第2話 学園来訪
第2話です。まだ異能力も何も出てきません。
[対馬 来陸学園]
ケイは学園の前で圧倒されていた。
コンクリートの5メートルはあろうかという壁、それが学園を覆っていたからだ。
そもそもこの学園はハザード当時に作られた要塞を転用したものである。
ハザードが発生した直後、大陸から多くの侵略があった。比較的被害の少なかった島国である日本に逃げてきた人々だ。
日本は直ちに受け入れを辞めた。
そして、彼らは暴徒化した。
その鎮圧にあたったのが対馬の要塞だったのだ。
そのための要塞、それは対馬の上島の6割を占めている。
前線が半島に移るにつれて、要塞は役目を終えつつあった。
そこで現在は兵站補給の目的、人材確保のための学園として運営されている。
ケイが立つ前にはたしかに重厚な門が存在する。
しかし、その門は固く閉ざされていた。
「確か今日だったよな…」
ケイは呟きながら腕を見た。その腕にはブレスレットがあり、そこに予定が表示されていた。
彼のWD(wearable device)は旧世代のものではあるが、そのおかげで安く手に入るため日本人のほぼ100%にWDが普及していた。
ケイは辺りをキョロキョロと見渡す。
見えるのは海と壁と道路のみ。誰もいない。
約束の時間になった。
門が開いた。
「ようこそ、来陸学園へ」
出てきたのは少しふわっとした長髪のメガネの似合う眼光の鋭い女性であった。
「えっと…、この時間は……守田ケイくんでいいかしら。」
女性は続けて問うた。
「はい!!」
ケイは持てる力のあまり声を出した。なぜなら彼女のオーラに負けそうであったからだ。
来陸学園の先生、あるいは関係者ということは持つものであることはほぼ確実。門が開く前から彼は頭で理解していた。
しかし、実際目の当たりにすると思っていたものじゃなかった。
彼女の後ろから台風の暴風が吹くような、冷たいような、暑いような、感じたことのない圧力を感じたのであった。
それに抗おうとした涙ぐましい努力の結晶が大声だったのだ。
「(あら、元気のいい子ね…)」
「(なんだこの感じ…)」
お互い考えていることは違うものの、辺りに静寂が流れた。
その静寂を破ったのは
「グゥ〜ぎゅるるるる〜〜〜〜」
腹の虫であった。誰の腹の虫かって?言うまでもない、ケイの腹だった。
それも仕方がない。彼らは満腹という感覚を感じたことがないのだから。
生きていくのに最低限必要な食事こそ配給されているもののあくまで最低限。
それ以上食べるには多くのお金が必要だった。
昔だと農家がいたり、闇市があって食物も手に入れる裏ルートが存在した。
しかし、人口が2億人を超えている現在において農業を行う土地ですら希少であり、多くの食物がバイオ技術を駆使したクローン野菜や合成タンパク質をベースにしている。
そんな工場製のものなんて大量にちょろまかすのは困難だ。
というわけで殆どの日本人は与えられた食べ物を食べて労働をこなすのだった。
思わぬときになった腹、それを恥ずかしがるようにケイは顔を赤らめつつ腹を擦った。
「ははははっ!」
女性が高笑いした。
「いやー、今まで多くのひけんし…挑戦者を見てきたけど、初見で腹を鳴らしたやつは初めてだ!よし、飯を食わせてやろう!」
女性はそう言うとケイに近寄ってきた。
「えっえっえ「いいから来なさい。」」
そう女性はいうとケイを抱きかかえた。そして塀の内側へと入っていった。
重厚な門が閉まり、塀を抜けるとそこは土の広場が広がっていた。
そしてその端っこにあるプレハブ小屋ほどのコンクリートづくりの四角い小屋。
ケイはそこへ連れて行かれた。
中には外の簡素な見た目に反して机とソファーが2脚おかれており、その机の上には色とりどりの果物がバスケットに入っておいてあった。
「本来はここ、観覧席なんだけど…まあいいや。好きに食べていいよ」
そう言われ、ケイは飛びついた。
「で、食べながらでいいんだけど、聞いてくれる?」
女性が向かい側のソファーに座りつつ訪ねた。
ケイは頬張りながら頷いた。
「紹介が遅れたわね。私の名前は滝井 今日夏、言うまでもなく持つ人よ。今回、あなたの適正検査と入学試験を行うわ。まず、説明からいいかしら。」
右手にバナナ、左手にりんごを持って、交互に頬張りつつケイは頷く。
「この学校、来陸学園は知っての通りただの学校じゃない。人類にとっての希望であり、また日本人の誇りを取り戻すことのできる数少ない手段の一つよ。今からあなたには試練を受けてもらいます。これがうまく行けば晴れてこの学園の生徒、だめだったらその時次第ね。」
「ふぉととひひはい?」
「そう、どうなるかわからないの。やってもらう試練は簡単、ディペンダーを宿すことができるかよ」
ケイはごくりとつばを飲む。バナナを思いっきり頬張ってたことも忘れて…
「ゔぐっ!……」
胸を必死にたたき飲み込もうとする。
「はい!水飲みなさい!水!」
コップの水を口へと無理やり流し込む。
「ぷはー!」
「で、いい。君には今からディペンダーに触れてもらうわ。その時、何が起こるかはわからない。いいわね。」
そういうと彼女は一枚の紙を取り出し、机に置いた。
それは誓約書だった。
「じゃあ、満足したらこれにサインを頂戴。」
5分後、ケイは躊躇わずサインした。
どうでもいい情報
今日夏は3人姉妹の次女です