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転生チートの復讐劇  作者: 黒咲 夜羽
第3章 決戦
45/51

40 束縛

陽綺のレーザーは大地を大きく切断し、地面には谷の様な深さの溝ができていた。

「ハル・・・」

「俺は君が知る陽綺じゃないよ」

陽綺にモザイクの様なモヤがかかった。

モヤは2秒ほどで解けた。

その姿は白いコートに灰色の髪。

右目は黒だが、左目は紫水晶の様に綺麗な色だ。

「な、な、何よその厨二病みたいな格好!」

「え、そこですかァ?」

アストが呆れた声で背後から言ってくるが、それはどうでもいい。

「ハハ、酷いな。これはこれで高性能なんだけどな?」

しかし、心配事は他にある。

「エルナをどうするつもり・・・?」

ずっと脇に抱えられたエルナ。

抵抗する力も残っていないのかぐったりしたままだ。

「簡単さ。エルナに一番辛い思いをさせて、それから一番苦しい死に方をさせるよ」

「な・・・」

唖然とする夏純。

しかし、陽綺はその様子に気づかないで続ける。

「まずはエルナの目の前で陽綺を殺す。そして、爪から・・・パーツを取るように少しずつ斬りつける」

あまりの憎悪にドン引きしてしまう。

「どうして・・・どうしてそんなにエルナの事を恨んでいるのよ」

夏純は陽綺から聞いたから知っているが、エルナは女神らしい。

エルナに転生させてもらったお陰でこの世界に来れた事も。

エルナのお陰でこの世界にこれた。

感謝はしても恨みはしないはず。

「それはね。エルナのせいで君《夏純》を助けれなかったからだよ」

予想すらしていなかった答えに夏純は目眩を覚える。

「なんで・・・私はハルに助けられた!ハルは私を助けた!」

「それは俺達の犠牲があったからだ!俺と!夏純の!」

陽綺の感情に魔力が呼応し、黒く濁った・・・粘つくように濃ゆい魔力が溢れる。

「どういう事よ!」

夏純も魔力を解放する。

今回は・・・全開だ。

目の前の陽綺とは違い、鋭く白い魔力だ。

「な、なんだこの魔力は!?」

近くにいたアストは夏純の魔力に吹き飛ばされ、岩山に衝突した。

「よく分からないけど・・・私は陽綺・ ・を倒す。もう2度と、陽綺に間違った道は進ませない!」

ふと、蘇るあの記憶。

血だらけの道場の真ん中で泣き叫ぶ男の子。

道場から出てきた裂傷だらけの父。

あの出来事からハルを見守る事しかできなくなった自分。

異世界転生する前日。

父は・・・こうなることを分かっていたかのように私に言った。

『夏純。陽綺君の事を・・・よろしく頼む』

と。

今ならどういう事かよくわかる。

そして、エルナから言われた言葉。

『陽綺さんを魔王とは会わせないで下さい』

きっと、今目の前にいるのが魔王だ。

陽綺の姿をした、陽綺でない別人の魔王。

「確かに・・・会わせるわけないよね」

夏純は腰を落とし、居合の構えをとる。

「私が、貴方を倒す。ハルとは会わせない!」

「君には無理だよ、夏純。君の大好きなハルを斬れるのかい?」

魔王《陽綺》の嘲笑うような口ぶり。

それに夏純は答える。行動によって。

「『魔刀・氷霞』、"絶"」

氷の刀身を生成し、神崎流抜刀術 "絶"を放つ。

神速の踏み込みに切断性が高い氷霞。

その斬撃は、陽綺を斬ることはできなかった。

「っ!」

魔王の背後で目を見開く夏純。

本気で、殺す気で放った居合い。

それは魔王の右手に突如現れた、燃え盛る赤い長剣によって弾かれた。

否、赤い長剣によって『魔刀』は砕かれていた。

夏純の周辺に舞う氷の破片。

それは日光によって照らされ、まるで粉雪のようだ。

「・・・どんなに速くても。軌道さえ読めればどうにでも防げる。その技が最強な理由は、初見である事が前提だよ夏純」

「ならっ!」

瞬時に納刀し、素早く居合いの構えをとる。

「君はわかってないね」

わかっていないのは魔王だ。

それを示すように、火属性の刀身が鞘の内部で生成される。

「『魔刀・火燕ひえん』!」

その場で振り抜かれる刀。

魔王との距離は6メートル。

その距離を炎の斬撃が飛んでいく。

「・・・っ!《ウンディーネ》!」

左手に生成された水を纏った白に近いような水色の片手剣。

その剣に触れた炎の斬撃は少量の水蒸気を散らしながら消滅した。

「まだまだっ!」

魔王をドーム状に囲む様々な属性剣。

「《エレメンタルブレードレイン》!」

無数の剣が魔王に迫る。

しかし

「《エレメンタルブレードレイン》」

魔王の上空から降り注ぐ様々な属性剣。

それは夏純が展開した剣を全て打ち払った。

「なっ・・・!」

驚かされる夏純。

「悪いね夏純。」

魔王は語る、最悪の事実を。

「この剣は全て、精霊魔剣なんだよ」

魔王は両手の剣から手を離す。

しかし、剣はその場に留まり浮遊している。

更に、空中に2本の剣が現れる。

鋭く硬い岩の短剣。

風を纏った深緑の大剣。

万物を焼き斬る炎の長剣。

冷気を纏った白に近い水色の片手剣。

その4本が魔王に近くに浮遊している。

「具現化」

その一言で全ての精霊魔剣が女の子の姿へ変化する。

少し天然パーマが入ってる黄色い髪の7歳くらいの女の子。

深緑の髪色をした胸部が強調されてるような20歳くらいの女性。

赤色のショートカットの中学生程の女の子。

水色のセミロングの髪に、1部三つ編みで胸元まで垂らした高校生程の女の子。

そして、全員に特徴的な部分があった。

「な、なんで・・・そんな

そう、全員は手足を黒い鎖に縛られていた。

剣から女の子に変わったところを見るに、本当に精霊魔剣なのだろう。

しかし、問題は鎖だ。

ハルのイヴやルスには無い鎖。

「あぁ、この鎖はね。彼女達の自由を縛るためのものだよ。イヴも手元に置いておきたかったけど・・・先に陽綺が取ってしまったからさ」

「貴方で本気で腐ってるわよ」

夏純は本気で魔王を見放した。

やはり、アイツはハルではない。

そう確信した。

「ハルは、絶対にそんな事しないっ!アナタはただの魔王よ!2度とハルを名乗らないでっ!」

いやー、次回のバトルがカロリー高そう・・・。

そんな事を書き終えた時思いましたね!

というわけで、風邪で体調崩しながらも薬を飲み何とか書きました!

来週は、胃薬飲みながらでも書きますかね!汗


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