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オルゴールに眠る記憶(とき)

作者: 古紫 汐桜
掲載日:2025/12/01

ここは──思い出の館。

人から忘れ去られた記憶だけが、

そっとオルゴールの中で眠っている。


その無数の思い出を管理しているのは、一人の老女だった。


「ねぇ……あなた」

棚に並ぶオルゴールを眺めながら、老女は静かに呟く。

「私はあと何人の思い出を救って、悲しい過去を幸せに変えたら……あなたに会えるのかしら?」


胸元で揺れる鍵型のペンダント。

それは、彼女が“時の管理人”である証。


昔、人と神が恋をした。

禁忌を破ったその愛は引き裂かれ、

彼は“時の狭間”の塔に囚われた。

彼を救えるのは、時を司る管理人ただ一人。

そしてその役目を負わされたのが、彼女だった。


愛する人の未来を取り戻すため、

彼女は今日もまた、誰かの思い出を癒し続けている。


『チリン……チリン……』


風鈴の音が、店先でかすかに揺れた。

一年中吊るされたその風鈴は、まだ人間だった頃──

恋人が買ってくれた、大切な思い出。


呪いで老いた姿のまま、老女はゆっくり歩み出す。


「いらっしゃいませ。ようこそ、思い出の館へ」


カウンターには、今日訪れた客の“忘れられた記憶”が

小さなオルゴールとなって現れていた。


彼女はそっと手を添え、優しく微笑む。


「さぁ……あなたの忘れた思い出は、なぁに?」


こんばんは。

こちらの作品もお読み下さり、ありがとうございます。


今回のラジオ大賞には二作品を応募したいと思い、もう一つの物語として書き上げました。

私はやはりファンタジーを書くことを大切にしているので、どうしても一作は“ファンタジー”で挑みたい──そんな思いから生まれた作品です。


この物語が、どなたかの心にそっと触れ、静かな余韻を残せたなら嬉しく思います。


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