表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生チートの復讐劇  作者: 黒咲 夜羽
第3章 決戦
46/51

41 真実

鳴り響く剣と剣の衝突音。

何度繰り返したかわからない斬撃。

「いけっ!『エレメンタルブレードレイン』!」

様々な色の属性剣が魔王へ意思を持つように飛んで行く。

「もう諦めなよ。『エレメンタルブレードレイン』」

同じ数の剣が飛来し相殺される。

しかし、夏純は相殺される瞬間に魔王の懐へ接近していた。

「神崎流細剣術 "止影"!」

「『物理障壁展開』」

夏純の5回に及ぶ刺突は全て障壁によって防がれた。

「まだっ──」

「いや、終わりだよ」

夏純が納刀し刀身を魔法で作成し始めた瞬間、その腕を捕まれ抜刀ができなくなってしまった。

魔王は空いている左手の平を夏純の腹部に添える。

「『衝撃インパクト』」

「っ──!」

声にならない悲鳴。

腹部が弾けたんだように感じる痛み。

内蔵が弾けた様な音。

(ああ、これダメだ・・・)

死にたくない。

そう思うが、目が閉ざされていく感覚に抵抗ができない。

きっと、この瞼が閉じられると2度と開くことはできないだろう。

「ハ・・・ル・・・」

大好きな、小さい頃から一緒にいた彼の名を呼ぶ。

「・・・死に・・・たくない・・・っ!助・・・けでっ!」

涙を流しながら、死に際で声が掠れながらも助けを求めた。

「残念だけど、彼はここには来ないさ。

時間を稼ぐためにわざわざ帝国の王を殺したんだからね。今頃死因でも探って──」

「夏純───っ!」

遥か上空。

濃ゆく曇った空から響く彼の声。

「うおおおおおおっっ!!!」

黒と白の精霊魔剣を魔王に向かって振るう。

「チッ!」

魔王は背後へ飛び退き距離をとる。

陽綺の全力の斬撃は地面を大きく抉った。

「アリサ!夏純を・・・そこに倒れてる子を連れて離れろ!できるなら回復魔法を!ルスはエルナを!」

「わかりました!」

金髪の髪を揺らしながら夏純へ駆け寄るアリサ。

「大丈夫ですか!?」

「ゲホッ、貴女は・・・?」

「私は元聖騎士団長、アリサ・アシュリーです。とりあえず避難を」

そう言い、彼女は魔力を使い夏純を浮かせた。

「すみません、体内の状況がわからない以上こうするしかなくて・・・」

「その判断は間違ってないわよ〜。あの岩の裏にでも運んでね〜」

ルスとアリサは夏純とエルナを連れて岩の裏まで避難させる。

「・・・意外だな。待たずに攻撃でもするかも思ったが」

陽綺の、敵を鋭く睨ま様な目つき。

長い間一緒にいた夏純すら見たことがない本気の怒り。

「ハッ、お前を夏純とエルナの目の前で殺すのが俺の目的だ。先に殺してしまっては話にならんだろう?」

魔王の冷徹な表情。

しかし、それは今愉悦の表情に染まっていた。

「何年!何十年この時を待ったか!お前を!お前だけを殺すために!魔王という役職を演じ!エルに転生の言い分を作らせ!お前達をこの世界に誘う算段をたて!いったいどれほどの時間を浪費したことかっ!」

「・・・俺はお前から恨みを買った覚えはないが?」

「お前に恨み?無いな。俺が恨んでるのはエルだ。エルの戯言にハマり夏純を助けることができなかった自分であるお前だっ!」

「俺?・・・っ!グアアアアアアアッ!」

脳裏によぎるエルとの会話。

見たこともないのに見た事ある様な光景。

城で俺を庇いアストに殺された夏純。

闘技場で俺を庇いコウキに殺された夏純。

そして、闇に飲まれそうなエルナを助け夏純を見捨てた自分。

「な、なんだよっ。なんなんだよこれはっ!」

「ほう、俺を正面から見たことで俺とお前の因果が重なり始めたか。ならば教えてやろう。それは事実だ」

「事実・・・だとっ?」

今だ脳裏によぎる夏純の無残な死体。

「違う!これは・・・っ!こんなの現実じゃない!」

「いいや、現実さ。それは俺が味わった現実そのものだ。エルは俺と夏純の為に俺が夏純の救出を失敗する度に時間を巻き戻しやり直させてくれた」

「巻き・・・戻し」

「そうさ、しかしここで2つのイレギュラーが重なった。1つは時間の乱れ。死ぬはずの彼女が転生し、更にこの世界でも死ぬはずの運命すらねじ曲げた。そしてもう1つは、エルナが夏純だった事だ」

鈍器で頭を殴られたような感覚が陽綺を襲う。

「夏純が・・・エルナ?」

おかしい、おかしい、おかしい、おかしい、おかしい、おかしい、おかしい、おかしい。

「別の時間軸・・・パラレルワールドとでも言うか。その夏純と陽綺は2人で本物の魔王にうち勝った。しかし、魔王は強く2人は禁断の手にでた。」

「禁断の・・・手」

「そうさ、陽綺は体の半分を精霊に。夏純は神の力をその身に宿した。見事魔王を倒した2人はその後仲良く暮ら・・・す事なんてできるわけないよなぁ?

魔王を倒し、全ての精霊の頂点に立つことが自動的に示された。精霊神となった陽綺は精霊な人間に崇められ、欲深い人に触れられないように精霊王全員の手により精霊界へと誘われた。夏純は半神となり、神界への強制連行で天使の名を持つ神という烙印を押され神の仕事を与えられた」

魔王はここで区切った。俺の反応を伺っているらしい。

「・・・それが、夏純を傷つけた理由になるとでも?それはただの八つ当たりだ!助けられなかったお前の業を他人に押し付けるんじゃない!」

黒い精霊魔剣を握りしめ接近する。

「八つ当たりだ?お前の業だ?違う!最後のは!最後のはエルナの業だ!あの時エルナではなく夏純の手を取れば!エルナが巻き込まれたから!」

魔王は焔と氷の精霊魔剣を両手に構える。

俺は魔王を否定しながらも、どこか気持ちがわかる気がした。

今もそうだ。

夏純がボロボロにやられた。

その事実だけでここまで俺な冷静さを失っている。

目の前で何回も夏純が死ぬのを目撃したら・・・俺もここまで狂っていたかもしれない。

それでも

「俺は!夏純はまだ生きてる!お前と同じ道は歩みはしない!」

神崎流極ノ太刀 "剣閃の舞"

前方広範囲を無数の剣閃によって空間ごと斬り裂く残裂魔法(・ ・ ・ ・)だ。

かつて、夏純の父親に教わり使用を禁じられた技。幼い頃、練習で軽く撃ったはずが夏純の父に無数の裂傷を負わせた技。

(もしかしたら、このために教えてくれたのかもしれないな)

だが。

「・・・チッ、初手でそれを使うとは思わなかったぜ」

「な・・・なぜだ」

魔王には頬と腕に多少の傷が少し目立つくらいでほぼ無傷だ。

「言っただろ?俺はお前だって。お前が使える技、お前の精霊魔剣、お前の魔法。全て知っているに決まっているだろ?

そのために作った自作防具」

魔王は俺に両手を見せる。

手には白い手袋がつけられている。

「防具名は・・・そうだな、イノセントと名付けようか。全ての魔法・魔術を無効化するこの手袋に、それは効かない」

「ならっ!」

俺は新技を披露する。

「行けっ!『エンドビット』!」

陽綺の周囲に野球ボール程の黒い球体が無数に現れる。

「これには全て消滅の因果がある。避けないと・・・死ぬぜ?」

その言葉と同時に魔王へ飛んでいく。

「チッ、また面倒な技を。『エレメンタルブレードレイン』」

同じく無数の属性剣が黒い球体とぶつかり合う。

「だよな?防御できない。回避も難しい。なら迎撃するしかないよな?」

陽綺は魔王が迎撃している間に接近し、腰に納刀されている刀型の復讐刃リベレーションを居合の体制で抜き放とうとしている。

「神崎流抜刀術──」

「ハッ、バカめ。夏純は同じ手でやられてるんだ。"絶"など今更──」

絶。

それが魔王の知る抜刀術だ。

だが、次の瞬間。

「折羽」

胴を狙った絶とは違い、首を狙った斬撃。

「クッ」

絶ほどの速さがないためか、ギリギリ避けることができた。

だが。

「羽は・・・2度折られる」

いつの間にか魔王の背後に回っており、右上から左下へと血飛沫を上げながら刃が通る。

「これでっ!」

心臓を狙った神崎流細剣術 "紫電"は、謎の衝撃により弾かれた。

その衝撃は陽綺にも当たり吹き飛ばされた。

「・・・やめだ。やめだやめだやめだっ!いたぶり尽くして殺してやろうと思ったがもういい。殺してやる」


ふむふむ、チートではなく人外ですね。

本当に最後近くまで来ましたね。

魔王との対決、勝つのは陽綺か魔王か。

それは・・・未来の私しかわかりませんね!


励みになりますのでブクマ・コメントお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ