不運
小説を書くのは難しい。
素人がやるもんじゃないのを実感しています…
徐々に視界が晴れていく。
目眩しの魔法?いや、そんなはずはない。
あんな隙だらけだったのに、目眩しをする必要なんてないはずだ。
状態異常?それとも呪いか?
でも体に異変はない。精々、吐きすぎて口の中が酸っぱいのと、多少の脱力感があるくらいだ。
「なんだ…これは…」
視界がクリアになり、俺の目に飛び込んできたのは、辺り一面の花畑。そして
「ぁぁあああああああああっ」
亮真の彼女だった何か。
状況はよくわからない。
おそらく、さっきのは転移術式か何かだったはずだ。でなければ今のこの光景に説明がつかない。
そして、亮真の彼女だった何かは、ずっと何かを叫び続けている。
「これ…逃げるなら今じゃね?」
恐る恐る後ずさり、走りだす準備を整える。
剣の魔法で作り出した剣は、いつの間にか消えていた。不意を打つより、気づかれる前にいなくなったほうがいい。
「亮真。すまん。俺は、俺にはお前を救えないっ」
どこまでも情けない。
さらに、亮真の分まで生きようとか、そんなご都合主義なことばかり脳は考える。
せめて、もう少しだけでも自分に力があれば。
「ああああぁぁあぁあ……あ?」
数メートル、亮真の彼女だった何かから離れた時、最悪の事態が起こる。
叫び続けていた何かと、目が合ってしまった。
詰まる息。固まる体。
「ぁ、これ、…死んだ」
唯一出た言葉は、小さく掠れていた。
亮真の彼女だった何かは、そんな光の声を聞いたからなのか、それとも手頃な獲物を見つけたからなのか、叫びを止める。
「嗤ってる…のか?」
光の目には、先ほどまで、うるさいくらいに叫び声を上げていた何かの口か、自身を見つけ、嘲笑っているように見えていた。
しかしながら、実際にそうなのだろう。
目の前に立つ何かからすれば、自身が追い詰め、相方だった男を殺し、それからの光景を見て嘔吐を繰り返しているような軟弱者が、ある意味唯一と言ってもいい逃走のチャンスすら気づかれるという不運。嗤うしかない。
「ぁぁあああああああああああああっ」
「うわぁぁああああああああああ!!」
叫ぶ何か、絶叫し背を向けて走りだす光。しかし
「さぁぁぅうよぅぬあぁるらぁ…!」
急に発現する魔方陣。明滅する世界。
そして、一気に視界が真っ白になる。
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徐々に視界が晴れていく。
風が頬を撫でる。草の匂いがする。
体が地面に倒れている。
先ほど逃げる時に、視界が真っ白になるのと同時に倒れたのだろう。
「っ!あいつは!?」
急いで体を起こし、何かのほうへ振り返る。
そして、その目に映った光景は、視界一面の花畑だった。
そう、先ほどから自身がいた場所から何ら変わらない。唯一、変わりがあるとすれば、
「奴が…いない…?」
そう、先ほどまで目の前にいた、亮真の彼女だった何か。
その姿が見当たらないのだ。
どこかに潜んでいないか辺りを見渡してみるも、やはりどこにもいない。
「助かった…のか?」
急に身の安全を確信したのか、気が抜けたのか、その場にへたり込む光。
しばらく、そうしていたことで、自分の気を落ち着かせることができたのか、光はここで、別の可能性に思い当たる。
転移術式を使える奴が、急にいなくなったのだ。
圧倒的弱者であろう自身の前から。
「…まさか」
「まさかっ!」
「置いていかれた!?」
読んでいただき、ありがとうございます。