4 初めての異世界
目を開けると青い空が写った。雲の隙間からでる太陽の光がとても綺麗で思わず全てを忘れそうになった。
「・・・ここ、本当に異世界なのか?」
そう言ってしまうのも仕方がないだろう。なんせ、魔法的な物が何一つない場所に転生させられたんだ。と、思っていると急に当たり全体に影が落ちた。大雲かと思ってみると
グァァァァァァァッ!
と、鳴く鳥みたいな・・・いや、認めよう。ドラゴンが、はるか上空を飛んでいた。
「ほんま、異世界や・・・」
思わずエセ関西弁になってしまった。
「・・・この世界に夏純が」
異世界は得体が知れないし、そんな所で夏純が1人だと思うと気が気でない。
(あいつドジだし・・・)
そう思うと心配で早速歩き出した。
少し歩いているとガラの悪い5人くらいの人達が荷台に高級そうな物品を載せた馬車を引いてきた。
「うわぁ、盗賊みたいなのもいるし」
男達は俺を認識したのかこっちに歩いてくると
「おい、ガキ。てめぇ、どこから来たんだ?アァ?」
・・・なんで、そんな威圧風なんだよ。
いや、そんなことはどうでもいい。
夏純を探す情報を得るためにもこんな奴らを相手にしてるわけにはいかない。
「どこって・・・俺の後ろの方角」
「んなことはわかってんだよっ!国とかを聞いてんだよ!」
「どこでもいいだろ?それより通してくれないか。俺はお前らみたいなのと遊んでる時間はないんだ」
やべ、なんか挑発気味になっちまったと思った時には遅かった。
「そういう態度をとるならしょうがねえなぁ?金目の物も無いようだし人質としての価値もなさそうだからなぁ。てめぇはここで死んでもらおうか」
そういうと、男は腰からショートソードを引き抜いた。
「俺は1日に何回死ねと言われるんだよ・・・」
俺が神崎家で習った武器の扱いは2つ、そして格闘術だ。だが残念な事に、俺は格闘術はその中で1番苦手だった。ならば。
男が剣を振り上げ下ろしてくる。俺は男の手首に自分の手首をクロスさせた状態で受け止め、左手で相手の腕を捻り右手で剣を奪った。これが神崎流無刀術〈盗刃〉だ。基本的には相手の武器を奪う技だがリスクも高い。例えば盗り損ねると指や手首が斬られるし、最悪頭から真っ二つになる。だが、リスクは承知のうえ。何回も練習した技でいつも通りすると。
スルリと俺の手に収まったショートソードを見て
「んなっ!?」
と、男は驚くが関係ない。俺は、奪ったショートソードで男の銅を薙いだ。
ズバーーーー。と血と肉を絶ちながら振り抜いた剣は赤く染まっていた。俺は、初めて人を殺したにも関わらず何故か冷静だった。しかし、それで終わらず・・・男で見えなかったが、後ろから3人が追撃しにきていた。
「・・・神崎流剣術〈雷切〉」
〈雷切〉は右斜め前、左斜め前、右斜め前の3アクションする時に相手の目の前を通り過ぎる。その時に、通り過ぎざまに全員の銅を斬る。シンプルなだけに速く動けるため、これは避けることが難しい。相手からしてみれば、気づいたら腹から血がでている感じだろうか。男3人は、全員糸が切れたように倒れていった。
「最後はお前か」
俺は最後に残った他の奴らよりも明らかに巨体な頭風の男に言った。
「いいねぇ、その目。俺の仲間にならないか?盗賊家業もいいもんだぜ?働き分ちゃんと金もくれてやるからよ」
「・・・お前は仲間が殺られたのになんでそんなに呑気なんだ?」
こいつは、いま自分を殺そうとしてる奴がいて大切な仲間を失った状況なはずだ。なぜ、こんなに冷静なのがわからない。盗賊の男は、ニヤつきながら
「お前は2つ勘違いしている」
と、言ってきた。
「勘違い?」
「あぁ、勘違いだ。まず、そいつらは仲間じゃねえ。俺の駒だ。もう1つは、お前は俺を殺せないからだ」
「何を根拠に言ってるんだ?」
男はニヤニヤしたまま俺の右手・・・いや、剣を見ている。
「・・・っ!?」
俺はすぐに盗賊の言いたいことがわかった。この剣はもともとボロかったのだろう。その上、いま4人を斬ったのだ。つまり、かなり切れ味が落ちているのだ。
「ふっ、お前の剣技は凄かったが・・・それは剣があって初めて成り立つものだ、違うか?ちなみに、俺の鎧は騎士団から盗んたものだ。そんなんじゃ、びくともしないぜぇ?」
・・・確かにそうだ。剣術は剣で使う技・・・。やはり格闘術使うしか。いや、この体格差だと恐らく勝てないし、たぶん何かを隠し持ってる・・・。
「ほら、どうした?」
嘲笑しながらこっちに歩いてくる姿に思わず、
ザッ。
と、右足を後ろに引いてしまった。その時だった。ジャラっと右のポケットから音がした。手を突っ込んで見てみると、そこにはあのチェーンがついた赤黒い十字架が入っていた。それを見た瞬間に、すぐに使い方がわかった。
俺はその事に不思議さを感じなかった。なんせ、これは俺の魂を具現化したものだからむしろ知っていて当たり前とも思ってしまう。俺は、十字架を握り呟くような声で言った。
「・・・復讐刃」
その瞬間、片刃の長剣が手に握られていた。その剣は、刀身が全て黒だった。刃の部分は赤く、まるで血を表したような物だった。
男はそれを見た瞬間に自分の斬られる瞬間を想像したのか、自分の腹を両手で抑えた。
「な、なぁ、さっきのはなしだ。俺ら仲間にな、なろうぜ?金も好きなだけ稼げるっ!わ、分け前は俺が4割・・・いや、2割でもいいっ!だから頼むっ!殺さないでくれっ!」
俺は、こんな奴どうでもよかった。だが、ここでこいつを見逃すとまた被害がでるだろう。たくさんの無実の人が苦しむ姿を想像しただけで、
「反吐がでる」
「う、うわぁぁぁぁぁ」
と、俺に背を向け走り出した。俺は、氣・・・いや魔力を足に集中させ一気に追いつき、その首を斬り飛ばした。
「・・・冷静に考えてみるとこれ、殺人だよな・・・?」
盗賊を倒して1時間だろうか。近くの川で返り血を洗い流し、盗賊の荷台で服を乾かし終わった時に、ふと思ったことだった。
「ん〜、でも正当防衛だよな?」
この世界に正当防衛が適用されるのかわからないが。
「とりあえず、街に行ってみるか」
と、俺は遠くに薄らと見える巨大な壁を見つめた。
とりあえず、盗賊の遺物から金と斜め掛けのバック、それから食料と水が少しあったので、それを拝借した。俺は、さきほど剣に変わった十字架を見つめながら思っていた。まず、この剣は切れ味が落ちない。そして、自分の好きな形に変化させれることがわかった。
「エルは凄いものくれたな」
と、感心しながら俺は巨大な壁を目指した。
街の入口だろうか。壁の入口に来てみるとたくさんの人が行き来していた。俺は他の人の後ろについて行ってみると、門番の様な人に話かけられた。
「お前、なかなか見ない服装だな。どこから来た?」
見ない格好?と、思い自分の服をみると、学生服のズボンにカッターシャツだった。
「あ、えっと・・・」
と、濁していると。
「身を証明できるものが無いなら入国金が高くなるぞ?」
と、言ってきた。
「はい、それでも構いません」
「では、1万エルになります」
1万エルってどれだよ!?と、日本なら福沢諭吉をだしてる金額に驚くが
「これで、足りますか?」
と、盗賊からぬすn・・・貰ってきた金をだすと、
「13000エル入っているのでで、1万エル貰い残り3000エルですね。どうぞ」
と、貰った袋をバックに入れて門を通り過ぎながら思った。
(これだと俺の方が盗賊っぽくないかな!?)
4話目ですね。
技名や武器名がダサいなんて言わないで下さい。そんなの自覚してますよ・・・。
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