番外編2 Ghost Kasumi
唐突だが俺達は今、洞窟にいる。
「ハ、ハル・・・」
「・・・陽綺さん」
「あらら〜。これはどうしようもないね」
「・・・ま、まてよ。これは俺だけのせいじゃないだろ?」
時は2時間前。
俺とイヴの出会いをどこから聞いてきたのか、リンドがそこら辺の洞窟にもなにかあるんじゃないかと言い出した。
それでギルドに特攻しこの辺りの洞窟の場所を聞いてきた。
その中に1つ、誰もが入る事を躊躇った洞窟があるというらしい。
それで、する事も無い俺達は休みの日を使いこの洞窟に来たのだが・・・。
「なんでよりによって崩落なんてするのよ・・・」
夏純の言う通り、俺達は洞窟内を探索していたのだが。
途中、牛と人が混ざった様なモンスター。
通称、ミノタウロスに襲われた。
全員で討伐までしたのだが・・・。
メンツは女神、チート2人にドラゴン1人。
このメンツの攻撃力に洞窟が耐えれるわけもなく・・・崩落を起こした。
「だいたいリンド!なんであんな狭いとこであの大技使うんだよ!」
あの大技、というのは初めてリンドと俺が手合わせした時に見せた、〈擬態解除・限界突破〉をした全力の拳。あろうことかこのドラゴン娘は狭く、足場の悪い洞窟の中で考えなしにミノタウロスへと全力で拳を繰り出し、案の定オーバーキル。瓦礫とミノタウロスの角を撒き散らしながら俺たちは約20メートル程、落ちた。
「な、なんで全部私のせいなのさ!?ハルキだって色んな技ぶっ込んでたじゃん!」
「加減してたんだよ俺は!」
「むうううう」
「ま、まあ二人とも喧嘩しないで?とにかくここから脱出する方法考えなきゃ」
ちなみに、しれっとこの場をまとめているふうに見える夏純も、自分は関係ないと言うようにずっと黙っているエルナも、剣状態のまま一言も発さないでいるイヴも、みんなチート級の技を繰り出し、洞窟崩落に一役買っていたはずだが...まあ、ここは夏純に従おう。
「そうだな...とりあえず歩いてみるか。上に繋がってるかもしれないし」
「そうですね...じゃあ出発しましょー!」
「「「おー!」」」
「なんかさなんかさ!探検してるみたいドキドキするね!」
15分ほど歩いただろうか、真っ暗闇な洞窟を、エルナのか細い光魔法のおかげでかろうじて前を確認しながら進んでいるとリンドがはしゃぎだした。
「探検してるみたいっつーか実際探検なうなんだけど...てかこれどっちかっていうと探検ってよりお化け屋敷感覚だよな」
「「ビクッ」」
...お化けという単語に対する反応が2つ。
「お化け屋敷?」
「そうそう、リンドの集落じゃお化け屋敷とかなかったのか?」
「うーん...わかんないなぁ」
驚いた。こっちにはそういう文化がないのか。...いやまあよく考えたら日本のお化けより怖い魔物がいっぱいいるからだろうけど。
「んじゃあ例えば~」
俺は明らかにビクビクしながらこっちの話を聞く余裕もなさそうに進んでいる夏純とエルナに気付かれないようにある魔法を唱えた。
「こんな感じ」
「クェェェェェェェェェェエエエエエェエ!」
「「うひゃぁいいっ!!」」
「ぬおおおおお!」
すると、俺達の前に突如黒い影が現れ、やけに高い声で叫び声を上げた。大きさは約2m強、形は、いわゆるゴーストのようなもの。
まあ予想通り夏純とエルナは期待以上の驚いた声を発してくれた。リンドはまあビビらなそうだとは思ったが寧ろ目をらんらんに輝かせている。
そしてその黒い影が少しずつ、腰を抜かしてしまった夏純とエルナに近づき、霧散した。
「「あり?」」
俺とリンドの声が重なった。すると少し呆れたような声を出しながら、イヴが片手を振るった状態の人の姿で現れる。
「全く...あまり遊ばないでくださいマスター」
「ごめんごめん」
たしかにちょっとビビらせすぎた。エルナは知らなかったが夏純は小さい頃からこの手の話が大の苦手だったのだ。
「おーい、二人ともごめんな。...て、あれ?」
「「ガタガタガタガタガタガタガタ」」
どこのた〇しだお前達。
「ご、ごめんな?お化けなんていないって...ほ、ほらクェェェェェェェェェェエなんて鳴くお化けいるわけないだろ?」
自分で作った幻ながら、こんな鳴き声のお化けがいてもシュールなだけだ。
「う、うん...そうよね、そうよそんな鳴き方するお化けいるはずないもの」
「そうですね...完全に取り乱しました...」
そう言って二人は立ち上がり、そっと忍び寄る影には気付かず、
「クエッ!」
「「うひゃぁ!」」
また尻もちをつくこととなった。
「リンド~!!」
「あははははははは!」
そしてまた15分ほど。
この辺りになると周辺に魔物の気配も多くなってきた。
「うーん...出口はどこだぁ...」
「うぅ...早く出たいよぉ...」
「お化けいっないっかなー!」
「いたら私この洞窟ごと灰にしますからね」
やはりエルナの使っている光魔法は些細な明るさしかもたらしてくれない。魔物に見つかりやすくなるから、と説明していたが多分見たくないものが見えてしまったら、と怯えているのだろう。...こっちの方が逆に怖いんですけど。
「グロロロロロロ...」
「ワータイガーの鳴き声ですね」
「なんか私達以外に生き物いるって安心するね」
いや明らかに感覚麻痺してきてるよ。魔物見つけて安心するな。
「ん~...お化けいない...」
リンドはさっきからお化け探しに夢中になっているようだ。出口探せや。
「まあお化けなんているかいないかわからないから怖いんだし、見つけちゃったらただの魔物でした、とかあるかもしれないぞ」
「うーん...そうだけどさぁ...」
「お化けなんていません!」
「そうよ!いるはずないわ!」
どうやらエルナと夏純はどうしても認めたくないようだった。俺も実際お化けは怖い。だが、今は出口を見つけることが最優先のため、そう深くは考えず一々怯えることは無かった。ついこの時までは。
「もしかしたら今にも現れるかもしれないぞ?さっきみたいに『クェェェェェェェェェェエエエエエェエ』なんて言って...え、あれ?」
「「ひゃぁぁぁぁあ!!」」
「お化け!!!!」
前方から、さっき俺が生み出したものとほぼ全く同じの―正確には黒ではなく半透明な―影がゆっくり、ゆっくりとこちらへ進んできていた。そう、『クェェェェェェェェェェエ』と鳴きながら。
「ハル...?悪ふざけはもうよそうね?」
「二度も引っかかりませんよ流石に...」
「...俺じゃない...」
「「へ?」」
『クェェェェェェェェェェエエエエエェエ』
俺は何もしていないのだ。つまりこの影は...。
「「「嘘でしょぉぉおおおおお!!」」」
「お化けー!!!!」
逃げた。そりゃもう全力で。捕まえに行こうとしてた馬鹿も全力で捕まえて。なりふり構わなすぎてイヴにちょっと冷たい目を向けられながら。尚、他2名は俺と変わらない行動をとりました。
「ハル...今の...なに?」
「お化けー!」
「俺に聞くんじゃない...」
「陽綺さん...今の...なんですか?」
「お化けー!」
「だから俺に聞くんじゃない...」
「ねぇねぇ!ハルキ!今のって...」
「そうだよお化けだよおおお!!」
まずは整理しよう。俺達は出口を求めて歩き回っていました。途中で魔法を使って二人を驚かしました。リンドがお化けを探していました。見つけました、まる。
「おいみんな...何がなんでも出口見つけるぞ」
「「「はい!!!」」」
「えー、捕まえようよー」
なんなんだこのドラゴン娘。なんでそんなに見つけたいの?食べたいの?お化け食べたいの?そんなに食欲旺盛なの?
「リンド...?ダメ...出口探そ?」
「カスミもみんなもビビりすぎだよー。捕まえてペットにしよ!」
「出来るかあほ!!」
「ぶーぶー」
とにかく探そう。ここを出てこんな洞窟閉鎖しよう。絶対に触れちゃダメだここ。触らぬ神に祟りなし。
「なんなのさ、みんなしてビビっちゃってー。面白くないのー」
「いいから探せ」
「ん?なんだろあれ」
「クェェェェェェェェェェエエエエエェエ」
「え?」
リンドが指さす先には青色の―既に今日で何故か邂逅三回目の、見慣れた形をした―ゴースト。色違い多数出現。ポ〇モンかよ!
「「ひぃやぁぁぁぁぁぁぁ」」
「逃げろぉぉおおおおお!!」
「お化けー!」
「ッ!待ってくださいマスター!」
捕まえようとするリンドを捕まえ、またもや脇目も振らず逃げ出そうとした俺をイヴが引き止める。
「え、なに?それどころじゃないってか逃げようよイヴさん!?」
「魔力探知をしてみてください」
「え?...んん?」
イヴに言われるがまま魔力探知を発動させると、リンドが見つけたゴーストのすぐ側の暗がりに魔法の―俺がエルナと夏純を驚かせる時に使った魔法と同じ種類の魔法の反応があった。
「んー...」
ポイッ。
「あいたっ!?」
ちょうどその暗がりに向けてその辺に落ちていた手頃な石を投擲すると、カツーンとよく響く音がなり、男の声が聞こえた。イヴを剣状態にして構えたままその男の元まで歩く。
「や、やめてくれ!悪かった!」
「どういうことが教えてもらおうか?...て、え...?」
勢いよく俺たちの前に飛び出してきたその男は、全身に宮廷魔導師のような服を身にまとい、ところどころパーツの欠けている、骸骨だった。
はい、終盤の流れで続きますね。
でも大丈夫です。
来週は、番外編と本編2つだすので是非!
ご覧ください!
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