放送開始
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ぼくの通う学校には、放送部が存在する。
放送部なんて、大体どこの高校にもあんだろが、と思う人もいるのではないだろうか。しかし待ってくれ、落ち着いてくれ。この学校の放送部は、変わっている。
私立尾噺高等学校。此処こそ、ぼくの通う学校だ。そしてここの放送部では、部内でちょっとした抗争が起こっている。
月、火、水、木、金の五つの曜日全てを放送部が放送しているのだが、昼休みの約三十分間、番組を自作し流している。簡単なラジオみたいなものだと思ってくれ。
そして、各曜日で内容が異なる。
月曜日は、一年女子の名塚と峰内が担当する『なーちゃんみねちゃんのかっぷりんぐらじお』が放送されている。この番組は校内の腐女子に人気が高い。内容は言うまでもないが、カップリングについて、熱く語り合うというものだ。学校のあの男子は攻め、あの男子は受けとか、今期の女性向けアニメではコレが一番熱いとか。
校内支持率は、五十二パーセント。
火曜日は、三年男子の黄令と勅使河原が担当する『ときめきボイス』が放送される。この番組のパーソナリティの二人は、イケメン&イケボで有名だ。死ね。よって女子人気が非常に高い。内容は、番組で集めた《言われてみたい台詞》をひたすらパーソナリティが言ったり、女子についてどう思うか語るという構成だ。女子の支持者は多いが、男子は殆どいない。男子で聞いているのはホモォさんくらいである。
校内支持率は五十パーセント。
水曜日は、二年の男女、乙女川と剛田が担当する『乙女よ強く在れ』が放送される。誤解されがちなので注釈をしておくと、乙女川が男。剛田が女である。この番組は男女問わず人気だ。内容は乙女川を真の男にすべくどうすれば良いかを考え、実験していくというものだ。
校内支持率は六十二パーセント。
木曜日は、一年男子の言庭と、二年男子の止が担当する『シャワヘッドたかた』が放送される。この番組は、パーソナリティが独自に考えた世の中に在ったら役立ちそうなものを、某通販番組の様にリスナーに売り付けるという内容になっている。番組中、ボヤイタ―という書き込み形式のコミュニケーションツールでリスナーの意見も取り入れながら話が進む。
校内支持率は六十パーセント。
そして、金曜日。学校の教師と生徒の二人が担当する『お勉強なんて…』が放送される。これは、学校の教師も生徒も特定のパーソナリティが決まっておらず、教師の場合は先週の担当の先生がくじを引き、そこに名前が書いてあった先生が、生徒の場合は年組番号が書かれた紙をボックスの中から引いて指定された人物が担当となる。この番組は生徒が先生に本音を言っちゃうという番組だ。特に先生方から支持されている。
校内支持率は五十二パーセント。
さて、全曜日の番組内容を説明し終えたが放送部では《支持率》と呼ばれるものが、争いの発端となっている。
《支持率》が高い番組ほど、部内でのヒエラルキーが高くなるのだという。
ああ、また一週間が始まる。
放送開始