第15話 宝さがし
唯は求めていた。きらきら光るお宝を。この船にはもっと残されている、そう信じて疑わない。行動力の化身である唯は海賊船を見つけた瞬間から、隠された財宝をいっぱいに抱えて下船する自分をイメージしていた。
「ここの部屋かな?」
部屋はすっからかんだ。
「こっちかな?」
扉を開けるもまた何も残されていない部屋。
「ここだ!」
宝箱が1つ。
「見つけた見つけた~♪さてさて中身はっとぉ~?」
勢いよく蓋を開ける。中身は……空だった。
「も”お”お”お”ぉ”!!な”ん”でだよ”ぉ”~~~~!!!」
開けた宝箱の上を唯の腕が横切った。
(バゴッ)
宝箱の蓋が空中を飛んで落下した。
「あー、散らかしちゃった……」
そう言って部屋から立ち去る唯。しかしその目は怒りに燃えていた。
「絶対どっかにはあるはず!ざ・い・ほ・う!!!」
いつからトレジャーハンターみたいになってしまったのか。まったく……。
「うおおおおおお!!!!!!」
バカでかい声とともに船をギシギシ言わせながら目に入った部屋を手当たり次第にあさり始めた。ここまで酷いとガシャンガシャンという音が、むしろ心地よく感じられる。
一方その頃、ようやく再び目覚めた男がいた。
「はっ!……う~ん、そうだ船に乗せられててびっくりしたんだった。」
ようやく体を起こした結城はあたりを見回す。右も左も床も目に入るのは茶色い木材。近づいてみると船のへりだった。その向こう側は、海。白波が立っている。
「え?陸地は?なんで海の上?えええ!!!」
結城は混乱した。結城は混乱している。訳も分からず頭をぶつけ始めた。
「なんで、ぼくは、こんな、ところに、乗って、いるんだ、あああ!!!」
そこへ鳴り響く爆音。
(ドゴォン、バゴォン!)
結城は驚いてフリーズする。
「やばい、激しく頭をぶつけすぎたかも。バカになっちゃう!!」
頭をぶつける音だと勘違いしたのか。う~ん、もう充分バカだと思いますケド……。
そこへ唯が暴れながら登場。
「おう、結城、目覚めたのか。宝どこにあるか知らない?見つからなくてイライラしてるんだよね。」
「いや、僕知らないし。もってた金色のやつどこいったんだよ。ていうかそんな暴れまわって船が沈んだらどうするの!?探せなくなっちゃうよぉ?そもそもなんで陸が見えないのさ。どこに向かってるんだよ!」
「…………知らね。」
「……………………。」
「まぁ細かいことは気にしないでお宝探そう~!」
唯は能天気、結城はネガティブ。まったく、どうなることやら。