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青井 桜音は無才能  作者: わんおくおっく
1/3

転校

初めて投稿させていただきました。

どうか立ち読み感覚で見ていって下さい!

俺、青井あおい 桜音おとねは息を飲んだ。


俺は田舎町の小さな高校に通っていた。

だけど父親の転勤のせいで、俺は都会にある高校に転校することになった。


小中高と一緒だった仲の良い幼馴染みともお別れ。


彼らは悲しんでくれたが、彼ら以上に俺が悲しんでいたと思う。

揺られる新幹線の中で、アルバムを何時間も眺めていた。


だけどいつまでも悲しんでる訳にもいかない。


転校先でナメられぬよう気合いを入れ直して、今日親父と転校先の高校へと向かったのはいいが……。



転校先が超名門校なんて聞いてない。



そんな経緯を思い出しながら再度息を飲む。



「おい親父……何ここ?」

「何って……これからお前の通う高校だけど?」

「バカか!?ここって夕黄泉高校ゆうよみこうこうだろ!?」


夕黄泉高校――小中高一貫の学校で、超エリートが通う名門校。

たぶん中等部の奴等の方が、俺なんかより遥かに優秀だろう。


「どうやらこの高校がお前の転入手続きを間違ったらしい。それで謝罪の意を込めて、学費、生活費を全額負担してくれるらしい」


どうして俺なんかがこの学校に?という顔をしていたのか、親父が説明する。


全額負担って…………。


「ほら、これがこの高校のパンフレット」


親父からパンフレットを受け取りざっと目をとおしてみる。


大雑把に言うと、ここには多種多様な学科が存在するらしく、アイドル科というのも存在する。


んで、分かった事が一つある。


「俺が入れそうなクラスがない……!」


なんだよ演劇科って!?なんだよ軍隊科って!?この高校結構無茶苦茶だなおい!


「なあ親父、本当にこの高校に入らなきゃダメ…………って親父?」


パンフレットに目を通していると、気付かぬ間に車と親父の姿がない。

周囲を見渡してみると、近くの電柱に何か書き置きのような物が張らされていた。


『後は校長室へ行って挨拶してきなさい』


「 に、逃げやがったあのクソジジイ……!」


いくら叫んでも俺の声は親父に届くはずもなく、ただただ悲痛な叫びが町に響いていた。





▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼





校長室と書かれたプレートがぶら下がる扉の前で、ドアノブに手をかけては離し、手をかけては離す。

この行動を先程から、30回ほどくりかえしていると思う。


ヤバイ……メチャクチャ緊張する。

たぶん陸上競技の選手も、スタートする寸前はこんな気持ちなんだろう。


「すぅ……はぁー…………よし!」


こんなところでくよくよしててもしょうがないじゃないか!


遂に俺は決心して扉を開く……が、室内には誰もいない。

おかしい……俺が来るということは知らされているって親父が言ってたんだが。


もしかして、俺が来るのが遅くて探しに行ったとか?

確かにこの高校はやたらと広い。

校長室を見つけるのに少し時間がかかった……。


自分の腕時計と校長室の時計を交互に見る。


この高校に着いてから小一時間経ってる……。

――最悪だ、こりゃあしびれを切らして探しに行くわけだ。


これは校長を探しに行った方が良いのでは?等と考えたが、それは得策ではない。

こんなに広い校舎だ――入れ違いになるのがオチだ。


ここは大人しく待つとしよう。


(…………待つと言っても勝手に入って、勝手にくつろいでちゃマズイよなぁ)


高級そうな椅子を横目に、座るのに抵抗感があるため辺りをうろちょろし始める。


立て掛けてあるあの写真の人達はたぶん、この高校の歴代の校長なのかな?

一代目から十代目まである…………て、え?


歴代校長の写真を一つ一つ眺めていると、妙な違和感に気づく。

一人一人50代は過ぎてるであろう老人なのだが、10代目の校長だけ少女の写真だった。


(どうして……?どうして年端もいかないような少女が?)


あまり考えても自分には到底理解できなさそうなので、校長の机に目を映す。

と、そこには何の飾りっ気もない箱がぽつんと置かれていた。その隣には何か書かれている紙も置かれている。


その紙には『開けるな』とだけ書かれていた。


………………そう言われると開けたくなるんだよなぁ……


「ええい!開けてしまえ!」


思い切って箱を開ける……が、中身には何も入っていなかった。

あ、あれ?何も入って…………


「ようこそ我が校へ!!」


パンパンと盛大なクラッカーの音が鳴った。


「うわぁぁぁぁぁぁぁ!?」


不意をつくように鳴った音に驚き、情けなく悲鳴を上げながら尻餅をついた。


「アハハハハッ!期待以上のリアクションだよ転入生クン!」


そこにはクラッカーを手にもつ、写真の少女が俺を楽しそうに見下しながら笑っていた。


「あ、アンタ何者だよっ!?」

「校長にアンタは失礼だよ~?転入生クン?」


おいおい、校長とか言ってるぞコイツ……。


「あれあれ?もしかして疑ってる?こう見えても私は25なんですよ~!」

「嘘こけぇ!どう見ても12歳前後だろうが!」


なんだこの状況……名門校の校長室で、自称校長の少女と会話してるとか最近のラブコメでも見ないぞ…………。


「それで、青井 桜音クン。私は君に謝らないといけないことがあるんだよ」


それって……編入先を間違ってしまった事だよな?


「俺はぶっちゃけ、学費と生活費を負担してくれるなら文句は……」

「えーと……その事なんだけど…………ちょっと問題があって……」


おいおい――まさか負担できなくなったとか言わないよな?

俺は特待生とくたいせいでも何でもないんだから、全額こちら側が負担するってなるとまた転校しないといけなくなるぞ。


まあ……転校した方が楽なんだろうが……。


「あ!安心して!ちゃんと学費と生活費はこちら側が負担するから!」

「それじゃあ、一体何が問題なんだ?」

「君の編入するクラスの事なんだけどね――」


クラス?あぁ……確かこの高校にはいくつもの学科が存在するんだっけな。

もしかすると、その中でも一際過酷なクラスに編入させられるとか?


「我が校で君が生活するにあたって必要なお金は全て補償するよ。だけどその条件に、君には――普通科に入ってもらいます」

「普通科……?聞くところ一番俺が馴染めそうな響きだけど…………」

「響きだけだよ。後は……まあここに行けば分かるよ」


この高校の地図を渡す。

たぶんこの赤い目印が付いているところが普通科の教室なんだろう。


ここに行ってどんなところか自分の目で確かめて来いって意味か……。


まあ行くしかないよな。


「分かった……それじゃあ、俺はこれで」


校長?に頭を下げ、部屋から出ようとすると急に呼び止められる。


「私は天馬てんま 摩耶まや。改めてよろしく、青井 桜音クン!」

「よろしくお願いします。天馬校長」


ただ――それだけ言葉を残して、普通科の教室へと向かった。












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