第78話 射撃大会優勝者
俺と千鶴さんは少し話してからリビングへと戻った。
そこには、まりんと親父が仲良く話している姿があった。
親父はいつも忙しくしているので、こういう機会は貴重である。
「どうだった? 諒のゲームの腕は」
親父が千鶴さんに向かって聞く。
「凄かったです! これが、世界1なんだなって思い知らされました」
「そうか、参考になったらなよかったじゃないか」
「はい、課長ありがとうございます」
「おうよ」
親父はハイボールを3缶目になっており、だいぶ酔いが回っているようである。
「諒くんって実際に銃撃ったことはないの?」
千鶴さんが俺に尋ねる。
「無いですね。ここ、日本ですから」
日本はアメリカのような銃社会では無い。
持っているだけでも違法になるのだ。
「撃ってみたいとは思わない?」
「まあ、FPSゲームのプロですから、経験としてはやってみてもいいのかなとは思いますね」
今まで、実際に銃を撃ってみたいとは思わなかったが、競技としての射撃なら興味がある。
「アメリカとか行ったことは?」
「一度、プロホプルの世界大会で行きましたけど、それくらいですね」
プロホプルを運営しているリュアーグの支社がアメリカにもあるので、俺が参加した時の世界大会はアメリカで行われた。
しかし、俺は大会だけ出て、ロクに観光もできなかった。
「じゃあ、今度の大会は?」
「アジア大会は日本ですね。本社が日本なので」
リュアーグの代表は日本人だ。
なので、本社は日本にある。
「世界大会はまだどこになるか分かりませんけど、今回もアメリカな気がしますね」
「じゃあ、その時私が教えてあげようか?」
「え、いいんですか? お仕事あるんじゃ……」
千鶴さんも警視庁の花形部署、捜査一課所属なのである。
それなりに忙しいはずだ。
「私の直属の上司は誰だとお思いで?」
「あ、そっか」
千鶴さんの直属の上司は親父なのである。
どうとでもなると言うことだろうか。
「それに、世界大会が去年と同じ時期なら、ちょうど私の射撃大会の時期と重なるから、私もアメリカに行くことになると思うしね」
「なるほど。そういうことでしたら、ぜひよろしくお願いします!」
「そう来なくっちゃね。アメリカは何度も行ってるから、案内もできるよ」
「それは、頼もしいですね」
でも、まずは世界への切符を掴む所からである。
アジア大会で優秀な結果を残さなければ、世界大会への出場権は無い。
アジア大会まで残り僅かしか時間は残されていない。
「まずは、アジア大会頑張りますね」
「うん、応援してるよ」
「そうだ、よかったらこれ。もし、休みが取れたら遊びに来てください」
俺は千鶴さんにアジア大会の観覧チケットを手渡した。
「いいの? こんな貴重なもの」
「いいんです。僕は、千鶴さんみたいな人に応援に来てほしいですから」
関係者に配るように俺は10枚ほどもらっている。
家族に配っても、まだ余ってしまうのだ。
だったら、こういう人に見にきて欲しい。
「じゃあ、ありがたく頂くね」
そう言って、千鶴さんはチケットを財布の中にしまった。
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