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To write down

作者: 夕月永羽

この世界は物語にあふれている。現実・空想を問わず世界は物語りで出来ている。古くから語り継がれる物語。偉人たちが残した業績をたたえる伝記。決して日の目を浴びない、何気ない日常。誰かが書いた、紙の中で行われる非日常的な大冒険。それらは全て、文字として書かれることで表に出てくる。書くという事は、物語を記すこと。物語は、そうやって世界に広がっていく。

この世界は物語であふれている。それは、誰もが主人公の決して語られることの無い物語の積み重ね。記されることで広がる無限の世界。さあ、お話を始めよう。記されることでしか広がらないこの世界で、物語を綴るという事の意味を問う物語を。


人ははるか昔から物語を綴ってきた。日本最古の物語として《竹取物語》が知られている。今から約千人以上昔に書かれた物語だ。それを初めに、清少納言の随筆《枕草子》。日記調で書かれた紀貫之の《土佐日記》。史実を記した琵琶法師の《平家物語》様々な形で様々な物語は綴られてきた。その活動は現在でも盛んで、紙に記すだけでは無く、インターネットで自分の物語を記す人も多く出てきた。日本に限らず、こういった活動は世界に見られる。時代・文化、それらが違えど、人は物語を作り続ける。記された史実は、歴史を作る。記された架空の物語は、人々に娯楽を与える。それは喜びであり、悲しみである。共通してあるのは人の心を動かすこと。すなわち、感動させるのだ。物語とは人を感動させるためにあるのだ。


なぜ人は物語を綴るのだろうか。文字として書くのだろうか。本屋に行けば、そう言った誰かの書いた本であふれている。実用書、料理本、小説。多種多様だ。小説だけ見ても、ミステリー・ファンタジー・恋愛といくらでも分類できる。それらは全て、普通の人によって書かれている。世界は物語であふれているのに、実際に目にするのは本の中でだけだ。彼らは一体何を思い、特別な物語を書くのだろうか。それはきっと、そこに物語があるから。現実でなくてもいい。どんなにあり得ない展開でもいい。ちょっとした料理のアイディアや経済についてでもいい。そこに、誰かに知ってもらいたいと思える物語がある。何気ない日々は幸せであれど、忘れていく。それが人というものだ。それは寂しいことだ。だから、決して忘れられない、残したい物語を綴る。たった一人にでもその思いが、物語が届けばいいと信じて。


この世界は物語であふれている。幾人もの人が綴る特別な世界。この地球の全ての人が主人公の、希望の世界。

夜明け前の静寂が。宵闇へと誘う静かな星の煌きが。自然という雄大な環境を育む大きなこの地球が。それら一つ一つが素晴らしき世界を表す物語のパーツ。

回りゆく世界は、終わらないワルツのよう。陽気なメロディーに合わせて語る、吟遊詩人の紡ぐ優しい世界。歪みを含みながら、見事に調和して、幾人もの人によって語られる。

そう。世界は決して完成することの無い大きな物語。


物語を綴るという事は難しいことではない。難しい言葉で、賢ぶって書く必要はない。物語は特別なもので、特別でない物。日々の積み重ね。必要なのは、今を生きること。それこそが物語を綴ることなのだ。


物語は人を作る。

物語は心を動かす。

物語は神を作る。

物語は拠り所となる。

物語は文化を作る。

物語は歴史となる。


物語は……世界を作る。

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