ホーンラビット
さて、今僕は包丁片手に林の中を歩いていて、後ろからはアーサーが付いてきている。
僕は魔獣を一匹どうにかして仕留めなければならないのだ。
アーサーからは止めたほうがいいと言われたが、僕がどうしても行くというと心配して付いてきた。
弱い魔獣しか出ないらしいので大丈夫だと思うのだが、アーサーはどうやら心配性らしい。
この林にはホーンラビットという比較的小さめの魔獣が生息しており、今のところ3回遭遇して3回とも逃げられている。
ホーンラビットは額に小さな角を持つ体長40㎝のうさぎの魔獣で、地球のうさぎよりやや大きいが、魔獣としてはかなり小さい。
攻撃力は低く、命を落とすことはほとんど無い。
その代りとても素早いため仕留めるのが難しい。
逃げに徹すれば上級冒険者でも仕留められないぐらい素早いのだが、魔獣の性で人間を見ると襲いかかってしまうのだ。
だけど、一度突撃するとその後はすぐに逃げてしまうので、仕留めるチャンスは一度きりしかない。
最初、ホーンラビットに遭遇したとき、僕はなんの反応もできず胸に突撃を食らいあっという間に逃げられた。
命を落とすことは無いと聞いていたのだがかなり痛い。
小さいと言ってもやはり魔獣、しばらく呼吸が止まって立ち上がることができなった。
防刃ベストを着ていなかったらダメージはもっと大きかったかもしれない。
「おいおい、大丈夫か? もろに食らってしまったな」
「大丈夫です、ケガはないので」
これくらいでへこたれてはいられない。
神様クエストを最後まですべてクリアしないと男には戻れないのだから。
次に遭遇したときは気配察知で先に見つけ回避を試みたが回避できずに食らってしまった。ちょ! 早すぎ!
衝撃は逸らすことができたみたいでさっきほどのダメージはない。
しかし、攻撃を当てれそうに無い。
3回目は避けずに攻撃を当てることに集中する。
男は根性、いや、女は度胸だ!
ホーンラビットの突撃に合わせて包丁をふるう。
タイミングはばっちし。しかし、簡単によけられ足に攻撃を食らう。
滅茶苦茶痛い、椅子にすねをぶつけてしまったときのような痛みでのたうち回る。
「くそ~きつい。初級者向けなんじゃなかったの?」
「まあ、命の危険が無いって意味で初級者向けなんだと思うよ。
初心者じゃあ仕留めるのは難しいかもしれない。
俺でも5回に1回ぐらいしか仕留られないからな」
「アーサーは仕留めたことあるんだ」
「まあな、俺は13の頃から6年間冒険者やってるんだ、そこそこ腕は立つさ」
「え! ちょっとまって。それだとアーサーは今19歳ってことになるよ。どっか数字間違ってない?」
「間違ってねーよ!正真正銘の19歳だ」
「まじで! まだ10代なの? その顔で。ありえねー」
「ぐ…よく言われるけど、そんなにズバッと言われるとさすがにきつい。
というか口調変わってないか?」
(やべ、驚いて口調が雑になってた)
「そんなことより次に行きましょう。お昼までには戻らなくてはならないのですから」
「あからさまに切り替えられた…」
その後、5回ほど遭遇したが、うまくいかなかった。
少しづつコツを掴んできているが、時間がない。
策をねることにしよう。
……
いい策を思いついたが、こいつに見られると秘密が一つばれてしまう。
しかし、アーサーを先に返してしまうと、僕は帰り道がわからない。それに、素直にいうことを聞いてくれなさそうだし。
どうしよっかな~
作中に出てくる防犯グッズについて、作者は素人でして、性能を正確に把握しているわけではありません。
たぶんこんなもんかなと適当に書いてますのでご注意ください。