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置いてけぼり

 クエスト№6

 そろそろ剣術レベルを上げるべき(目標レベル5)

 報酬:魔道書の写し1枚(a-2)


 例の神様クエストだが、僕のモチベーションは著しく低い。めんどくさがり屋の僕は今、剣術レベルを上げる必要性を感じていないし、魔道書への興味も無くなってしまった。

 しかし、クエストは進めないと次のクエストが表示されないのでいつかはクリアしなくてはならない。

 めんどくさいことは後回しにするのがモットーの僕は明日からボチボチ始めればいいや。と、何千回も繰り返してきた思考パターンを今日も繰り返し、明日も繰り返すのだ。

 そのうち執事さんとかに教えてもらうことにしよう。


 現在僕たちはメルギルの町へ歩いて帰っている途中だ。飽きっぽいエアリーはもうすでに次に行く場所について話している。次はもう少し遠いところに行くらしい。しかも、僕が行くことも決定していた。

 相変わらず強引である。エアリーと組めば楽してガッポガッポ稼げるので僕にとって悪い話ではない。ただ、基本的にだらだらした性格の僕が超活動的なエアリーについていくのは大変になるかもしれない。しばらくは大丈夫だろうが、そのうち部屋でゴロゴロしたいのにできない状況になるかもしれない。


 逃げるなら今だ! 当面の金もできたのだから、だらだらしようぜ!

 と心の悪魔がささやく。


 地球での僕ならそのまま面倒なことから逃げたかもしれない。だけど、村人たちからの感謝や魔獣討伐の達成感のせいかもしれない。ちょっとぐらいは頑張れるかもしれない、と根拠はないのに思えてきた。

 せっかく異世界に来たのだからガンガンお金を稼いで面白いことをどんどん見つけていこう。

 僕にしては珍しく前向きに決断した。




 今回僕らが狩りを行った森とメルギルの町とを結ぶ道は簡単な整備しかされていない簡素な道である。森の周囲は小さな村が点在している程度なので、通る人は少なく、半分以上は冒険者である。盗賊にとってはうま味の少ない場所であるため、盗賊の類はめったに見ることはないらしい。魔獣に注意が必要なぐらいである。

 その治安のいい場所で3人の男女に道を塞がれた。

 どうやら待ち伏せていたらしい。しかも、エアリーが来るのを待っていたようだ。


「ようやく見つけたわ! エアリー!」

「もう飽きたとか、ふざけたこといいやがって! 絶対に許さないぞ!」

「落ち着けボーブ、もしかしたら気の迷いかもしれないじゃないか」

「そうよ! 私たちあんなにうまくやっていたじゃない。突然辞めるだなんてきっと何か深い事情があるのよ。ねえ、エアリー、どうして急に……」

「どんな理由があろうと俺たちの稼業はそう簡単にやめましたとはできねえぞ! なぁエアリー、今戻ってくるなら許してやってもいいんだぞ」

「そうだエアリー! もう一度俺たちと組んで暴れようぜ!」


 エアリーの知り合いかな? 話からすると以前エアリーと組んでいたみたいだけど、冒険者…ではなさそうだな。

 ふと、エアリーのほうを見てみると、

 ああ、やばい。完全にこいつら誰だ? って顔してる。


「何の話か分からないけど、なんでわたくしがあなたたちと組まなくてはならないの?」

「な、なぜって… 俺たちは怪盗赤エビ、いくつものお宝を盗み出した最高のチームじゃないか!」

「あら、あなたコソ泥の類なの? わたくしこそこそと盗みをするような輩、興味ありませんわ」

「な、なんだとこのやろう! お前だって俺たちと一緒に仕事したじゃねえか!」

「まさか、わたくしがそんなこそこそと卑怯なことするはずがありませんわ」

「このアマァ! 好き放題いいやがって! もう許さねえ、徹底的に折檻してやる!」


 やばいな…

 あちらさん、だんだんヒートアップしてきたぞ。

 それに比べて、エアリーもう話すら聞いてないし……


「待ってくれボーブ、相手はまだ子供じゃないか」

「うるせえ! これ以上なめられてたまるか! おい!エアリー 許しを請うなら今ゲボォッ……」

「な! ボーブ! くそ、よくもゴハァ……」

「この! やってくれたグボォッ……」


 手ごろな大きさの石でノックダウンされる3人。

 まあ、道塞いでたからね、この3人。あいかわらずエアリーは容赦がない。


 しかし、エアリーが絡まれるのを見るのは2回目だ。恨みを買いやすい性格なのだろうか。

 いいや、どうせエアリーに相手にされず逆恨みしているのだろう。みみっちいやつらだ。


 その後、何事もなく町へ帰った僕たちは素材を換金し、ギルドでゴブリン討伐の報酬を受け取った。

 報酬は1人4000カルフ(銀貨4枚)にもなった。また今度、どんなものが買えるのか見て周りたいな。今日は疲れたので明日以降になるけど。

 今日も誘われたので、エアリーの屋敷に泊まることになった。歩き疲れたので、ふかふかの布団が気持ちいい。


 翌日、僕はお昼ごろまでだらだらと寝てしまった。寝すぎてちょっと体が痛い。

 正直、せっかちなエアリーにもっと早く起こされると思っていたのだが、もしかしたらエアリーたちも疲れていたのかも。

 部屋から出るとメイドさんが軽く食べれるものを用意してくれた。お風呂も使っていいと言われたので遠慮なく使わせてもらった。

 それにしても、こんなにゆっくりしててもいいのかな。エアリーもさすがに起きてるだろうし……


 メイドさんに聞いてみると、なんとエアリーはとっくに屋敷を出発していた。

 しかも、目的地はここから馬車で1月はかかるような遠方だった。

 どういうこと? もしかして置いて行かれた?


「トモミ様、執事のアンディーから手紙を預かっております」

 そして僕はメイドさんから手紙を手渡された。なんだろう、すごく嫌な予感がする。


 手紙の内容は、丁寧な言葉で今回のエアリーの行動の経緯が書かれており、合間に何度も謝罪の言葉が添えられていた。

 まとめるとこんな内容だった。

 今朝、いつも通りの時間に起きたエアリーだったが、ちょうどタイミングよく雑貨を扱う行商の人が立ち寄ったらしい。行商の相手は執事さんが相手をしていたのだが、ふとエアリーの耳にある地方で次々と珍しい色の飛竜が生まれてくる現象が起きているという話が聞こえてきた。行商人から詳しい話を聞き出したエアリーは興奮しながら宣言した。

「アンディー、その白い飛竜をペットにするわよ!」

 その瞬間、僕を強引に連れていく予定だった狩場のことはエアリーの頭から消え去った。ついでに僕のことも忘れてしまったらしい。

 3分で準備を終わらせ、屋敷を飛び出したエアリーに執事さんは付いて行くのに精一杯で僕に声をかける余裕はなかったとのこと。

 この手紙は馬車の中で書き、早馬で送られてきたものらしい。


 この手紙の内容だが、なかなか飲み込めそうにない。理解するのにしばらく時間がかかった。

 なんでそうなる! とツッコみたいところだが本人はすでにいない。

 無茶苦茶な性格だと思っていたけど、まさかここまでとは……


 今までも、怪盗団を作ったり、カジノを経営したり、傭兵団を作ったりしてきたらしい。目についた人を強引に巻き込み、そして興味がなくなればその強引に連れてきた人のことも忘れてしまうらしい。なんていう暴君だ!


 町の手前で絡んできた3人はどうやらエアリーに唐突に興味を無くされ、忘れられた可哀そうな人たちだった。僕もそうなったけど……


 冒険者稼業にやる気が出始めたところにこの仕打ち、さすがにちょっと落ち込んできた。

 トップを狙えるとか、上級冒険者も夢じゃないぜ! とか考えていた自分がめちゃくちゃ恥ずかしい。


 くそ! エアリーめ、この恨み絶対に忘れないからな!

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