終わる世界
誤字脱字が多いかもしれません。
急展開に抵抗のある方はスルーして下さい。
こうして目の前に現れると、存在の異様さがわかる。眼球はぶら下がり、髪は生えてはいても、頭皮がズル剥けているせいか元の髪型がよくわからない。皮膚は爛れて泡立っており、血が滲みまくっている。
「お前の彼女、なかなかいいセンスしてるな」
「冗談言ってる場合か!つうかなんで急に」
そうなのだ。なぜ急に亮真の彼女が現れたのか。
おそらくはあの魔方陣が転移術式的な何かだったのだろうけど、いくら詠唱事故とはいえ、ポイントが大幅に増えるわけじゃないはずだ。
「い しょ にい 」
「やばいっやばいっやばいって!香奈!お前どうしたんだよ!!」
「亮真!もう無理だ!やるしかない!」
どうやらこちらに考察の時間はくれないらしい。
俺は亮真に、亮真の彼女だった何かへの攻撃を宣言する。
「でもっ!……くそっ!!だけど殺さないからな!!」
「当たり前だ!詠唱事故者には人権が認められている!この歳で殺人犯にはなりたくないからな!」
俺と亮真は意を決し、逃走ではなく対峙を選んだ。もう、なるようになるしかない。
「亮真、俺が剣の魔法で時間を稼ぐ。その間にとびきり強いやつを詠唱してくれ!」
「強いやつってなんだよ!とりあえず、動けなくする系でいいよな!?」
「頼んだ!」
亮真は意識を集中して詠唱を始めた。詠唱を聞くに相当ポイントを振ってるらしい。チートがここに来ても役に立っているようだ。
「さて、俺もいくぞ。…プロダクト!」
俺も剣の魔法の詠唱に入る。詠唱とは言っても、俺の場合事前に組み込んでいる詠唱に対してキーとなる言葉を差し込むだけだから詠唱という詠唱にはならない。いわゆる詠唱の簡略化。言っても俺レベルじゃ、剣の魔法…近くにある砂やら石やらを集めて棒状に形づくるだけの魔法ーーーまぁほとんど魔法なくても時間かければできるレベルのやつだけどーーーくらいしか詠唱の簡略化はできていないが。
右手に発現した砂利と湿気った土の剣を構え、亮真の彼女だった何かに対峙する。
こうなるくらいなら剣道の一つや二つ齧っとけばよかったと後悔するが、なるようになるしかない。あぁ神様、どうか今だけ、どうか俺に剣聖クラスの力をください。
剣を大きく振りかぶり、気合いとともに打ち下ろす。
「っってぃりゃぁぁぁぁああああ!!」
俺の気合いがのった一撃は、何かの真正面から縦割りに入り何かを真っ二つにし…なかった。
「り ょう ま !!」
俺の一撃とともに、何かは物凄い勢いで亮真に体当たりし、詠唱に集中していた亮真はその直撃を受けてしまう。
全力の気合いを放ち終わった俺は亮真の救援をすべく、急いで振り返る。
「亮真!大丈…っ」
振り返った先にあった光景は、亮真の彼女だった何かが亮真に覆いかぶさり、亮真を吸収するかのように爛れた皮膚が裂け、体からズル剥け、まるで意識をもったように亮真の全身を這いずりまわっている光景だった。
もちろん、皮膚が這いずりまわっている分、その下にあったであろう血肉が見えている。
「っっっ!!っっっっ!!」
亮真は手足をジタバタさせ、拘束から逃れようとしている。声が出でいないところを見ると口を塞がれているらしい…おそらく、口で。
そして俺は
「おぅぇぇぇええ」
吐いていた。盛大に。
友人の絶対絶命の窮地に、膝が折れ、手を地面について。
正直、情けなかった。スプラッタな光景は映画なんかでも見てた。動画サイトなんかにもホラーな映像は多いし。万全じゃないにしても、それなりな耐性はついていると思っていた。
でも…これは…。
初めて見るリアルな人の肉や血。呻きをあげる友人と、ひとりでに動いている人の肉。
何も考える余裕はないけれど、今の自分が情けないのだけはわかる。
「っっ!………。」
亮真が動かなくなった。
見れば、亮真の全身を何かの皮膚が覆い、亮真に飛び込むまでは泡立っていた皮膚が、今度は脈打っている。
もう、胃の中には何も残っていなかった。
「ぅでぇぇきゃぃたぅぁああ」
何かが亮真ごと起き上がり何か言っている。
「開ぁあケぅぇイカぁイのんもぅぉん」
あぁ…俺は…最低のゲロ野郎だ…
「ゔぁあせかぁいぃぃぅうぉっっつぅなぐぇたまぁぁぅえ」
急に出現した魔方陣。明滅しだす何か。そして一気に視界が真っ白になっていく。
ありがとうございました。