無才能
いやー文章を書くってやはり難しいものですね。
これでも必死に書きました……後生です!どうか見ていってください!!!!
地図に示された場所――普通科の教室へと訪れた俺は、先程の校長室に居たときのような行動をしていた。
なんて自己紹介をすればいいんだ?
「間違って転校させられた青井 桜音と言います!これからよろしくお願いします!」
一人廊下で予行練習をする。
これじゃダメだ……何か少しでも好印象の与えないと……。
となると自分の長所を挙げれば良いのでは?
「青井 桜音です!得意なことはフィッシングです!」
それただの趣味じゃねぇか……!しかもなんだよフィッシングって……変に英語入れなくて良いから。
やっぱり、自然体で行った方が良いよな……そっちの方が後々楽だろうし……。
…………っよし!
自分の頬をパンパンと強く叩く。
これで多少は気合いが入った。
後は噛まないように自己紹介するだけだ……!
「失礼します!今日からこのクラスに……」
教室に入った途端、異様な光景が目に飛び込んできた。
俺が想像していた教室は、ガヤガヤしていてもっと賑わいのある場所だと思っていた。
実際には……その教室の窓際にポツリと一人生徒が座っているだけの光景がそこにはあった……。
瞬間、開けられた窓から教室へと風が入り込む。
その風に生徒の髪が舞う。
白く、艶のある綺麗な髪……いや、それだけじゃない。
華奢なか細い腕と足……そして整った顔立ち。たぶん……というか可愛い。
少し彼女に見惚れていた俺は我に返り、自己紹介を続ける。
「えっと、俺は青井 桜音って言うんだ……よ、よろしく」
「……音無 奏だ。よろしくな」
本から目を離さずに、名前だけ言うと再び沈黙する。なんかぶっきらぼうな奴だな。
少し彼女の態度がイラッときたが、ここは天才の集まった高校だ。
天才の価値観は、きっと俺たちみたいな平凡な奴等とは違う――――どんな性格をした奴がいても不思議じゃないだろ。
ここはとりあえず、必要最低限のことを聞き出せれば問題ないか。
「なあ、どうして……アンタ一人だけなんだ?他のクラスメイトは?」
もしかしたら、今は体育の時間で他の奴等は授業に出ている。
しかし彼女は体調が悪いため、この教室で残っている……って、流石に体調が悪くても授業には出るよな。
それか保健室に行くだろ……。
「クラスメイトなんて居ねぇよ……ここには。このクラスには私一人しかいない。それだけだ」
「い、居ないって……何でだよ、理由くらい教えてくれ」
「はぁ……?お前、アイツからなんも聞かされてねぇのか?」
彼女は大きなため息を吐くと、本から俺に目線を移して話を続ける。
たぶん、アイツとは校長の事だと思う。
あの人から聞かされたのは、このクラスに転入を条件に学費、生活費を負担してもらうことくらいだ。
「聞かされてないって……せ、説明を求む」
「このクラスは奉仕活動をしている限り、好き勝手が出来る」
「……………………はい?」
「授業だってしなくても進学できる。奉仕活動さえしていればな」
ちょ、ちょっと待ってよ。
この女さっきから無茶苦茶言ってますけど……。
「な、なんで奉仕活動するだけでそんなにも楽が出来るんだ?そもそも、奉仕活動って具体的にはどんなことを?」
「……この学校のエリートどもの悩みを解決することだ。このクラスは、言わば何でも屋みたいなクラスだな」
何でも屋…………確かにエリートの悩みを解決することは楽な仕事じゃない。
その見返りが好き勝手出来るって訳か……。
「……ん?待てよ。それはこのクラスに人がいない理由にならないだろ?」
むしろそんなことをしているんなら人手が必要なんじゃないか?
一人でそんなこと出来るわけ……
「それを出来るのが私だけだからだ」
「どういう……意味だよ?」
それ以上彼女から、俺の問いに対する答えは帰ってこなかった……。
ただ分かったのは、どうやら俺は面倒なクラスに転入してしまったらしい…………。
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窓から外の景色を眺める。
気付けばとっくに日が暮れており、既に夜空が広がっていた。
あの会話以降、音無とは一切会話をしていない。
気まづい空気が漂うなか、延々と一時間毎に渡される課題を解きまくっていた。
エリートが集まる高校だから、超難題が出題されると思っていたのだが意外とサラサラ解けた。
きっと俺にレベルを合わせて問題を作ってるんだろう。
音無はというと、終始分厚い本を読んでいるだけであった……。
「そろそろ帰るぞ」
「は、はい……!何処にですか……!?」
不意に音無から声をかけられる。
油断していたせいか何故か敬語になってしまった。
「寮だ。ほら、さっさと行くぞ」
「え……あ、ちょっと待てよ!」
さっさと荷物をまとめて教室を出ていく音無の後ろを、慌てて追いかける。
校舎を出て、そこから5分程歩いたところに大きな建物の前に到着する。
校舎程ではないといえ充分大きい。
「ここが寮だ」
音無が顎で建物を指す。
「寮っていうか…………軽いホテルだよな……これ……」
「そりゃあ男女共同だからな」
「だ、男女共同!?そんな寮が存在していいのか……!?」
「別に変じゃないだろ?」
驚く俺に対して、男女共同ということに何一つ不満を感じない音無。
なんか色々と常識の範疇を超えてるな……この高校…………。
「ほら、さっさと入るぞ」
大きなガラス性の扉を開き、中へと入る。
そこにはシャンデリアやら、高そうな絵やらが飾ってあるホールの光景が広がる。
「おお…………すげぇ……!」
感嘆の声が漏れる。
明らかに多額の金額をかけていることが分かる。
俺が寮の内装に魅了されていると、近くの休憩スペースのようなソファーから、一人の少女が立ち上がりこちらへと走り寄ってくる。
見た目は…………あのチビ校長よりも背丈が低く、ツインテールが特徴の幼じy……じゃなくて少女。
「奏ちゃ~ん!遅かったね~。待ってたよ…………ってあれ?その人は?」
あどけなく首を傾げながら俺に視線を向ける。
たぶん音無の友人なのだろうか?下の名前で読んでるから結構親しそうだ。
「コイツは転校生で私のクラスメイトだ」
「ど、どうも……クラスメイトの青井 桜音っす」
その途端、彼女は目を大きく見開き、何かに驚いているようだった。
「て、転校生って……この高校始まって以来だよ!?しかも普通科に入ったの!?」
「え……そ、そうなの?」
「そうだよ!しかも普通科に転入って……なかなか無いよ!?」
え?普通科ってそんなにすごいところなの?
名前からして至った特徴はない気がするんだけど……。
「じゃあ莉央、後は任せた。私は夕飯まで一眠りしてくる」
「え?あ、うん!分かったよ~」
そう言うと音無は、そそくさとその場から立ち去り、ホールには俺と幼じy……少女の二人っきりになってしまった。
音無が階段を上がり、姿が見えなくなったところで俺に向き直る。
「ようこそ青井くん!私はここの寮長を務めている野々咲 莉央だよ!今後ともよろしくねっ」
そう言うと俺の手を握り、激しく上下に振る。
見た目よりも結構力が強い……。
野々咲は高校生なんだよな?……なんて無粋な質問はしない。
ここにいる以上は野々咲も学生なんだ。
あのチビ校長のインパクトが強かったせいか、あんまり驚かない。
「さてさて、青井くんはここに来てから間もないから色々と先輩の私が教えてあげる!」
「え……?なんて?」
「だからー、先輩の私が……」
「アンタ先輩なの!?」
「ふぇ!?ひ、酷いよ青井くん!」
俺の言葉のせいか、少し涙目になって肩を落としてしまう。
いやー………それは考えてなかったぁ……。
「え、えっと……スミマセン!野々咲先輩!」
慌てて謝罪の言葉をかける。
「うぅ……やっぱりこんな性格じゃ先輩に見られないかなぁ…………」
とほほ……と悲壮感漂う彼女には申し訳ないが、性格云々の問題じゃないだろってツッコミたい。
というか、高校生どころか中学生にも見えないぞ……。
「よし……!皆にバカにされないようもっと威勢よく人に接しよう!行くよ!後輩くん!」
どうやら、胸を張って俺をリードしているつもりらしい。
威勢がいいどころか、逆に可愛く見えるから困る。
「は、はい!了解です野々咲先輩殿!」
とりあえずこの場はノってやることにしよう。
俺の返事を聞いてづかづかと歩き出す野々咲先輩の後に付いていく。
北側に向かって進むと、不意に突き当たりの廊下に地面を四角切り取った穴が現れる。
よく目を凝らすとかなり急な角度で階段がついているのが確認できる。
その階段を野々咲先輩は、黙って降り始めた。
(地下にでも続いているのか?)
階段に足をかけながら、そんなことを考えた。
カツンカツンと、階段を下りる音だけがこだまする。
沈黙が怖くなった俺は、野々咲先輩の背中に質問を投げ掛ける。
「あの……何処に向かっているんですか?」
「んー?保健室だよ~」
明らかにこの雰囲気は保健室じゃない……しかし、彼女が嘘をついているとも思えない……。
だったらどうしてこんな薄気味悪い地下に保健室なんかを……?
階段を降りきると、背筋が凍るような寒気に襲われた。
それは決して温度が下がったからだけではない。
どういう意味が込められているのか、禍々(まがまが)しい悪魔の顔で装飾された扉が目の前にあった。
野々咲先輩が重々しく閉ざされた扉を押し開けると、病院でよく嗅いだことのあるアルコール臭が鼻孔を突く。
中へ入ってみると薄暗いが意外に広い。
床は一面紫色のタイルに覆われており、保健室というよりかは――霊安室のイメージに近い。
本当に死体とか無いよな?
よく辺りを観察して見れば衣服や飲料水の容器、フランス語かなにかでびっしり覆われたホワイトボードなどがある。
全体的にどこか生活臭を漂わせていた。
「あれー?学く~ん、どこ~?」
部屋に入るやいなや、学という名前を呼びながらそこらを歩き出す野々咲先輩。
たどり着いたのはいいが肝心なこの空間の主がどこにも見当たらない。
俺も野々咲先輩にならいそこら中に目を配る。が、やっぱりどこにもいない……。
留守なのだろうか?
そう考えた刹那――デジャヴと同時に背後に何かの気配を感じた俺はすぐさま後ろを振り向いた。
そこにはぽっかりと黒く穴の空いた眼球のない顔がこちらを覗いていた。
「ギャアアアアアアアアア!!」
遠のきかけた意識を無理矢理戻し、その顔と一気にバックステップで距離を取る。
「な、なになに!?どうしたの青井くん!?」
自分でも驚くスピードで野々咲先輩の背後に隠れながら、顔のあった場所に震えながら指を指す。
カッコ悪いと思うだろうが一度体験してみれば分かるから。
その顔はゆらゆらと未だに揺れていて、眼球のない顔でこちらを見つめている。
「もう……学くん、からかっちゃダメでしょ!」
「え?ど、どういう……」
俺が野々咲先輩に訪ねようとしたとき急に室内が明るくなる。
天井を見てみると照明が一気に点いたことが分かる。
思い出したように慌てて先程の顔の方へ視線を向けると、そこには夕黄泉高校の制服の上から長い白衣を着た青年が立っていた。
よく見てみると俺にトラウマ級の恐怖を与えた顔は作り物で、それを手にはめているだけ。
暗闇のなかでライトをその顔に照らしていたから、青年の姿に気づけなかったのか……。
それにしても恐ろしかった……。
「いや~校長の言う通りだね。期待以上のリアクションだったよ」
ヘラヘラと俺の返事を様子を笑っている青年は、校長というワードを口にした。全てはアイツの差し金か……。
「二人とも僕の部屋にようこそ!」
「歓迎するよ」と言って俺と握手を無理矢理交わしてくる。
ボサボサの目元が隠れるまで伸びた髪に、全然寝てないことが分かるクマができている。
だけどよく見てみると綺麗なルックスをしていると思う。
「うん。予想よりも8900秒来るのが速いね~」
青年は腕時計に目を落とし近くの椅子に腰掛ける。
「初めまして転入生。僕は戸塚 学。この保健室の主だよん。君とは同級生だから好きに読んでくれて構わないよ」
自分も自己紹介をしようと口を開く。
「俺は青井 桜音……よろしく」
「うんっ。よろしくね。立ってるのも何だし適当に座ってよ」
ニッコリと少し気味の悪い笑顔を作ると、適当な場所に座るよう進めてくる。
先輩は手術台のようなところに座り、俺は適当に椅子を持ってきて戸塚と向き合うように座る。
「さてと……ここに来た理由は聞かなくても分かるよ。『才能』に関してでしょ?」
「うん、そうだよ~」
「確かに調べることが出来るのは僕の『才能』だけだしね~」
「学くんはその『才能』のお陰で保健室を私物化出来てるんだけどね」
二人が俺を置いて会話をし始める。
「二人とも、一体何を話して……」
「細かい話は後!早速始めるよ~」
戸塚は俺の言いたい言葉を待たずにパンパンと手を叩き椅子から立ち上がる。
そのまま自分の顔を俺に近づけてきた。
「ま、待てよ!?一体なにする気だよ!?」
「ほらほら、大人しくしてて……」
俺の顔を掴み半ば無理矢理に戸塚の額と俺の額を接触させられる。
そこから数分その状態が続く。
俺は目を閉じながら今の戸塚の行動をおかしく思いながらも、早く離れろと念じる。
しばらくすると戸塚は、額を俺から離して驚いたように唸りだす。
「学くん、どうだった?」
「まさかねぇ……本当に居たなんて……」
「お、おいおいおい……頼むから何をしていたのか説明をしてくれ……!意味が分からなすぎて怖いわ!」
勝手に二人で会話をするもんだから意味がわからずどぎまぎする他ない。
暫く唸っていた戸塚が俺に向き直り真剣な眼差しで俺を見つめてきた。
先程からの戸塚の軽い印象とは対照的に、何か重大なことがあるのではと息を飲む。
「いいかい青井君、人間は誰かれ構わず必ず何かの才能を持っているんだよ。学問に秀でる者、スポーツに秀でる者……そして、全てに置いて秀でる者。その優秀な才能を持った人間が集められたのがここ――夕黄泉高校なんだよ」
口を開いたと思ったら急に難しいことをベラベラと…………。
「その才能がどうしたんだよ?」
「単刀直入に言うよ。君はね――――この世に二人しか存在しない、無才能だ」
………………はい?
「だから……その、気を落とさないで欲しいんだよ…………才能がなくても君は……」
「だからなんだよ?」
「………………へ?」
俺が発した言葉に驚愕の表情を浮かべる戸塚。
「そんなことはどうでも良いんだよ。才能とか優れてるとか、俺には関係ない。別に才能が無いからって死ぬわけじゃあるまいし」
そもそも才能ってなんだ?その人間が持っている高い能力のことだろ?
だったらおれは才能なんていらないし欲しいとも思わない。
「…………君、面白いよ……」
「ん?何か言ったか?」
「いいや……何でもないよ。さてさて、君らの用も済んだようだしさっさと夕飯を食べてきなよ」
戸塚はそれだけ言うと奥の方へと姿を消した。
たぶん……寝床?に向かったのだと思う。
「あ、おい!戸塚!?野々咲先輩、アイツ一体どうし……野々咲先輩?」
野々咲先輩の方へ振り返ると何かを考え込んでいるかのように俯いている。
野々咲先輩に近付くと寝息が聞こえてくる……。
嘘だろ……この人さっきの短い会話の間に寝やがった…………!
「起こすのは何だか申し訳ないし…………このままここに置いていくってのもなぁ……」
悩んだ挙げ句、彼女をおぶりながら階段を上がっていったことは言うまでもない。
どうでしたか?文章として成り立っていたか不安です…………。
誤字、脱字等がありましたら教えていただけるとありがたいです!後、ここはこうした方がいいなどのアドバイスもありがたいです!