第1話 失恋、それは伝説の前兆
新作です!
楽しんで頂けたら幸いです!
桜の花びらはひらひらと舞う。
冬の寒さは嘘のように無くなり、過ごしやすい季節となる。
今日から高校3年になる俺には幼馴染がいる。
俺と違って、成績優秀でスポーツ万能な上に容姿端麗。
クラスでは高嶺の花と呼ばれていた。
そして、今日、俺は幼馴染に告白した。
結果は、察してくれ。
「は? ゲームオタクとかキモすぎだから。高校生にもなって、ゲームオタクとか無いわ」
えまが言い放った。
「キモいって、そこまで言うことないだろ?」
「え、だってゲームってインキャの為の遊びでしょ? それを本気でやっているとか意味わかんないんだけど」
俺は、これでも勇気を出して告白したのだ。
高校を卒業するまで、あと一年。
このタイミングで告白したのも、理由があった。
卒業をすれば、俺とえまは別々の道を歩くことになるだろう。
そうなれば、今のように一緒にいる機会も減ってしまう。
えまは多分、大学にでも進学するのだろう。
余裕で、有名大学に進学できる程の学力をえまは持ち合わせていると思う。
それに比べて、俺は……
大学進学などは特に考えて居なかった。
どの道、えまと同じ大学になどは行けないだろう。
「いい? あんたとは幼馴染としてちょっと一緒にいるだけ。変な勘違いしないでちょうだい」
えまは長い茶髪の毛先を指でくるくるさせながら言った。
「勘違い……なのか」
「そう。だって、私、彼氏いるし」
簡単にサラッとえまは言う。
「おま、彼氏居たのか?」
「うん、居るよ。逆になんで居ないと思って居たわけ?」
「だって、そんなの聞いてないし、そんな雰囲気も……」
今まで、かなり一緒に居たが、彼氏がいることに気づかなかった。
「いちいちあんたに言う必要もないし、気づかなかったのはあんたが鈍すぎるのよ」
「そうか……」
「何そんな落ち込んじゃってる訳? 元々あんたと私じゃ釣り合わないっての分かる?」
えまが見下すような視線を送ってきている。
「女心わかって無さすぎ。じゃあ、私、彼氏とデートだから。もう、関わらないでよね」
そう言うと、えまは駅に向かって早足で歩いて行く。
電話の相手は、おそらく彼氏であろう。
俺はゆっくり歩いて家に帰った。
いつもなら十分と少しで家に到着するのだが、今日はその倍はかけてゆっくりと歩いた。
「ただいま……」
マンションの部屋の鍵を開けて、玄関の電気を点ける。
「おにい、おかえりー」
「ああ」
妹の柚月がいつもと変わらぬ様子で出迎えてくれる。
「どうしたの? 死にそうな顔して」
「まあ、な」
「何があった知らないけど、大丈夫? おっぱい揉む?」
柚月が立派に成長した胸を俺の顔の前に持ってきて言う。
「そういうことは彼氏にしてやれ」
「だって、男の人っておっぱい揉んだら元気になるんでしょ?」
キッパリ否定できないのが辛い。
「そんなのどこで覚えた?」
「秘密」
「お前な」
「女は秘密を着飾って美しくなるのよ」
「好きだなそれ」
どこかの名探偵のアニメで、出て来たセリフだった。
「まあ、ありがとう。ちょっと元気出たよ」
「おにいが元気出したかったら、揉んでいいからね」
「俺は、お前の顔見てるだけで十分元気出るよ」
そう言って、俺は柚月の頭を撫でた。
一方で、えまは気づいて居なかった。
気づけなかったのだ。
この男、高森諒はただのゲームオタクなのでは断じて無いことに。
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