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もし、AIと恋に落ちたら。~記憶喪失の僕とAI少女の物語~  作者: オートくぅん


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第19話:The Best Shot

黒峰さんと綾瀬さんの背中が夕暮れのモールに消えていくのを見送ると、賑やかだった空気が一転し、僕たちの間に心地よい静けさが降りてきた。


「……本当に、嵐のようなお二人でしたね」


宵待さんが小さく息をつく。


「はは、うん。でも、誘ってくれてよかったよ」


「ええ。親睦の対象が広がるのも、悪くない経験でした」


そう言って、彼女は僕の顔を真っ直ぐに見上げた。

オレンジ色に染まり始めた西日が、彼女の美しい銀髪を柔らかく照らしている。


「……瀬名さん。あの方たちもいなくなりましたし、改めて写真を撮りませんか? 氷室先生に提出するための、二人きりの『親睦』の証明を。せっかくですから、ここではない場所で」


「そうだね。どこかいい場所……あ、あそこはどう?」


僕が指差したのは、立体駐車場の屋上へと続く連絡通路の先にある、小さな展望デッキだった。

買い物客もほとんどいないその場所は、周囲の喧騒から切り離されたように静かだった。沈みゆく大きな夕日が、広大なモールの建物も、僕たちの姿も、すべてを鮮やかなオレンジ色に染め上げている。


「ここなら、人もいませんね。……では、撮りましょう」


宵待さんがスマホを構え、インカメラに切り替える。画面の中に、美容室で整えられた真新しい服の僕と、夕焼けのせいかいつもより少しだけ上気した顔の彼女が並んだ。


「……瀬名さん。もう少し、寄ってください。これでは『親睦』というより『対峙』です」


「え、あ、うん……これくらい?」


一歩、足を踏み出す。宵待さんの肩と、僕の肩が触れ合う。

彼女から微かに、シャンプーのような清潔で甘い香りが漂ってきた。


「……まだ、距離があります。私たちはパートナーなのですから」


彼女はそう言うと、自分からグイッと僕の腕を引き寄せた。

あまりの近さに、心臓の鼓動が耳元まで響いてくる。


「……行きますよ。三、二、一……」


カシャッ、という軽いシャッター音。

夕日に照らされた二人の姿が、デジタルデータとして固定される。そこには、緊張で少し強張った僕と、それを満足そうに見つめる彼女の姿が、最高の一枚として収まっていた。


「これで、氷室先生への提出課題はクリアですね」


宵待さんは画面を確認し、満足そうに頷いた。

その「最高の一枚」は、僕たちのスマホの中で、オレンジ色の光に包まれて輝いていた。

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