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35.正しさ
「行くぞ」
ぼんやりとするイヴの手をジルが引く。リオンも心配げにイヴの背中を押して前へと歩ませた。
商人に頼んだことも、花の町でのことも、この村でのことも。
イヴが良かれと思ってやったことは何もかも、きっと何にもなりはしない。
だとしたらイヴのしたことはなんだったのだろう。
イヴの今まで信じてきたことは、一体なんだったのだろう。
正義とは一体なんなのだろう。
イヴはこれまで自分が正しいと信じる道を生きてきた。
しかし今は信じられない。
果たして自分の歩いてきた道は正しいのか。
傍らにいるリオンを見る。
リオンはイヴの視線に、不安そうに首を傾げた。
リオンはこの旅でいろいろなことを学んだように思う。
とても楽しそうにしている。おそらく教会にいるときよりも。
イヴはリオンのことを強く強く抱きしめた。
それすらも間違いだとは、イヴは思いたくなかった。