第47話 スタートライン
時間が流れていくのは早いものだと感じる。
あっという間にプロホプルの日本大会の当日がやって来た。
大会会場はリュアーグの本社がある、渋谷に設置されていた。
「ふー」
俺は大きく息を吐いた。
何度経験しても大会という緊張感は慣れることは無い。
「お兄、緊張してるの?」
洗面所で髪を整えていると、柚月が後ろから声をかけてくる。
「分かるか?」
「そりゃ、妹だもん。今日は、起きて来てからずっとソワソワしてるもん」
確かに、今日は朝食の時からずっと心ここにあらずといった感じである。
「何度経験してもな、大会ってのは緊張するよな」
俺にはかけられている期待の大きさも普通とは違う。
一度、世界大会で優勝したという実績を残しているので、プレッシャーはかなり大きなものとなる。
「お兄なら大丈夫だよ! 自信持って行って来なよ」
柚月はいつもと変わらない笑顔を向けてくれる。
それを見て、俺は少し安心した気持ちを取り戻した。
「ありがとうな」
柚月の頭をポンポンしながら俺は言った。
「うん! 大会、会場にはいけないけど、配信見て応援するね!」
「おう、頑張ってくるわ」
俺は全ての準備を済ませると、家を出る。
「行ってらっしゃい」
「行ってきます」
柚月に見送られて俺は会場へと向かう。
会場がある渋谷に着くと、莉央との待ち合わせ場所で待っていた。
会場までは一緒にいくことになっていた。
「諒、お待たせー」
俺の姿を見つけると、莉央は小走りで近づいてくる。
いや、可愛いかよ。
「待ってないよ。その格好……」
今日の莉央はいわゆる地雷系という服装だった。
ピンクと黒を基調としたその服装は、新宿の歌舞伎町などでよく見かけるものである。
「変かな? ゲーマー女子っぽくない?」
「すごく可愛いよ。メイクも、いつもと変えているんだ」
服装に合わせて、メイクも地雷系に寄せているのだと感じた。
「よくわかったね。男の子なんて、メイクに興味ないのかと思っていた」
「そりゃ、分かるさ。莉央は可愛いからどんな服でも似合うな」
いつもの清楚系お嬢様のような服装もいいが、こういった地雷系もなかなか様になっている。
俺は地雷系のメイクや服装は結構、性癖だったりするのだ。
「あ、ありがとう……」
莉央は少し目を伏せて言った。
「さて、行こうか」
会場はここから歩いてすぐの所にある。
リュアーグが自社で持っているイベント会場で日本大会の予選は行われる。
全国で行われた、日本大会出場の切符をかけた戦いを制した者たちが集まるのが、今回の日本大会だ。
当然、気持ちも引き締まる思いである。
「高森と夏目です」
入場証を警備員に見せて、会場内へと入る。
会場を見ると、プロホプル仕様に変わっていた。
俺たちは、控室で大会の時間まで待っていることになる。
前大会優勝者ともなると、待遇も素晴らしいものだと感じる。
「落ち着かないか?」
さっきから、莉央はずっと落ち着きが無い。
「いよいよだと思うとね」
「まあ、そうだよな。でも、俺と莉央なら絶対大丈夫だ。いつも通りやろう」
最初に比べたら、連携も随分といいものになっている。
個々の能力を理解した上で、それを補う形でお互いの役割を持てていると思っている。
「うん、そうだよね。一緒に頑張ろうか」
莉央は天使様も顔負けの、いつもの笑顔を浮かべてくれた。
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