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猫のおみくじ

作者: 知美
掲載日:2020/09/04

1.寝床


――今日、どこで寝ようかな。お気に入りの場所、とられちゃったしな……。

 周りに明かりはなく、時々通る車の明かりがたよりだ。歩道に出て何時間たったのか、ココは立ち止まり、自分の肉球を見た。

 肉球には土や草がついて、汚れていた。それを見たココは思わずため息をついた。こうなったのも、「エコに寝床をとられたせい」というより「縄張り争いに負けるぐらい弱くなった自分のせい」と思い、また歩き始めた。

 ココは縄張り争いになるのが嫌で、周りに気を配りつつ、生活しているから他の猫よりは感が鋭い。だが、今回は桜がキレイに咲いていて、桜の花びらに夢中になっていたから、エコに気づけなかった。

 車のヘッドライトが辺りを照らし、赤い鳥居が見えた。そこは、大きい樹や植木がたくさんあり、地面には芝がありフカフカで寝床にするには最高だ。

――ここなら、邪魔、されなさそう。

 それにここは神社だし、一日寝るぐらい神様が許してくれるはずと思い、ココは神社の鳥居をくぐり、参道を歩いていると誰かの声が聞こえてきた。

「おぬし、寝床を探しているようじゃな」

「……、誰」

 周りを見渡しても誰もいない。

「わしはこの神社の神様じゃ」

「神……、様……」

「そうじゃよ。今なら、誰にも邪魔されない、寝床を提供してあげよう」

――マジですか!?

 嬉しさのあまり、目を見開き、少し固まってしまった。

「マジじゃよ。ただし……」

「します!」

「まだ、何も言ってないが……。参道の先に、おさい銭箱が見えるじゃろ。とりあえずそこで話をしよう」

「はい!」

 嬉しくておさい銭箱の所まで、かけていった。

「ここで、人間達がおさい銭を入れるか、見ていている事と、この願掛けを整理してほしいんじゃよ」

 おさい銭箱の前まで行くと、おさい銭箱の両脇から、上に向かって先が二股になっている、透明な棒がのびていた。高さは普通の一軒家ぐらいの高さだ。二股になっている股の部分には、透明で長い棒が掛けられている。その透明な棒には、たくさんのモクモクした煙みたいな物が掛けられていた。

――うわーぁ、いっぱいだ……。

 たくさん掛かっていて、口が開いてしまった。

「そうなんじゃよ。人間がたくさん願掛けをしていくから……」

「一生懸命します」

「ありがとう、それじゃあ、明日からよろしく頼むのぉ。おやすみ」

「おやすみなさい」

 ココは植木がある所から芝が生えている所を歩き、大きな樹がある所の根本から大きな樹を見上げた。

――もう、縄張り争い……、しなくていいんだ……!

 その日は嬉しくて、あまり眠れなかった。


2.おみくじ


――あれから1週間かぁ。早いなぁ。

 神社に来て、翌日には、ココの定位置が出来ていた。そこはおさい銭箱の隣。神社に来た翌日、おさい銭箱の横で丸まって仕事をしていると、宮司さんがおさい銭箱と同じ高さの、小さな台を用意してくれた。その台に乗っていると人間達が撫でてくれて、時たま、お菓子をくれる。それに、太陽の暖かい日差しが当たり、暖かい。

 その暖かい場所で仕事をしていると、ココには1つ気になる事が出来た。それは、人間達が神様に願掛けをした後、ほとんどの人が引いていく「おみくじ」というものだ。「おみくじ」はおさい銭箱がある場所から左に10メートル歩いて行った場所にある。人間達は「おみくじ」を引いた後に必ず喜ぶ、普通、ショックを受ける、の3パターンのどれかの反応をする。その様子を見ている内にココも「おみくじ」を引きたくなったが、諦めた。猫だから、お金がない。


 カラン、コロン。


 音がした方を振り向くと、紺のパーカーと水色のジーパンをはいた男の人が願掛けをしていた。願掛けをすると頭から灰色でモクモクした物が出てくる。それが透明な棒に掛かるのを見ていると、男の人が「おみくじ」を引いたようで「やった、大吉」と聞こえてきた。

――おめでとう。いいなぁ……、私も引いてみたいけど……。

 ココはため息をついた。「おみくじ」を引くことを諦め、「おみくじ」を引く所から視線を外すと参道を人が歩いていた。

――あ……、今度は女の人だ。

 女の人は、白いパーカーを着ていて、薄いピンク色のマキシム丈のスカートをはいている。

 その人はおさい銭を入れないで、手を合わせ始めた。

――おさい銭!

 ココは入れてよ、という意味を込めて、「ニャー」と鳴き声を出すと、女の人は「あっ、忘れてた」と言い、おさい銭を入れてくれた。

――よかった。あら? 頭から煙が出ない……。なんで? それに何か、ブツブツ言ってる。

 ココは不思議に思い、耳を澄ませていると「神様、ありがとうございます」と、女の人が言っているのが聞こえてきた。

――この人、神様にお礼を言いに来たんだ……!

 ココが仕事を始めてから1週間、神様にお礼を言う人に会ったことがなく、驚いていると、女の人は神様にお礼を言い終わったようで、おさい銭箱の前にはいなくなった。そのかわりに「おみくじ」を引くところにいた。

――この人なら……。

 ココは参道を見て、人が来ないことを確認すると、台から飛び降り、おさい銭箱の後に隠れ、白と黒の水玉のワンピースを着て、髪の毛をポニーテールにした、5歳ぐらいの女の子に変身した。

 猫は、少しだけ魔法が使える。白と黒のブチのココは変身魔法が得意だ。

――これでよし! あとは、あの女の人に……。

 まだ「おみくじ」を引く所の近くにいる、女の人の服を掴み軽く引っ張った。

「何?」

「おみくじ……、引きたいの……!」

「……ん?」

「……、でも、……お金、忘れちゃって……、だから……」

「うーん……。はい、100円」

「ありがとう、お姉ちゃん!」

「どういたしまして」

 私は早速、貰ったお金を、おみくじを引く箱の中に入れ、おみくじを引いた。

――楽しみだな。何がかいてあるんだろう。

 糊付けしてある所を丁寧に剥がし、中を見てみると中吉と書いてあった。

――やった、中吉だ! ん?

 「おみくじ」に書いてある事を読んでいると「おみくじ」に印刷されている文字が渦を巻いていき、大きな文字で「寝床」に変わってしまった。ココは意味がわからず、首を傾げると、神様の声が聞こえてきた。

「出て行きたくないじゃろ?」

「はい! 仕事をサボって、ごめんなさい!」

「……、最初に説明しなかったわしも悪いしのぉ。すまんかったのぉ」

 神様は、ココが持っている「おみくじ」を100円に変え、女の人に返すように言った。

 さっきの女の人を探すと、樹の枝におみくじを結んでいた。

「あの、100円……」

「おみくじはいいの?」

「うん。お金、出してくれて、ありがとう」

「そう……、それじゃあね」

 女の人は100円をお財布にしまうと、鳥居に向かって参道を歩き始めた。

――何かしてあげたいな……。

「撫でさせてあげたらどうじゃ?」

「神様……」

「きっと、喜んでくれるじゃろ」

「はい!」

 ココは近くにある植木の影に隠れ、猫に戻り、女の人を追いかけた。ココは女の人に気付いてほしくて、鳴き声を出すと女の人が気付いてくれた。

「おさい銭箱の所にいた猫ちゃん」

――よかった、気づいてくれて。

 女の人の足に、尻尾を巻き付けながら、足元を「にゃーん」と言いながら、クルクル回った。

――この人に良い事が起こります様に!

「かわいい、触ってもいいかな?」

――御利益がきっとあるから、触って、触って!

 女の人は顎の下や背中を撫でてくれた。

「気持ちいい。それじゃあ、猫さん、また30日に会おうね」

 それから、女の人はココの背中をひと撫でしてから立ち上がり、参道を歩き、鳥居まで行くと、立ち止まり、お社に向かって一礼した。

――また、来てくれるんだ!

 ココは嬉しくなり、おさい銭箱の隣に置いてある台の所まで、かけて行き、台の上に座ると、仕事を再開した。

 台の上で、座って仕事をしているとなんだか、太陽の暖かい日差しがいつもより、心地好く感じた。

読んで頂きありがとうございます。

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