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一人目の女性と知り合う

 離れと聞いていたので、もっと小屋っぽいものを想像していたのだが、ステンが足を止めたのは、全面ガラス張りの建物の前だった。

「これ、なんの建物ですか?」

「サンルーム」

 サンルームが何なのか分からなかったけれど、とりあえずわかった振りをして頷いておいた。

 ステンは数段の階段を登って玄関の前に立つ。三人が立てるスペースはそこにはないので、僕と店長は階段の前で待つ。

「というか、誰と会うんですか?ステンと会うんじゃなかったんですか?」

「ステンはそんなに裏の事情に詳しくないからね。これから会う人は、きっとあなたの役にたってくれるはず」

 ヤクザのような人物なのだろうか。少し怖い。

「言ってはいけないワードとかあります?僕、こっちに来たばかりなのでマナーとかよくわかってないんですけど」

「ああ、そんなこと気にしてたの。そういうのは気にしなくていいわ。彼もあなたの事情は知っているし、もともとマナーにうるさい人でもないし」

 マナーに関して気にしなくて良いというのは安心すると同時に、それはそれで怖い。マナーよりも実力を優先するのだろうか。実力至上主義みたいなのは嫌だな。

「こい」

 ステンがぶっきらぼうに言う。

 店長が先に階段を登り、僕が後に続いた。

 室内は暖かかった。想像していたほど眩しくはない。ぱっと見た限り、照明設備は見当たらない。

 僕が今住んでいる部屋よりも広かった。天井も高い。普通の人では、ジャンプしても手が届かないだろう。

 部屋の中央にソファとローテーブルが置かれている。それ以外の家具は見当たらない。

 ソファに座っていた初老の男が立ち上がって僕らに向かって一礼した。

「ようこそ」

「どうも」

 先に店長が男と握手をした。

「わざわざ呼びつけてしまってすまない」

「そういう仕事だから」

 店長が男の対角のソファに腰掛ける。気がつくと、ステンはすでに男の隣のソファに座っていた。男もソファに腰掛ける。突っ立っているのは僕だけだ。

「かけたまえ」

 男は右手で自分の目の前のソファを示す。ソファは一人用のものが4つしかないので、空いているソファはそこしかない。

「失礼します」

 そう言って軽く頭を下げたあと、男の正面にある、店長の右隣のソファに座る。

 まずは男が口を開くだろう、と思っていたのだが、彼は何も言わない。そればかりか、店長とステン、男の視線が僕に向けられていた。これは僕に、何か喋れ、と言っているのだろうか。

「あの、握手とかしないんですね。店長がしてたから、てっきり僕もするのかと」

「いや、握手は信用できる相手としかしない」

 男の声は非常に落ち着いている。知性が感じられる冷静さだった。正面から男の顔をよく観察すると、第一印象より若く見えた。

「信用できない相手を自宅に招いたんですか?」

「そういうことが必要なときもある」

 男の対応から、僕を歓迎する気持ちを読み取ることはできなかった。かなり警戒されているようだ。

「ちょっと緊張しすぎじゃないのか?」

 意外なことに、ステンが男に向けて言った。男は少しだけ口を明けて、息を吐き出すように笑った。

「いや、すまない。確かに警戒しすぎだな。客人に対する礼儀がなってなかった」

 男は誰に言うでもなく、そう言った。よくわからないけれど、警戒心がゆるくなったらしい。こちらとしては好都合だが、勝手に身内ネタで盛り上がられたような違和感が残る。

「握手をしようか?」

「いえ、結構です。自己紹介をしていただいたほうが嬉しいです」

「ああ、そうだったな。私の名前はアレモンド。仕事は…そうだな、今は職と呼べるようなものには就いていない」

「ついでに言うと、このあたり一帯の裏社会を牛耳っているのが彼よ」

 店長が横から口を挟む。

「君のことは彼女からよく聞かされているよ」

 そう言ってアレモンドは店長に視線を送った。

「そういう仕事だったから」

 店長はそう弁明した。

「仕事?店長は僕のことを監視して、アレモンドさんに報告するのが仕事だったんですか?」

「まあ、仕事というと大げさかも。軽いお使いみたいなものよ」

 自分が監視されていたということを聞くのは、あまりいい気分ではなかった。

「監視という言葉も大げさだ。要はこの屋敷に招くべきかどうか、信用に足る人物かどうか確かめていただけだ。俺が酒場で会ったのも、そういうわけだ」

 ステンもその仕事を請け負っていたようだ。

「あれ?じゃあ、店長が僕に声をかける前から、僕のことを知っていたんですか?」

「声をかけるというのは、初めて会った時のこと?」

「はい」

「それについては私から話そう」

 アレモンドが間髪入れずにそう言った。

「その話をする前に、少し昔話をする必要がある。予備知識として知っておいてもらわないといけないものだ」

 なんか話が逸れているような気がしないでもないが、先を促した。

「随分と昔のことだ。まだ私が君と変わらないくらいの年齢のとき、一人の少年と出会った。その頃の私はちゃらんぽらんな奴で、将来の食い扶持のあてもなく、毎日をただ消費していた。だから、彼と出会ったときは、心底驚いたよ。彼はとても生き生きとしていた。夢を持っていたんだ。その頃、私の住んでいた国は経済的に不安定な時期だったから、彼のような人物がいなかったんだ。みんな国の将来を案じて陰鬱とした空気が流れていたし、夢を語るやつなんて私の周りには誰もいなかった」

 アレモンドは話を止めた。

「少し話が逸れてしまったな。話を戻そう。私が出会った少年は、私と同じ年頃だった。彼は別の世界から来た、と言っていた」

 アレモンドは僕に視線をよこした。

「初めは誰も信じなかった。もちろん、私も信じなかった。ただ、彼のもっていた力を見せられたときに、全てが真実であることがわかった」

 再び、アレモンドは僕に視線をよこした。もしかしたら、僕に合いの手でも入れてほしいのだろうか。彼が気分良く話しても僕に害はないし、むしろ友好関係を築くという意味では、そのほうがいいだろう。

「その力というのは?」

「魔法だ」

 魔法に長けていたということか。

「それを見たとき、私達は手品かなにか何じゃないかと疑ってかかった。当然だ。魔法なんておとぎ話の中にしか存在しない」

「え!?ちょ、え?ちょっと待ってください。魔法が存在しない?」

「あれ、知らなかったか。…続きを話すから、質問は最後にまとめてしてほしい」

 僕は今すぐにでも聞きたいことが山ほどあったけれど、今は話を黙って聞くしか選択肢がないので、仕方ない。

「私が魔法の存在を認めたのは、今思い返せば驚くほど早かった。初めは疑ってかかったけれど、彼のことを調べれば調べるほど、何の仕掛けもないことがわかった。その後は、今となっては不思議なくらい、すんなりと魔法の存在を受け入れた。多分私が若かったせいだろう。君も魔法が存在することを疑いもしないくらい、魔法というものに馴染んでいる」

 確かに、先程魔法が存在しない、と聞いたときの僕の反応は、その事実を如実に表わしていた。

「私は彼と一緒に旅に出た。もともと、彼は一人旅をしていて、私のいた国に流れ着いたという経緯がある。旅にでるのは、自然な発想だった」

 ステンが立ち上がった。何事かと思ってそちらを見ると、彼は部屋の端に置かれたキャスター付きの台に向かって歩いていた。その台の上には、ティーポッドとカップが乗っている。

 気が利くなあ、と思ったけれど、単に話を聞くことに飽きただけかもしれない。アレモンドは、ステンの動きを気にせずに話し続けた。

「私達は本当に色々なことに首を突っ込んだ。人助けをしたこともあれば、人には言えないような悪事を働いたこともある。総じて言えるのは、毎日が楽しかったということだ」

 ガラガラと音をたてて、ステンがテーブルに戻ってきた。ティーセットも一緒だ。

「ただ、楽しいことを独占することはできない。楽しそうに遊んでいる人の周りには人が集まる。私達もそうだった。初めは二人きりだったが、段々と仲間が増えていった。仲間が増えたことは、喜ばしいことだった。二人ではできなかったような大掛かりなこともできるようになった。ただ、その分現実を見なければならなかった」

 アレモンド、店長、僕の順番で、目の前にティーカップが置かれていった。

「二人で遊んでいたころは、責任なんてものを考える必要がなかった。でも、そうも言っていられなくなった。損得を考えなければいけなくなった」

 アレモンドはティーカップを手に取った。一口飲んで、ステンに声をかけた。

「いい味だ」

 僕も真似をしてお茶を飲んだ。紅茶よりも酸味が強いような、少し不思議な味だった。

「私と彼は、徐々に疎遠になっていった。もう随分昔のことだ。今となっては生きているのか死んでいるのかさえ分からない」

「…その昔話が僕の監視とどのように関係するのでしょうか?」

「まあ、慌てるな。…さっきも言ったとおり、魔法の出現は我々にとって衝撃的な出来事だった。それを知った人々の行動は様々だった。私のように魔法を受け容れる者、魔法の存在を否定する者、魔法の力を自分のものにしようとする者。しかし、周りの人間が何をしようとも、事実は変わらなかった。魔法は彼にしか使えなかった。そして、魔法は明らかに存在した」

「魔法を解析して、万人が使えるようにはできないんですか?」

「そう考えた人が当時、何人もいた。彼もそういう人たちに協力的だった。だが、その研究の結果は、『後天的に魔法を使えるようになる方法はない』という皮肉なものだった」

「それは、残念ですね」

「だが、『生まれつきなら魔法が使える』」

 それを聞いた時、僕はゾッとするような発想をしてしまった。

「『生まれつき』…」

 アレモンドは僕が何か思いついたことを悟ったようだ。

「そうだ。その発想を持った人間が当時も存在した」

「子供をつくったんですね」

 自分で言いながら、嫌な気分になった。

「そうだ。当時から、生活の中で得た経験則として、遺伝という現象が知られていた。その方法が上手く行くと、確信があったわけではない。もうその方法しか考えつかないという状況だったのだろう。だが、結果から言うとその方法は成功した」

「子供は、魔法を使えたんですね」

 僕がいた世界なら、間違いなく人権問題になっていただろう。

「彼が男だということもプラスに働いた。女性では、人間を一人生むためにリスクと長い時間を必要とする。男性であれば、ほとんどリスクを背負わずに子供をつくることができる」

「もしかして、ハーレムをつくったんですか?」

 思わず身を乗り出してしまった。

「ああ、そうだ。自然な戦略だろう?」

「その規模は?」

「分からない」

 アレモンドは首を横に振る。

「ハーレムをつくったことは確認されているが、その詳細は不明だ。100人規模とも1000人規模とも言われている」

 それだけのハーレムを維持するには、大量のお金が必要なはずだ。国家規模のプロジェクトでなければ、それだけのハーレムをつくることはできないだろう。

「今もそのハーレムはあるのでしょうか?」

「いや、すでに無くなっているという話を聞いた。だが、そのハーレムで生まれた子供世代が、新たなハーレムをつくっているという話もある。信用のある筋からの情報だ。…ハーレムに興味があるのか?」

「ええ、まあ」

「やめておいたほうがいい。国家ぐるみでハーレムをつくっていることは、ほぼ間違いないが、その実態は分かってない。人間性を無視したような運営が行われているのかもしれない。軽い気持ちで首を突っ込むとろくな目に遭わないだろう」

「国が魔法を使える人たちを囲い込んで、魔法を独占しているわけですね。では、街の人たちは魔法の存在すらしらないのですか?」

「普通の国民はそうだ。魔法はフィクションの中にしか存在しないと思っている。ただ、私達が旅をしていたころを知っている人の中には、魔法の存在を信じている者もいる。しかし、そういう人間は妄想がすぎると思われて、相手にされてない。私達が活動していたころを知っている人は、すでに歳をとっていることも影響しているだろう」

「老人の戯言として聞き流されているんですね。本や伝承にしても、フィクションだと思われてしまうのでしょうし」

「真剣に、魔法の存在を立証しようとしている人もいるが、証拠がない。魔法を使っても、化石も何も残らない。魔法が存在する証拠を示すことは不可能だろう」

「それに、そもそも本は、一般に出回ってないないわよ」

 店長が口をはさんだ。

「店長も魔法のことを知っていたんですね」

「当然」

「ステンは…魔法使いなんですか?」

「ああ、そうだ」

「そういうのって、やっぱり分かるものなんだ」

「もしかして、僕が街に入った時点で魔法使いに会っていたんですか?だから、店長は、僕が魔法使いだと知っていたんですか?」

 僕はアレモンドに尋ねたつもりだったが、アレモンドはステンに視線を向けた。

「会って話をすれば、ぼぼ間違いなく分かるが、そうじゃなくても、例えば近くで姿を見ただけでも分かることもある。お前はまだ慣れていないだろうが、経験をつめば分かるようになるはずだ」

「ということは、街の中に一般人の振りをした魔法使いがいる、ということですか?」

 アレモンドとステンは顔を見合わせた。

「それについては、詳しく言うことができない。君を信用していないとか、そういう問題ではなく、相手が誰であろうと喋ることができない」

 アレモンドは国の管理から逃れた魔法使いを匿っているのではないか、と想像した。だとしたら、アレモンドの対応は理にかなっている。

 アレモンドはカップのお茶を飲み干した。そろそろ話題も尽きてきたので、お開きかもしれない。

「実は、君に一つ頼みごとがあるんだ。ぜひ引き受けてもらいたい」

 これには少し驚いた。アレモンドは、僕のことを信用していないわけではない、と言ったが、僕に対して警戒心を抱いているように見えた。そんな相手に何を頼むのか、不思議に思う。

 もしかしたら、一種のテストのようなものかもしれない。僕が信用に足る人物かどうか、試すつもりなのか。

「どのような頼みごとですか?」

「あるカルト組織の調査をしてほしい」

「それは…警察や軍の仕事なのではないでしょうか?」

「彼らは犯罪集団ではない。公的な組織を動かすことはできない」

「犯罪を犯していないのであれば、放置しても問題ないのでは?」

 余計な仕事を押し付けられるのは、正直面倒だった。

「そんなわけないだろ。犯罪集団に成り下がる前兆を知るためにも、調査は必要だ」

 ステンが語気を強めて言った。確かに、もっともな意見だった。

「もちろん、無給の仕事を依頼しているわけではない。リンを通じて、それ相応の額を払う。約束しよう」

 リンって誰のことだ、と思ったけれど、どうやら店長の名前のようだ。

「わかりました」

「私も同行するわ」

 隣りに座る店長が言う。

「え?お店はどうするんですか?」

「うちの若い奴を派遣しよう」

「ああ、もともと人材に困っていなかったんですね。僕を雇ったのは人手不足だからという理由じゃないから」

 僕と出会ったときに、店長は人手が足りない、みたいなことを言っていたけれど、あれは嘘だったというわけか。

「それで、何という名前の組織なんですか?」

「魔女の会、そう呼ばれている」

「魔女の会。まさか、女性の魔法使いがリーダーを勤めているなんてことは、ありませんよね」

「いや、そのとおりだ。ただ、自称魔法使いであって、本物である確証が得られているわけではない」

「随分安直な名前ですね」

「彼らの拠点は国外にある。だから実態を把握しきれていないのが現状だ」

「魔女の会の活動目的はなんですか?宗教団体ですか?」

「おそらく、悪魔崇拝の類だろうと思うが、はっきりしたことはわからない。最大の問題は、国内から人が流出していることだ」

「え?魔女の会は国でもつくるつもりなんでしょうか?」

「いや、そんなに大勢ではないが、魔女の会の思想に同調した国民が組織に合流しているようだ」

「それは…難しい問題ですね」

 この世界では、労働の大半が手作業によって行われている。人口の減少は、そのまま国力の低下につながる。

 かといって移動の自由を奪えば、国民の反感を買うことになるだろう。

「国は流出の問題を認識してはいるが、そのことと魔女の会との関連性にまではたどり着いていない」

「じゃあ、教えてあげたらどうですか?魔女の会という怪しい組織がこの国の国民を奪ってますよって」

「確かにそのとおりだ。流出した人数は100人にも満たないが、もし魔法使いが絡んでいるのであれば、この先、流出人口は増え続けるだろう。問題が表面化した時には、すでに手遅れになっているだろう。この国のことを考えるのであれば、このことを知らせるべきだろう。だが、私はこの国の将来なんてどうでも良い」

 アレモンドは何でもないことのように言った。

「この国の将来がどうでもいいんですか?じゃあ、何のために僕に仕事の依頼を?」

 僕は憤っていたわけではなく、純粋に知りたくなった。この大金持ちは、何のために少なくないお金を使ってまで僕を雇うのだろうかと。

「趣味だ」

「え?」

 自分の仕事の邪魔になるからだとか、そういう理由を予想していたので驚いた。

「怪しい組織を調査することが、趣味なんですか?」

「いや、違う。そうではなくて、…いや、この話はやめにしよう」

 アレモンドにそう言われてしまうと、こちらとしてはこれ以上追及できない。

「仕事に関する詳細はリンに聞いてくれ」

 会合はお開きになった。


「おい」

 サンルームを出てすぐに、ステンに呼び止められた。

「アレモンドの態度を不快に思ったかもしれないが、あれにはわけがあるんだ。大目に見てくれ」

 アレモンドと会った直後のことを言っているのだろう。たしかに随分警戒されていた。

「ああ、あれか。別に初対面だったし、警戒するのは普通じゃないの?」

「お前と面識がなかったことよりも、お前が魔法使いだということのほうが問題だったんだ」

「どういうこと?」

「さっき聞いていただろうが、アレモンドは昔、魔法使いとともに旅をしていた。その中で魔法の強さ、恐ろしさを嫌というほど見てきたはずだ。ましてお前は異世界から来た得体の知れない人間だ。アレモンドが警戒していたのはそういう理由なんだ」

 もし僕が異世界から来た、謎の力を操る人物と対面したら、アレモンド以上に取り乱すだろうと、容易に想像できた。アレモンドを責めることはできないし、もともと責めるつもりもない。

 ステンは言いたいことを言い終わると、別れの言葉とともに、母屋の方へ足早に去っていった。

「店長は魔女の会のことを知っていたんですか?」

「ええ、もちろん。アレモンドがあなたに仕事の依頼をすることも事前に聞かされていたわ」

 店長は裏の世界に生きている。僕に話していないこと、話せないことは山ほどあるのだろう。

「そういえば、アレモンドさんは僕に仕事を依頼したことを、趣味だと言ってましたけど、あれはどういう意味なんですか?」

「さあ?あんまり付き合いが長いわけじゃないから。でも、きっと正義の味方ごっこみたいなものなんじゃないかな」

「悪の組織を倒す、みたいな?」

「そこまで直接的じゃないと思う。例えば、今回のことを国に任せた場合、魔女の会に同調した人たちは、どういう扱いを受けると思う?」

 彼女の言いたいことがなんとなくわかった。

「いい扱いは受けないでしょうね」

「もし、リーダーが本物の魔女だったら、魔法の存在を隠すために、口封じに皆殺しにされるかもしれない。そういう行き場のない人を助けようとしてるんだと思う」

 今の店長の話は、若い頃のアレモンドの武勇伝からイメージできる人物像と一致するように思えた。

「たしかに、そんな気がします」

 僕らはアレモンドの屋敷を後にした。

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