第9話 警察現着
盗難事件の翌日、警察が到着した。県警の岡本剛警部が率いる捜査三課である。ところで、どこかよく分からない島によく来れたなっと思ったのではないだろうか。唯や結城が謎の光によって飛ばされたこの島、実は2人の住んでいた県からほど近い島だったのだ。2人はスマホは持っていたが繋がらなかったため、あまり気にしていなかったのであった。
「県警捜査三課の岡本です。到着が遅くなって申し訳ない。これより捜査させて頂きます。」
「よろしくお願いします。現在、探偵見習いさんに調べてもらっています。現場はそのままにしてありますので、早急な解決に期待しています。」
館で事件が起こってから仕切っているメイドらしき館関係者の女性がそう警部に告げる。
「……探偵見習い?分かりました。早速ですが動かせていただきます。」
こうして岡本警部による捜査が始まった。
一方その頃、唯の調査では金目当てという推測がされていたのだが、犯人の目星や証拠などが全く見つからず、机上の空論と化していたのだった。
「失礼します。私、捜査三課の岡本と申します。探偵見習いというのはあなたでしょうか?……んん?」
「あ、お父さん!元気?お久~。」
あの、一応数日ぶり、下手したら一週間ぶり以上なのだがノリ軽いな!?こう突っ込みたくなった結城であった。
「唯じゃないか!行方不明になったからずっと探しまくっていたんだぞ、徒歩で!」
相変わらず脳筋な父親である。ああ、名字で気づいていたかもしれないが、岡本警部は唯の父親である。
「はいどーぞ。」
唯は、父親の心配そっちのけで集めた証拠や小麦粉と綿棒、テープで採取した指紋等を手渡した。
「やっぱり私は考えるのが苦手みたい。全く浮かばないや。集めるものはできるだけ集めておいたから渡すね。じゃあお父さん、あとよろしくね~。あ、ここでは天草林って偽名名乗ってるからそこんとこよろしくね~。」
要件を一方的に述べて全振りする唯に岡本警部は、
「立派になったなぁ。将来は鑑識係かなぁ。楽しみだなぁ。」
などとのんきに感動している。
「警部、捜査しますよ。」
と他の刑事に諭されて我に返るまで数分間、娘の成長に感動していたのであった。親バカ笑。こうしてやっと岡本警部の捜査が本格的に開始されたのであった。
盗まれたのは時計やピアス、簪等のアクセサリー類数十点。犯人の目的は不明。犯行時刻は深夜頃と推定されるが監視カメラはなく、目撃証言も無いため割り出すのは難しい。現在分かっているのは以上のことと各部屋に侵入し、ものを盗っていったのであろうというくらいである。
警部は首を傾げる。招待客の事情は聞き終わった。パーティーの案内が届き、豪華な食事会や島の館ということで記念に旅行に行こうという成り行きで訪れた人が多いようだ。主催者との面識はなく、またパーティーについても応募で当たったもの等ではないようで、富裕層に突如送られてきたものだということだ。
(パーティーに招待された客の所持品が1人1つずつ盗られている。目当ての物を持っている人を集めて盗みを試みたのだろうか。パーティーの主催者側の事情も聞いてみるか)
なかなか順調そうである。これは期待できそうだ。