8 決着
「ぐ、硬い。」
あれから30分くらい経ったがHPの減りが遅い。と言うより………
「減ってない!?何で!」
ガーディアンのHPが半分になってから異様に硬くなったなとは思ったんだけど…
「いや、普通に無理でしょ…」
でも、これはゲームだ。何か部屋に隠されたギミックがあったりすると思う。まあ、必要なスキルがあるって言われたら無理だけどね…
ある程度考えをまとめてから行動を起こす。まずはこの部屋に隠されているかもしれないものを探す。
「時間はかかると思うけどね……」
そう、実際今は戦闘中で相手は格上。相手の動きを見ながら部屋の中を探す。普通だったら無理だ。しかし、
「ここは違う。」
「ここも違う。」
「ここもだ。どうなっているんだ?」
ナギサは違った。ナギサ自身は知らないことだがVRには適性がある。その適性が高いと思考が加速したり、ステータスよりも少し強くなったりする。だがそれは少しだけだ少しだけ。ナギサのそれは別格で体感で2倍、これだけでも驚異的だがVRを続けているとそれも伸びてくる。故に部屋を探索しながらガーディアンの攻撃を捌いているのだ。
「どこにもおかしな所は見当たらない。どういう事だ?」
こんなの無理じゃないのか?まず、この部屋には石像が多数に僕の攻撃では壊れない壁、それから封印、封印された明らかに強そうな龍、ガーディアンそして僕がいる。
ん?封印?
あ、封印されてるのならその封印を解けばいいんじゃないかな?そしたら龍が手伝ってくれるかも!
そうと決まればまずはあそこに行かなくちゃ。ガーディアンの突進攻撃を待って………今!
ズゴーン!
危なかった。でもこれでガーディアンはしばらく動けない。今のうちに。
「はぁはぁ、よし何をすれば解けるのかな?」
封印の見た目は鎖のようになっており龍に巻きついている。根元はどこだ?早くしないとガーディアンがこっちに来る。急げ急げ……
僕が封印の根元を探していると、
『小さき者よ何故汝は我を助けようとする?』
なんだようるさいなー、少し黙っててよ。と言うより喋れたんだ……
『何故だ?』
はぁ、少し待ってよね……
「貴方が可愛そうだったから。」
『我を憐れむつもりか。』
「違う!!」
「貴方の背にはそんなにも素晴らしい翼があるのにこんな所で飛べずにいるのは悲しすぎる。僕だったら耐えられないと思う。」
龍は驚いたように僕を見る。
「だから貴方を助ける。この僕が!!!」
ゴゴゴ……
ガーディアンがまた巨人に似合わぬ速さで突進攻撃をしてくる。
残り10m
8m
5m
奴はどんどん近づいてくる。
3m
2m
1m
「《神槍》!」
今出来る最高の技を鎖の根元に打つ。
ガキィィィン!!!
鎖が音を立ててちぎれ、その封印から解き放たれた1匹の厄災に匹敵する者が怒りと歓喜の雄叫びをあげ、ガーディアンを吹き飛ばした。
あれだけ苦労しても削れなかったガーディアンのHPが残り1本となった。そして僕の攻撃も入る。
「ぜぁぁぁっ」
ガンッ
「はぁぁっ」
ギィィン
一撃一撃敵の攻撃を避けながら入れていく。突然のラッシュに慌ててやたらめったらにただ腕を振り回すだけの攻撃なんかは当たらない。
ガシッ!
『今だ奴の核に一撃加えてやれ。』
僕の後ろから来た龍がガーディアンの腕を掴み動きを止める。
「おっけー、いくよ。《神槍》!!!」
魔力視によって先程から見えていた魔力が溜まっている場所を目掛けて光の槍を放つ。
槍が当たった部分から溶けていき、ガーディアンの核を貫きHPを黒に染めた。
「やっと終わった……」
こうして長く続いた戦いが幕を閉じた。