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氷器  作者: 鷹野 砦
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問題編

 その遺体は非常に無残な状態を呈していた。顔の目鼻が判別できず、胸も見るに堪えない状態で、鑑識も顔をしかめていた。

 昨日に帰った社員が、今日の昼過ぎに、会社の資料を持って帰って家で仕事をしようとしたとき、工場に電気がついているのを目撃したのだ。社員があわてて駆けつけてみると、そこには無残な社長の遺体が転がっていたらしい。社員が三名しかいない零細企業を支えていた、立派な社長だったそうだ。

 死因は解剖しないと分からないが、これはどう見ても体中に残った傷だろう。上半身が血まみれになっている。発見した社員もよく社長だとわかったものだ。何らかの作業をしていたのだろうか、近くには発泡スチロールの箱が二、三個転がっているが、中身はない。

 私が犯行現場を観察していた時、不意に後ろから

 「よお、元気にしているか?」

 と、誰かが呼び掛けてきた。振り返ると、そこには後輩が立っていた。後輩は上から目線な発言が原因で、今では一応刑事のくせに、同僚に使われまくっているという可哀そうな立場に置かれている。そのくせ、ここら一帯の殺人事件においての検挙率は二位。偉そうなのに刑事としての素質は十分すぎるくらいある、要するに生意気で嫌な野郎なのだ。

 「おまえは私の後輩だ。口のきき方に気をつけないと、下っ端扱いから逃れられないぞ。」

 「でも、こんな事件があったら誰だって惹きつけられますよ。」

 そう、今回の殺人事件では、おそらく柔らかい散弾を使って銃殺したものだと思われていたのだが、どうしても弾が見つからない。まるで、犯人が氷の銃弾でも撃って殺害したかの様だったからだ。しかし、氷の散弾をわざわざ用意したところで、犯人には何の得もない。

 私が考え込んでいると、後輩刑事が

 「なあ、ここに何か、大きな機械を置いていたような跡があるけど。」

 と、聞いてきた。最近納入された機械に欠陥が見つかったため、また昨日に運び出されたものらしいが、

 「そんなの知らん。捜査には関係のないことだ。そんなに気になるなら、自分で調べろよ。どうせ暇だからこんなところまで来たんだろう。」

 と言っておいた。捜査には関係ないことだ。それよりもこいつを早く追っ払いたい。

 「いやいや、だから惹きつけられて来たって言っているでしょう。それにしても、さすが自動車修理工場だな~。このタイヤなんて、ピッカピカになってるじゃないですか。いや、すごいすごい。」

 近くの器具に固定されてあったタイヤを見て、なぜか絶賛している。殺人が行われた現場で、そんなことを言う神経が分からない。

 私は後輩刑事をなんとか追っ払って、捜査を続けた。


 次の日、後輩刑事が偉そうな口調で昨日の現場に来るように言ってきた。私は慌てて奴のところまで飛んで行った。こうやって偉そうに人を呼び出すとき、大抵は奴によって事件が解決してしまっている。人間性はともかくとして、頭はいい奴だ。

 奴は工場の中で暇そうにしていた。

 「おい、私を呼び出しておいて、一体何のつもりだ。」

 分かってはいるが、一応聞いてみた。

 「先輩、この事件は殺人事件じゃありませんよ。」

 はぁ!?

 「どう考えたって殺人だろうが!」

 「いいえ、違います。」

 おもむろに煙草を出して、火をつけた。

 「これは殺人事件ではありません。事故です。」

 急に丁寧な口調になったのは、推理を語る前兆だ。

 「この事件は、社員三人と社長が起こした、単なる事故だったんです。」

 解答編はしばらくしたら掲載する予定です。生意気な後輩刑事は「事故だ」と言っていましたが、なぜ事故だと分かったのか?ヒントはほとんど本文中に入れておりますので、もしも真相がつかめたら、感想で解答してみてください。可能な限り返信します。

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