表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
64/64

64.エピローグ

 晴れ渡った空の下、周囲には花々が咲き乱れ木々が爽やかな風に揺れて音を鳴らしていた。

 リリクラック山脈の大地を踏みしめて、登るほどに近くなったように感じるその空を見上げながらイヴは鼻唄を歌って歩く。

 隣では手をつないでいるリオンがイヴを真似るように鼻を鳴らしていて、ジルは少し後ろをのんびりと歩いていた。

 3人とももう変装ははぎ取って、ありのままの姿をさらしていた。

 イヴとジルはともかく、リオンにはシシリアに着いたら新しいカツラか帽子が必要になるだろう。

 そんなことを考えながら、イヴは胸のうちから強い感情が湧き上がってくるのを感じていた。

 その感情のおかげか、標高の高い山でもイヴの身体はぽかぽかと暖かい。

 なんて幸福なことだろう。

 イヴは笑みをこらえられない。

「ああわたし、もう『正義の味方』にはなれないわ。だってこんなに大切なものがある」

 弟のように可愛いリオン。そして恋人のような家族のようなジル。

 その二人への愛のためなら、なんだって出来る気がした。

「最初にいっただろう、イヴ」

 歌い上げるようにイヴがつぶやいたその大きな独り言には、背後から返事が返ってきた。

 その声の主へと振り返る。

「なあに?」

 そこではジルが皮肉気な笑みを浮かべていた。

 それは仕方がないとも呆れたとも、そう言いたげな笑みだった。

 しかしそれはそれらすべての感情を許容し、受け入れた笑みだ。

 ジルは真っ直ぐとイヴを指さす。

「諸悪の根源は、いつもお前だ」

 その言葉にイヴは思わず破顔すると、リオンとつないでいた手を離した。

 おかしくて愉快で、笑いが抑えられない。

 きっとこれからもイヴ達の前には苦難が待ち受けている。

 事態は何も解決してはいないし、きっと完全に解決する日など来ないのだ。

 けれどイヴは愛する者を掴んだ。

 二人が居てくれれば、きっとどんなことだってなんとかしていけるだろう。

 解決出来ない問題も、乗り越えられない障害も、お互いに笑い合って支え合って、仕方がなかった、よく頑張ったと言い合える。

 辛いことも悲しいことも、後悔も抱えて笑って生きていけるだろう。

 そんな確信がイヴにはあった。

 ジルの言葉に応えるようにイヴはその場でくるりと回ってみせる。

 そのままスカートを摘まんで丁寧な礼をした。

 そこから上げた顔には、日向に咲く花のように美しい艶やかな笑顔が浮かんでいた。

長いお話でしたが読んでくださりありがとうございます。おもしろいなと思っていただけたらブックマーク、⭐︎の評価などをしていだだけると励みになります。

よろしければわたしの他の拙作もお楽しみいただければ幸いです。

下にリンクを貼っていますのでよければぜひ、読んでみてください。

よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
 本当の正義とは何か、ということは難しいけれども、愛する人たちの為に出来る限りのことはしたい。柵は多いけれど、保身と偏見に凝り固まった人間にはなりたくない。そういう誰もが持ったことのある思いを体現した…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ