君の瞳に完敗
「だっから好きだっつってんじゃん!!!!!!」
「っばか黙ってお願い・・・・」
「んじゃ俺のどこが不満か言ってみろよ全部、ぜんぶ」
「ねえもう・・・うるさい、」
「言ってよなおすから」
こういうところ本当彼だよな、と思いながら、目の前の枝豆に手をのばす。しかしすかさず彼にその手を掴まれ、なあ、と目線を上げさせられた。あとでよくね、と無言の圧をかけられたら、あっけなくわたしの負けだ。
「なんで。はっきり理由教えて」
「さき手離して」
「やだ」
「だっ・・・・なんでよ、」
話に気が散ると振りはらったのは本心、こういうのはやめてほしいのも本心。酔うとヒートアップする彼のど直球な言葉は身がもたない。いつもは絶対にしてこないボディータッチも素知らぬ顔でしてくるところに、なぜだかちょっと悲しい気もする。
「俺のどこが嫌い?」
「なんでそんな聞き方するかな・・」
「んん、何」
「何もないよ」
はあ、ほんとは枝豆なんかどうでもいいのに。もっと言うとお酒も理性もどうでもいいのに。こんなものにしか頼れないわたしも最悪だなと自己嫌悪に陥る。本当は泣くほどうれしいのに、うれしくてまだ息が上がっているのに、自分でかけたつまらない保険のせいで100パーセントの信用ができないなんて、もう自分こそ消えてしまえと思う。こんなときでも彼はまっすぐな目でわたしを見つめて、今度は優しい声をだして、ゆっくり名前を呼んでくれる。胸が熱くなって、そういやわたしも相当飲んだから涙でもあふれてしまったらどうしよう。
「俺はちゃんとさ、思ってるよ」
「なにそれ、」
「だから、・・・・うん。安心して」
「・・・・なにをだよ」
「全部でしょ」
ほら、と手を差し出す。手のひらが上を向いてはいなくて、これなら、なんとなくわたしでも大丈夫な気がして。枝豆をつまんでいた手と反対の手でその手を握って、これはなんだろう。しいて言うなら、信頼の握手でしょうか。
「あー、なんか俺、わかっちゃったわ」
「え?」
「わかった気するよ。なんとなく」
「なにが、」
「え?なんだろねー」
「むかつくからその顔やめて」
「んじゃただの握手で勝手に照れんのもっとやめろ」
「は、・・・・・・・・ほんとに」
「はい乾杯」
「・・・・・・かんぱい」