39 死線
「どういう事・・・?」
夏純は魔王軍を少しでも減らそうと向かったのだが、目に映るのは見るに堪えない魔物だった物の姿と地面に無数に広がるクレーターだ。
夏純はふと、エルナが先に来ている事を思い出した。
「ま、まさか・・・。エルナがこれを?」
それ以外誰がこんな事ができるだろうか。
「これじゃあ・・・どっちがチートか分らないじゃない」
夏純でも、こんな量を殲滅するとなると魔力が枯渇寸前までいくだろう。
エルナがこれ程の規模を破壊するとなると相当量の魔力がいるだろう。
その瞬間。
突如黒いレーザーが、夏純に迫って来た。
「っ!」
咄嗟に首を横に倒しながら避ける。
咄嗟の動きで、宙に残された髪をレーザーが穿つ。
(今の闇属性のレーザー、ハル?)
闇属性をここまで的確に操れる人となるも限られてくる。
そう思うと、いても立ってもいられなくなった。
「行かなきゃ」
夏純はレーザーが来た方角へ走り出した。
しかし。
「おやおや、お久しぶりに見る顔ですねぇ」
空から流星の様に落ちてきた男。
「う、嘘でしょ。」
「フッフッフ、覚えて頂けて光栄ですn」
「誰?」
「・・・え?」
空から降ってきたのはムキムキの男だった。
肌は黒褐色で髪は灰色。瞳は濁っており、手に握られた杖は体つきとのギャップを感じる。
「ん?その杖どこかで見たような・・・」
夏純は、男が持ってる杖に違和感を感じた。
「なぁぜ!なぜわからないのです!この魔王軍第4階梯アスト様をぉ!」
「・・・?あっ」
そう言えばあの杖、アストが使ってた!
「え、いや、え?見た目全然違うじゃない!ていうか、アンタ瓦礫に潰れて死んでたらしいじゃない!なんで生きてるのよ!」
そう、夏純は直接見た訳じゃないが
ギルドの調査員からはその報告があった。
「そうでしょうねぇ。潰されましたしぃ?」
「じゃ、じゃあ、なんで生きてんのよ!」
夏純の質問にアストは
「それはですねぇ〜」
ゴクリ。
もし、不死身となれば倒す手段がない。
作戦を考える夏純にアストは
「教えませぇ〜ん」
「はぁ!?ここまで溜めておいてそれはないでしょ!」
夏純の指摘は正論だが・・・。
「貴女こそ敵に聞くってアホなんじゃないですかぁ?」
「うぐっ」
アストの言い分はごもっともであった。
「だ〜れが予備の身体を用意してたなんて言いいますかぁ?」
「・・・・・・うーん、そうだよね〜。ちなみに残りストックはどれ位かな〜?なんて」
「はっ、もう無いっての・・・あ」
「なるほどぉ〜」
夏純に向日葵様な笑顔が咲く。
「き、貴様!誘導尋問とは卑怯なぁ!」
「アンタが勝手にベラベラと喋ったじゃない」
たんなるアホである。
「フッ、フハハハハッ!だからどうした!貴様は私には勝てない!これは必然的に決まっているのだよ!見よっ!」
アストは両手を広げ、手に白い液状の物を生み出す。
「これが他2人の幹部能力を奪い、そして作った能力──」
「きもちわるい」
「・・・え?」
「いや、もっとマシなの作れなかったの?その能力キモすぎるよ?」
「ぐぬぬ、だ、だが!能力は凄いぞ!これはな、なんでも──」
「どうせ、なんでも溶かす(服のみ的な)・・・なんでしょ?」
「いや、皮膚まで溶けると───」
「へー、私の魔力を貫通できるほどの融解性があると。へー」
「・・・スミマセン。服だけになりそうです」
アストの正直な謝罪に
「うわ、敵の服を溶かして喜ぶとかキモッ!」
ザクッ!
「はずかしくないの?」
グフッ!
「生きてて申し訳なくない?」
ドムッ!
アストは倒れた!
彼の心は既にポッキーだ!
「とでも思ったかぁ!」
「うわっ!」
アストの突然の叫びにたじろく夏純。
「こいつの欠点は発動に時間がかかることでねぇ」
突然、夏純周辺の土が白く濁った液体へと変化する。
「ま、まさか・・・っ」
「さぁ、どこまでもつでしょうねぇ」
白く濁った液は、意思を持つかのように夏純に飛びかかった。
「くっ!」
夏純は振り向きざまに『魔刀』を振る。
液体相手なら本来は使われない属性。
炎属性を使用する。
「『魔刀・焔太刀』!」
熱は極限まで上げられているのか、炎は人間の目で見える最高温度色・・・紫色だ。
炎によって生成された刀身は万物を焼き切る。
白い液体はジュッと音を立て蒸発した。
「ふっ!はっ!」
次々に遅いかかる液体を蒸発させていく。
「くっ、なんて量なの!」
そう、いくら蒸発させてもきりがないのだ。
「フッフッフ、貴女の苦しむ姿を見るのは実に心地良いっ!もっと!もっと苦痛に歪んだ表情を私に──」
「焼き払え!『円舞・火輪』!」
夏純の周囲を焦がす炎。
それは地面を融解し、白い液体諸々を焼き尽くした。
「はえ?」
唖然とするアスト。
「あんまり私をなめないでよね!」
夏純の発言にアストは・・・何も返さない。
代わりに・・・。
「な、なぜ貴方様が!」
突如、夏純は背後に気配を感じ振り向く。
「誰っ!」
そこに居たのは陽綺だった。
いつもの優しい眼差し、夜空の様に暗い黒髪。そして、灰色の学生服。
陽綺そのものだった。
「やぁ、夏純」
「ハル・・・」
夏純は陽綺に会えたことで、安心感などいろいろこみ上げてくる。
「夏純、迎えに来たよ」
「迎え?」
よく見ると、脇にボロボロのエルナが抱えられていた。
身体の各所に傷があり、服も所々破れたりほつれたりしている。
「夏純さ・・・ん。逃げ・・・て・・・」
エルナの苦しげな声。
「エルナ?どうゆう・・・」
そこで夏純は陽綺の不自然さに気づく。
普通、ボロボロのエルナを陽綺がこんな運び方をするだろうか。
目の前に私と対峙している敵がいるのに気配を消して私の後ろに立つだろうか?
「っ!」
違和感に気づくのが遅れた!
バックステップで距離をとろうとする夏純。
「君にこの技は使いたくなかった」
目の前の陽綺の姿をした誰かは、手を手刀の形にして魔力を集める。
「その技はっ!」
私達をこの異世界に来ることとなった原因。
私とハルを貫いたレーザーだった。
「君を失いたくないのに」
レーザーは更に拡張される。
「君の苦しむ姿は見たくないのに」
莫大な魔力によりどこまでも伸びる剣へと変化した。
「どうしてこんなに君を殺したいんだ!」
上段から振り下ろされるレーザー。
「っ!」
夏純は真横へ身を投げるように飛び、なんとか躱す。
その陽綺の目には・・・涙が浮かんでいた。
はい、少しアレ?と思うところがあるかもしれません。
大丈夫です。次の回でわかります!
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