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もし、AIと恋に落ちたら。~記憶喪失の僕とAI少女の物語~  作者: オートくぅん


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第6話:First Morning

結局、一睡もできないまま朝を迎えてしまった 。 カーテンの隙間から差し込む朝日の眩しさに目を細めながら、僕はゆっくりと体を起こす 。数ヶ月の生活で体力は戻ってきたつもりだったが、慣れない環境での徹夜はやはり堪える。


今日からいよいよ学校生活が始まる 。初日は五教科の学力テストが予定されているはずだ 。空白の三年間を取り戻せているのか、自分でも少しだけ緊張していた。


隣のベッドに視線を向けると、そこにはまだ、昨夜からずっと僕の意識を独占していた少女が眠っていた 。 ふと見ると、彼女は意外にも寝相が悪いらしく、毛布が足元まで蹴飛ばされていた 。明け方の冷え込みで風邪でも引いたら大変だと思い、僕は自分の心臓の音を抑えながら、そっと彼女の肩まで毛布をかけ直してあげる 。


(……可愛いな)


心底そう思った 。昨日見せた隙のない雰囲気も綺麗だったけれど、こうして無防備に眠っている姿は、年相応の女の子に見える 。これ以上見つめているとまた変な緊張がぶり返しそうだったので、僕はそっとベッドを抜け出した 。


大理石の天板が光るキッチンに立ち、今日行われるテストに備えて、二人でしっかり力をつけられるようにと気合を入れて腕を振るう。 冷蔵庫の中には、昨日のうちに管理人が手配してくれたベーコンや卵、野菜が入っていた 。台所に立つと、やはり僕の指先は迷いなく動く 。厚切りのベーコンをじっくりと焼き、その脂で目玉焼きを作る 。トーストを焼き、レタスとトマトのサラダを添えた 。


準備が整いかけたその時、背後でシーツが擦れる音がした 。


「……ん……」


「あ、おはよう、宵待さん」


「……せな、さん……?」


むくりと起き上がった彼女の頭のてっぺんには、ぴょこんと一筋のアホ毛が立っていた 。いつもの凛とした雰囲気はどこへやら、焦点の合わない目でぼんやりとこちらを見ている 。彼女は意外と、朝に弱いのかもしれない。


あまりに似合いすぎていて、僕はまたしても「可愛い」という言葉を飲み込む 。


「宵待さん。コーンスープとオニオンスープ、どっちがいい?」


「……では、コーンスープをお願いします」


「了解。僕はオニオンスープにするね」


宵待さんは、自分より先に僕が起きていること、それからテーブルに並んだ朝食を見て、翡翠色の瞳を丸くして驚いていた 。


「すみません、私としたことが……昨日の今日で、瀬名さんお一人に準備までさせてしまうなんて」


「いいよ、僕が勝手にやったことだから。顔を洗っておいで」


彼女は「失礼します」と慌てて洗面所へ向かった 。鏡で自分のアホ毛や乱れた姿に気づいたのだろう、廊下から少しだけ、バタバタと焦るような気配が伝わってくる 。


やがて戻ってきた彼女は、顔を洗ってさっぱりとしていたけれど、頬が微かに赤らんでいた 。寝起きの乱れた姿を見られたことが、相当恥ずかしいのかもしれない。 僕はあえてそこには触れず、温かいスープをテーブルにセットした。


「さあ、冷めないうちに食べよう。――いただきます」


「……いただきます、瀬名さん」


二人で向き合って椅子に座り、穏やかな朝食の時間が過ぎる 。昨日の「失敗作」とは違う、僕の体が覚えていた味を、彼女は一口ごとに丁寧に噛み締めていた 。


「ごちそうさまでした。とても美味しかったです。……作っていただき、ありがとうございました」


「喜んでもらえたなら、作った甲斐があったかな」


その後、僕たちは手際よく学校の準備を済ませ、並んで寮を出た 。 今日から始まる、テストと新しい日常 。 昨日とは少しだけ違う、不思議な高揚感を胸に、僕たちは一歩を踏み出した。


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