第8話 盗難
朝日が昇る、日が当たる。今日も元気に動き出す。
「…うーん、あぁ~……。」
目を覚ますと目の前に唯の顔が。結城は震えあがった。驚いたからではない。いや驚いたのだが、震えるほどではなかった。なぜ震えたのか。それは鈍すぎる結城でも1分後には気づいた。服がなかったのだ。そして布団は視線の先ですやすや寝ている唯がくるまっていて取られていた。
「さむぅ!!!!」
結城が服を着て、ブルブル震えながら床に体育座りをしていると、唯が目覚めて話しかけてきた。
「よっす!おは~。」
「おは~じゃねぇよ!寒い寒い。」
「一体何してたんだよ。」
「起きたら布団は奪われてるし、服を着てなかったんだよぉ。」
唯はぎょっとした顔で汚物を見るような目で結城を見つめる。
「あんた、何もしてないでしょうね?もししてたら…。」
そう言いながらどこからともなく包丁を取り出し、結城の喉元に突きつける。
「わ、わ、私は何にも存じ上げません。全くの無実でありまするぅ!!」
いくら距離が近いとはいえ限度というものはあるようだ。寝るときには服を着ていたのに何処へいってしまったのか。唯のいたずらでもなさそうだし一体…と結城は考えを巡らせていたのだった。
朝ごはんを食べるため、大広間に下りていくと何やら騒々しい。何かあったのだろうか。
「だから、私の高級アクセサリーがどっかに消えてしまったのよ!」
「私の腕時計もそうよ。昨日つけていたのに。」
「落ち着いてください。もう一度探してみましょう。」
どうやら盗難事件のようだ。無くなったのは時計、アクセサリー等でかなりの数のようだ。
「皆さん、おはようございます。私は天草林と申します。実はとある探偵の下で経験を積んでおりまして、もしかしたらお力になれるかもしれないのですが。」
「本当ですか?よろしくお願いします。警察には通報してあるのですが、到着が遅れるとのことで…。」
なぜか唯が首を突っ込んで調査を行うことになった。
唯はさっそく調査を開始し、現場に案内してもらうことになった。アクセサリーは外して机の上に置いていたらしい。朝、目を覚まして再びつけようとしたところ見当たらなかったという。時計も同様で、夜の間に誰かが持ち去ったのではないかとのこと。その他にも簪や手鏡等も行方が分からなくなっていたが、同様の証言で夜の間に単独犯もしくは複数犯で各部屋に侵入し、持ち去ったものと考えられる。
「さぁて、どうするか。」
居合わせただけの私たちにとって、この館のことは全く分からない。もちろんそれは招待客にとっても同じ事。だが、唯だけは尋常じゃない勘を持っている。これが事件解決へと導いてくれる、結城はそう感じていた。
果たして調査は進むのか。そして警察も到着し、捜査が始まる!