進行は風紀班の副班長が行うようだ。昨日刺叉を向けてきた連中に居た。
舞の話では普通の人間でかなりの偏見を持った人物、風紀班に入った理由はハイブリッドやキャリアの取り締まりが出来るならというもので、差別的な発言もしばしば挙げる事があるらしい。
家はかなり裕福な家庭で家政婦を複数雇って居るだとかなんだとか、
「・・・まず昨夜、繁華街で起きた吸血種型ハイブリッドの起こした事件について詳細を共有しようと思う、全員紙の資料は・・・・」
というように最近のハイブリッド、キャリアの起こした事件を糾弾するような形で進行している。手を挙げ質問を挟もうとしても
「すまない、部外者の質問に答える時間は無いんだ」
どうやら喧嘩を売ってくれているのだと判断した。
「心衛会長、申し訳ないが特治からの正式要求として受け取ってくれるか」
一枚の紙を持ってきたファイルから抜き出し、心へ手渡す。
「OK~拝見させてもらうよ、副班長君はしばし進行を止めてくれるかな?」
「会長がおっしゃるなら、承知しました」
不承不承といった感じでシンの指示を受け入れる。
「う~ん、これはなかなか穏やかな内容じゃないね。副会長はこの内容は・・」
「事前に聞いていますから、結構です。今回はこの内容を審議する為に会議を開いたはずが、通常の報告会と勘違いされているようですので」
昨日事務所の片付けなどの途中で簡単に班の主要人物の話を聞いて、今日の会議で議題にあげて貰った、渚が思ったより早く行動をしてくれた事で進行が遅れはしたが、まぁいい
「あっそう、そうだよね~こんな退屈な報告をわざわざこんな風に集まってやるのは無駄だもんね」
「えぇ、ですので風紀班の班長からは遅れると連絡を頂いています。」
「んじゃ、本来の議題を詰めようか、誰か京くん呼んでくれる?」
風紀班の面々に班長の呼び出しを依頼するシンは、舞から全然仕事をしないお荷物と言われている印象とはだいぶ違って見える。
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