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鳴き声

作者: 藤野

 毎朝の散歩コースに、通ると必ず犬に吠えられる道がある。背の高い木が庭に植えてある家で、そこの前を通ると決まって小型犬と思われる鳴き声がするのだ。その家の塀は高いから、多分二階の窓から私を見つけて吠えているのだろう。窓が木で隠れており、こちらから犬の姿が見えないので、最初は驚いた。

 ある日その家から女性が出てきた。私は思わず声をかける。

「お宅のわんちゃん、いつも元気ですね」

 言い終わってからハッとした。これじゃ遠回しにうるさいと言っているように聞こえるかな。

 女性は唖然とした顔でこちらを見ていた。

「あの子なら、先月亡くなりましたけど」

 

 結局、私は一ヶ月ものあいだ聞こえるはずのない犬の鳴き声を聞いていたことになる。犬の亡霊か、はたまた聞こえるはずのない鳴き声を「聞こえる」と思い込んでいたのか。

 

 一度鳴き声がした時、木の隙間から覗いた目と、私の目が合ったことがある。それは犬のものなんかじゃなかった。泣き腫らしたうつろな目だった。

 まさか犬が死んでから一ヶ月、今私の目の前にいるこの女が()()()()()()()()()のだろうか?

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― 新着の感想 ―
[良い点] 私の小学生時代の通学路にも、よく吠える犬が飼われている家がありましたので、こちらの短編には共感する事頻りでした。 [一言] 昔から「犬神」という言葉が伝わっている事もあり、犬霊は憑き物の王…
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