神様おまかせパック
最初に神様が現れてから一週間後、もう一度あの灰色の空間にやって来た。
ここでスキルを選んでから異世界に旅立つことになる。
覚悟が決まった今は少し楽しみになってきている。
「それじゃあスキル選びを始めるけど、最初に異世界では誰もが使えるスキルが一つあるのでその説明をするね。『ステータス』って唱えてみて」
言われた通りに唱えてみた。
「ステータス」
すると、目の前に半透明のボードが現れた。
「これは自分の基本的な情報を見ることができるスキルだ。基本的には他人はみることができない。本人の同意があれば真道具を使って他人に見せることはできるよ。あと、基本的には自分で勝手に書き換えたりすることはできない。」
なんかゲームの中の世界みたいだな
「ゲームと違ってレベルやHPといった数値は存在しないよ。代わりにスキルにレベルがつくんだ。レベルを上げる方法は様々だけど普通はたくさん使用することであげられるよ。
ついでにスキルについての補足説明をするね。スキルは一人につきいくらでも持つことができる。上限は無いよ。だけど、複数のスキルを持っている人はあまり多くないよ。一般的には一つのみの人がほとんどだ。スキルを一生持てない人も結構いるよ。3つ以上持つ人はかなり重宝されるね。あと、スキルによっては自動で働くものや条件が必要なものもあるけど、それはステータスで見ることができるから自分で確認してね。
それじゃあ、まずステータスボードを確認してみて」
目の前のボードを見てみると、上から順に名前、年齢、種族そして残りのスキルポイントが表示されており、8ポイントあることがわかった。
その下にはボーナスと書かれた文字と取得可能なスキルがずらりと表示されていた。
「タップすれば説明文が出るから時間をかけて選ぶといいよ」
「このボーナスっていうのは何だ?」
「見てのお楽しみだよ」
神様はそういってニヤリと笑った。
ボーナスって書いてあるけど嫌な予感しかしない。
とりあえずタップしてみる。
【神様おまかせパック】
ポイント:100ポイント増加
容姿、種族、性別、年齢を神様にまかせてみよう!
後悔はさせないからね!
何じゃこら!所持ポイントが8ポイントしかないのに100ポイント増加ってどういうことだ。ものすごく警戒心を刺激されるな。容姿はともかく性別と年齢を変えられるのはちょっと怖い。とりあえず保留にしよう。
ボーナスは他にもあるようだ
【奴隷スタート】
ポイント:10ポイント増加
特殊な首輪で絶対服従。一生解放されない危険もあるからおすすめできないね。
奴隷も存在するんだなぁ。当然却下だ。
【孤児スタート】
ポイント:1ポイント増加
いかがわしい教会で育てられるんだ。成長したら売られるか闇のお仕事決定だぁ。
【ゴブリンスタート】
ポイント:5ポイント増加
雑魚だね。人扱いされないよ、魔物だから。
【魔道具化スタート】
ポイント:5ポイント増加
もはや生き物じゃないね。才能ある人に拾われないと意志疎通すら不可能さ。
これはひどい、最悪のスタートを切る割に増えるポイントが少なすぎる。
もはや他は【神様おまかせパック】を取らせるための布石としか考えられない。
なんか、嫌な予感が強くなってきたんだけど。
気を取り直して取得可能なスキルを見てみよう。
【剣術】
消費ポイント:10
ん?
【槍術】
消費ポイント:10
【アイテムボックス】
消費ポイント:20
うんんん?
試しに剣術をタップしてみるとこのスキルの説明と『剣術を取得しますか』の文字が表示される。『剣術を取得しますか』をタップするとスキルポイントが足りませんと表示される。
「おい!神様どういうことだ」
「はい、どうしましたか?」
「なんで初期ポイントで取得できるスキルが一つも無いんだよ!」
「ありますよー。もっと下のほうを見てください。ほらこれ」
【ラッキーすけべ】
消費ポイント:8
Hなイベントに出くわす確率が上昇
「いるか!ボケ!」
他に8ポイントで取得可能なスキルを見てみたが、クズスキルしか無かった。
「困ってるようですね~。でしたらこれなんてどうです?
【神様おまかせパック】、100ポイントも増えますよ」
「もう見たよ!それ取らないと碌なスキル取れないし、とんだ自作自演じゃねーか。
何たくらんでるんだ」
「たくらんでなんかいないよ。私好みの容姿にしたいだけだから心配ないよ。神様なんだから信用しても大丈夫」
何が大丈夫だ!信用できる要素がこれっぽっちも無い。
正直、この神様にキャラクターメイクをされるのはすごく嫌だ。しかし、
「まあだけど【神様おまかせパック】をとらなくても問題ないよ。向うじゃスキル持ってない人も多いから」
その代りかなりハードになりそうだ。
「ああ、それと君に箱詰めしてもらった荷物だけど、【アイテムボックス】を取得していないと取り出すことができないからね。」
なんだと!
「どうする?【神様おまかせパック】はいりませんか?」
くそ!初めから選択肢は無かったってことか。
せめて性別を変えられないよう祈るしかないな
「あ、そういえば君の名前おしえてよ?」
「知らなかったのかよ!僕は森岡智樹だけど」
「よし!じゃあ君の名前はトモミにしよう」
「え!なんで名前変えられてるの?トモミって女の名前じゃ」
「うふふ」
わかっていたことだがこの神様はものすごく理不尽だった。
主人公のキャラが定まらない。
口調とかは後で訂正するかも