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眠り姫は精霊魔法で無双する~神殺しと呼ばれた幼女~  作者: 綾乃葵
第2章 ガーランド魔術学校編
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【魔術学校編】眠り姫と特待生

魔具のお話

石造りの部屋は昼間でも薄暗い。魔具の光が必要だが、この部屋には一切なかった。


天窓にはガラスではなく水晶がはめ込まれ、陽光が差し込む。白で統一された家具と壁紙が光を反射し、部屋を一層明るく見せている。


そんな部屋で、男女がテーブルを挟んで向かい合い、密談を交わしていた。


「――して、アキと言う生徒、お前ならどう見る?」


初老の男は白い長いひげをいじりながら女性に声をかける。彼はウェス・ワグナルド、現ガーランド魔術学校学長だ。


「はい、とても珍しいタイプの魔術士です。黒魔術や白魔術のマナの開花はありませんが、黒魔術の事前詠唱なしで精霊魔術を扱えます」


ティーカップを傾け、アマリは落ち着いた声で答えた。


「ほう、単独で精霊魔術が扱えるとな」


ウェスは眉をぴくりと動かす。


「それもかなり強力な魔力です。その威力はエルフと同等かそれ以上――」


「精霊の加護か……とんでもない逸材かもしれん。だが、彼女はグリンビルド王国の出身だろう?白魔術が使えないというのはおかしい」


「私もそう思います。しかも彼女はグリンビルドの眠り姫との噂もあります」


アマリは、アキが王族とは聞いていたが、詳しいことは知らない。従者が付くくらいなので、王族でも後継者に近い人物だと予想できた程度だ。まさか眠り姫とは――。


「グリンビルドの眠り姫だと? どうしてそう思う?」


「12年前の大戦時、血の呪いで王国は滅びかけました。幼い姫を救うため、エルフが魔術を施した。その代償として、彼女は深い眠りについた――これが噂です。そして私の推測ですが……」


アマリは言葉を選びながら続ける。


「彼女が目覚め、エルフの魔術で精霊の加護が目覚めたと考えられませんか?」


「それはアキが眠り姫だと仮定した場合の推測か」


「はい。ただ、事前詠唱なしで精霊魔術を扱えた人間は、学校創設者ガーランド・ギネリスただ一人です――」


アマリは少し口ごもる。


「なるほど……とんでもない才能かもしれんな」



あの試験以来、アキの魔術の上達ぶりは目を見張るものだった。


まず覚えたのは生活に便利な魔術だ。


風の魔術による空中浮遊。人間なら『浮く』程度だが、アキの魔術は威力が桁違いで、初めはぶっ飛んであらぬ方向に行くこともあった。しかし、最近では自在に操れるようになった。


攻撃魔術は威力を抑えればいいが、生活魔術は魔力の制御が一番難しい。アキはそれを乗り越え、驚異的な精度で魔術を扱えるようになっていた。


精霊魔術は契約不要で魔具向き。黒魔術や白魔術とは違い、周囲のマナを集めて発動するため、生活に便利な道具に応用できる。魔具は最大5年で自壊するよう設計され、供給をコントロールするガーランドの重要な資金源でもある。


入学から半年、アキは魔術を使えるようになり、2ヶ月で驚くほど上達した。


今日は週に1度の休暇日。ベッドで魔術書を読み漁るアキの隣で、ミリィが一通の書簡を差し出す。


「アキ、学長から書状が来ています」


「え? まさか、壁を壊した件で反省文とか……?」


ミリィは笑いながら首を振る。


「そんなわけありません。学業で大きな成績を収めた者だけに送られる書状です」


アキは不安そうに書状を受け取り、封を切った。


「――ルワンダ所属、アキ・ベルシュ・グリンビルドを特待生とし、2年への編入を認める。尚、特別研究員として迎え入れ、研究施設の出入りを許可する」


「飛び級……!?」


予想もしていなかった知らせに、アキは思わず声を上げた。



アキは書簡を握りしめ、しばらく呆然としていた。

「本当に……私が……?」


ミリィはにこりと笑った。

「本当ですよ、アキ。あなたの才能を学長が認めたんです」


「でも、2年生への編入って……みんなよりずっと早くて……大丈夫なのかな、私」

不安げに呟くアキに、ミリィは力強くうなずく。

「大丈夫です。あなたにはその価値があるから、この書状が届いたんです」


そのとき、書簡を届けてくれたのは図書館でよく顔を合わせる、学長の秘書ギィだった。

「アキさん、おめでとうございます。学長も楽しみにしているようですよ」

ギィの言葉に、アキの胸は期待と緊張で高鳴った。


数日後、ガーランド魔術学校の広間。

学長ウェス・ワグナルドがアキを待っていた。

「アキ・ベルシュ・グリンビルド、特待生として迎え入れる」

学長は厳かに告げる。


「学長……ありがとうございます」

アキは頭を下げた。


ウェスは微笑む。

「君の才能は特別だ。君が研究に使う魔具は学校の最新のものを与えよう。君の力がどこまで伸びるのか、私自身楽しみにしている」


周囲の教師や生徒もその知らせにざわめき、注目を浴びるアキ。

「やっぱり……私、普通じゃなかったんだ」

自分の魔術の才能を改めて認められた実感が、アキの胸を熱くした。


ミリィはそっとアキの肩に手を置いた。

「これからもっとすごいことが待っていますよ、アキ」


アキは深呼吸して、決意を胸に固めた。

「ええ……もっと強くなってみせます」


その瞳には、未来への希望と覚悟が光っていた――。

精霊魔術は実用的じゃない。けど、使いこなすとスゴイ。

事前詠唱を使用しての精霊魔術は本来の魔術の2割程度らしい。

精霊魔術を100%の力、それ以上の力を行使できる精霊の加護はこの世界ではやっぱりチート。


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